高校生活1日目
今回から、更新日は基本的に毎週火曜、金曜に決めました!(それ以外も更新したいけど)
誤字脱字があるな。と思ったら、気軽にお声かけください!
よくわからないまま、高校生活1日目がスタートした。
「受付向こうだってー!早く行こ!」
夏実に言われるがままに、受付を通る。俺は1年2組の26番である。まぁ、番号は知ってるんだけどさ。
えっと、俺の席の隣は、確か⋯⋯
「あ!隣じゃん!よろしく~!」
夏実だった。
あれ?おかしいな。夏実が隣ではなかった気がするんだが⋯。
席に荷物を置いた夏実は、早速を席を立った。
「想士ー。私、ちょっとクラスの子と話してこようと思うけど、どうする?」
「俺は別にいいよ。」
そっか。と言って夏実は行ってしまった。
俺がクラスの人と仲良く話すなんて、夢のまた夢である。
HRが始まるまで、まだ10分ほどあるので、とりあえず状況を整理しようと思う。
俺は今、なぜか15歳の高一に戻っている。それに、間違いじゃなければ、1年の時には、夏実とクラスが違うはずだ。そうすると、
過去が変わっている。
そういうことになる。⋯でも、なんで俺は、こんなに冷静なんだろう。
普通に考えたら、タイムリープなんてのは、ビックリして当たり前なのに。
教室の扉がガラガラと開く。
「はーい。入学HR始めますよー。」
あっという間に10分が経っていたらしい。担任が1人ずつ名前を読み上げる。⋯うん。とりあえず皆聞いたことのある名前だ。
「はーい。それじゃ、入学式始まるから、番号順で廊下に並んでねー。」
先生の指示で、生徒達が廊下へと出る。俺が廊下に出ようとしたその時、目の前にハンカチが落ちてきた。
「あ。あの⋯!」
「あ。これ⋯ですか??」
「はい。あ、ありがとうございます。⋯⋯な、何ですか??」
俺は彼女をじっと見つめてしまっていたらしい。はっ。と我に返ると、とりあえず会社で覚えたことを引用し、誤魔化すことにした。
「あ、いや、高校に来て、初めてしゃべったから⋯。俺、村田想士。その、よ、よろしく。」
「こ、こちらこそ。私は、花井紗菜です。私も初めて話したので、その⋯よろしくです⋯」
どこか似ていると向こうが悟ってくれたのか、ニコリと笑ってくれた。
っていうか、俺話すの上手くね?!
(上手くはない)
おほん。失礼。
会社関係があったとはいえ、すごく自然な会話に繋がったのが嬉しかったのだ。
体育館に移動して行われる入学式。校長先生の話以外では、特に聞くこともなかった。
式を終え、クラスに戻ってきた生徒をまとめるように、先生が教卓を叩いた。ってか、先生めちゃくちゃ若そうだな。
「はーい。じゃあ、今日からこのクラスを受け持つ、橘 美里です。よろしくねー。」
すごい緩い感じの女の先生である。「よろしくー。」と、みんなが緩く返事をすると、それだけで今日は解散となった。
「想士ー。帰ろー。」
「あ、うん。待ってて。支度しちゃうから。」
今日1日だけで、そこそこに変わった気もする。話したこともない人と少しだけだけど、話もできた。
このままちゃんとしていれば、いい高校生活になるのでは?そんな期待を胸に抱いた。
夏実と下校なんて、何年ぶりだろう⋯。俺はタイムリープしてるから、最後はいつだったか、覚えてないんだよなぁ。
「ねぇ想士。今日どっか寄り道していかない?せっかく早く終わったし。ね?いいでしょ?」
「まぁ、別にいいけどさ。あんまり遅くなると、
お母さんが怒るんじゃない?」
「だいじょぶだいじょぶ!そんなに遅くなんないし。」
彼女はニコリと笑う。そんな笑顔を見ると、なぜかホッとしてしまう自分がいた。
ここは市街地。周りから見たら⋯カップルとか?⋯⋯いやいやないないない。夏実に限ってそんなことは無い!
「ねぇ想士。」
「──」
「想士ってば!」
「っ!ごめん。なに?」
「もぅ。今日の想士なんかおかしいよ?」
「あはは⋯。そんなことないよ。」
そりゃ、タイムリープしてるかも。なんて言えないからな。
「ふーん。あ、それよりさ、あの子、さっきからキョロキョロしてるんだけど、うちの制服じゃない?」
「あー。確かにうちの制服だな。⋯ってかあいつって。」
「ん。想士あの子知ってるの?」
「確か、同じクラスの花井紗菜ってやつだ。今日少しだけ話した。」
「え?!あの想士が話した?!」
「うっせぇなぁ。」
「まぁ、それなら困ってるみたいだし、話しかけてみる?」
「俺は別にいいけど、夏実はいいのか?」
「へ?いやいや、私を誰だと思ってるんだい?!仲良し隊長夏実ちゃんだよ!」
「⋯⋯」
なんだその小学生みたいな組織は。すげーアホ感が滲み出てるぞ。
俺たちは、彼女がさまよっているところまで近づくことにした。
「あの⋯。日ヶ崎南の人ですよね?」
「ひ、ひゃい!」
「ひゃい?」
盛大に噛んだなぁ。花井さん。
「あ、いえ⋯⋯⋯すみません。日ヶ崎の生徒です。⋯って、あなたは、想士さん?」
「同級生にさんづけか。まぁいい。そうだよ。えっと⋯花井。」
さすがにいきなり下の名前で呼ぶのは恥ずかしい&申し訳ないのでやめることにした。
が、返ってそれが、夏実のからかいスイッチを入れてしまった。
「え。、なになに?さんづけだ。ってポロッと言うのに、想士は苗字なの?それもおかしいんじゃないかな?ね?紗菜ちゃん。」
「紗⋯⋯菜ちゃん。⋯⋯うん。そうだね。えっと──」
「あ!そうだった。自己紹介してなかったね!私は古川夏実。同じクラスだよ!」
「知ってるよ。少しだけど⋯。明るくて元気で、羨ましいよ。その。夏実⋯さん。」
「もぅ!なんでそんなに硬いの?普通でいいよ!」
「う、うん。わかった。夏実ちゃん。」
「うんうん!ほら想士。わかった?こうやって仲を深めていくんだよ!」
「そんなんわからんでええわ!」
「あぅ!」
頭にチョップを入れる。
「もー!ひどいよぉ!紗菜ちゃんもそう思うよね?」
「え。あ⋯うん。」
「あぅ?!」
もう一度チョップ。夏実は頭を抑えて涙ぐんでいる。
「ほら。⋯⋯紗菜も困ってんじゃねぇかよ。」
「いや、そんなことは⋯ないよ。ただ、名前で呼ばれたことがあまりないから⋯。」
俺はこの時、あることを悟った。もしかして紗菜も、俺と同じタイプなのではないか?人と関わることが苦手で、どうしても馴染めない。そんな紗菜の気持ちがわかる気がした。
「ね、ねぇ。いきなりだけど、質問してもいい?」
「ん?なになに?この夏実ちゃんに全ておまかせ!」
質問の許可をもらった紗菜は、とんでもないことを口にした。
「想士⋯くん。お、夏実ちゃんって、その⋯お、お付き合い⋯してるの??」
「っ!」
「へっ?!」
さすがにこの質問は夏実も、想定外だろう。
「なななな何言ってんの?!私と想士が?!ないないない!ありえるわけないじゃん!」
「そうそう!俺が夏実なんかを好きになるわけないだろ!」
「夏実なんかってなによ!ちょっと酷くない?!」
「それを言ったら夏実だって、そこまで拒絶しなくてもいいだろ!」
「うっさいわよ!」
「いてっ!」
いきなり腹パンしてくるのは反則だろ!お前のパンチ地味に痛てぇんだよ!俺と夏実は、お互いを睨みながら会話を交わす。「クスっ。あはははは!」
中間に入るかのように、1人の女子。すなわち紗菜の笑い声が響いた。
「紗菜ちゃん?」
「あ。ごめんね。ただ、あんまりにも面白かったからつい⋯。」
その途端、睨み合っていた俺と夏実も笑った。 「でも紗菜ちゃん!私たちはあくまで近所!ただの仲良しだから!」
「それについては同意見だ。」
「そっか。お似合いだと思ったんだけど。」
《ないないない》
二人で声を合わせて否定した。でも、こうして笑える関係も悪くは無いかな。
「あれ?そういえば、紗菜ちゃん、なにか困ってなかった?」
「あ⋯うん。実はお母さんに郵便物を、ポストに出してきてって言われたんだけど、うちの方はポストすらなくて⋯。こうして街まで来たら人が多くて」
すごいくらいに重症だった。人混みで動くことすらままならないらしい。
「え?そんなこと?それなら私が出してこようか?」
「⋯いいの?」
「もちろん!お安い御用ですぜ!」
「いや、なんで口調変わってるんだよ」
「その、ありがとう。」
「全然!じゃあ、行ってくるから、想士は紗菜ちゃんと一緒に待っててねー!」
「へいへい。」
夏実は子供のように大きく手を振ると、あっという間に人混みへと消えていった。
「すごいね。夏実ちゃん。」
「そうか?まぁ、俺も人混みは嫌いだからな。その気持ちわかるよ。」
「想士くんも?」
「まぁ。正直俺だってほとんど友達がいないから。中学の時は基本1人だった。1人でいるうちに、人と関わることが怖くなってきちゃってね。」
「わかるよ!その気持ち!私も⋯そんなんだったから」
「俺たち、案外気が合うかもな。」
「?!そ、そうかもね⋯」
あれ。少し言いすぎちゃったか?会って1日の人に「気が合う」はアウトだったのか?対人スキルがない俺は、何が良くて、何が悪いのかするもわからない。
「ねぇ、想士くん。もう一度聞いてもいい?夏実ちゃんのこと。」
「──交際の事か?」
「うん。ごめんね。すごい仲良さそうだったから。」
何でこんなことを聞いてくるかはわからないけど、本当のことなので、素直に答える。
「本当に、付き合ってないよ。夏実とは、幼馴染で、昔から仲がよいだけだよ。」
「そ、そっか。わかった。ごめんね。」
「いや。別に聞かれるのは構わないんだけど。」
「あのね、想士くん。もしかしたらだけど、好意がないのは、想士くんだけっていうことはない?」
「え⋯。夏実は違うってことか?」
「もしかしたらだけどね。⋯そんな気がしたの。」
「あの夏実に限ってそんなことは無いと思うぜ?長年一緒にいたから、わかるんだよ。夏実の単細胞は、恋というものを知らない。」
「単細胞って⋯そんな言い方しちゃっていいの?夏実ちゃんが聞いたら怒るよ?」
「大丈夫大丈夫。」
「ならいいけど⋯」
大丈夫ではなかった。
いててててててててて!
頬をつままれていた。⋯いや、誰に?!
「なに?私の悪口でも言ってるの?」
そこには夏実がいた。
「な、夏実?!お前一体いつから⋯?!」
「えっとね、『あの夏実に限って』あたりかな。」
「うわーーーー!」
「だ、だから私は言ったよ?夏実ちゃんが聞いたら怒るよ?って。」
⋯まさか、紗菜は知ってたのか?!そんなのありなのか?!
「いやー。紗菜ちゃんが黙っててくれたから、ずっと後ろにいられたけど。聞いていたら、どんどん私の悪口言うじゃない!」
「それは⋯⋯」
夏実は本気で怒った素振り(怒ったようには見えないのだが)をして、足をバタバタさせている。
「すいませんでした。」
これはさすがに俺が悪いので、素直に謝ろう。
「どうしよっかなー。」
「夏実ちゃんのお願いを1つ聞くってのはどう?」
おい紗菜。そんな夏実ががっつきそうな提案すんなよ⋯。
「おっ!それいいね!」
「マジで言ってんの?」
「当たり前だよ!じゃあー。
パフェ2つ奢りね!」
ほら⋯すぐにこうなるんだよね。
「ってか、なんで2つ?!」
「1つは、紗菜ちゃんの分だよ!そうと決まったらレッツゴー!」
結局、夏実、紗菜、俺。
3人分のパフェのお金を支払った。パフェを食べ終わった俺たちは解散し、それぞれ自宅へと向かった。
夏実と別れ、ようやく自宅へ帰った俺。
「あ、お兄ちゃんおかえりー。」
20年前だから⋯今中2だと思われる妹に迎えられた。
「ただいま。春。お母さんは?」
「ママは今、買い物に行ってるよー。」
村田 春。おっちょこちょいで、ドジっ子天然の妹だが、なぜか成績だけは、優秀らしい。
「お兄ちゃん、高校どうだった?」
「まぁ、何とかなりそうだよ。」
「えー。あの怖がりで臆病なお兄ちゃんが?」
ニヤニヤしながらこっちを見てくる。くっそ。悔しい。
「うっせぇな。ご飯できたら呼んでくれ。」
「はーい。」
妹は、人をからかうのが好きで。元気なタイプ。だから夏実に似てるし、夏実とも仲が良い。こんな性格の兄をからかって楽しんでいるみたいだ。
そんな妹を置いて、俺は部屋に向かう。カバンを置き、私服に着替える。その時に、ふとケータイを確認した。
あのメールは一体なんだったのだろうか。
そのメールを見ようとして、俺はあることに気がついた。
⋯⋯⋯メールがない。
見てはいないものの、消去まではしていないはずなのに、なぜかメールが消えていた。
「お兄ちゃーん。ご飯だよー!降りてきてー。」
考えても仕方ないから、とりあえず一階へと降りる。
普段と変わらない夕食のはずなのに、一段と美味しく感じた。
恐らく。20年ぶりに食べた母親のご飯だったからだろう。
将来俺があんなダメ人間になった頃、母さんたちはどんな生活をしていたんだろう。それを聞くことすら怖かった俺は、親との連絡をほとんど取らなかった。
取ったとしても、年末の安否確認くらいである。
「ねぇ想ちゃん。学校はどうだった?」
「まぁ、普通だよ。でも、夏実が同じクラスだから、少しは良いかも。」
「あら、夏実ちゃんと同じなのね。それは安心だわ。」
どことなく普通の会話を終えた俺。そう。俺はこういう生活が欲しかったんだ!心がとても和やかだった。
夕食を終え、自室へ戻った俺は、再度ケータイを見る。
あれ?通知が来ている。
ソシャゲの通知の横に、メール通知も。
俺は恐る恐るメールを開いた。その内容は⋯
『高校生活1日目はどうでしたか?楽しんでいただけならなによりです。』
⋯⋯⋯まただ。またこのメールだ。
今日は勇気を出して、返信をしてみようと思った。
『あなたはいったい誰なんですか?そして、なぜこんなことが出来るのですか?』
送信成功という文字。どうやら現実にあるメールアドレスらしい。なぜかこちらからはアドレスが見えないんだけど⋯。
メールを送ってからは、いつも通り、高校時代ハマっていたソシャゲをする。
⋯⋯⋯
メールを送ってからどれだけ時間が経っても、返信はなかった。仕方ない。明日の朝には来てるだろう。
そんな気持ちで寝ることにした。
もちろん、次の朝になっても、返信が来ることは無かった。
意味不明でどうしようもないタイムリープがスタートした。
また次の朝が来るのかな?もしそうだとしたら、このまま怖がらずに、みんなと仲良くなろう。
そう思いながら眠った。
少しでも、面白いなとか、今後に期待だな。とか思っていただけたら、ブクマ&感想等、どしどしお願いします!