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貴方も魔法使いだったんですね!

  ひゅるりと風がふく。生暖かい気温のなか、三人の少女が歩いていた。星弥とレカ、甘美だ。仲のよい三人は今日、たまたま帰り道でばったり会い、一緒に帰ることにしたのだ。そして、たまたま闘いをしようとしているマリカとルカに会ったのだ。なんとなく影に隠れ、様子を眺めている。

「早く槍を構えなよ?ほら。」

  空に浮かんでいる少女が剣を振った。すると空気が固まり、緑色の光を帯ながら飛んでいった。マリカは槍で何とか防いだ。割れた固まりの破片がルカの方へ飛んでいった。

「じゃあこれはどうかな?」

敵はそう言うと地上に降りて来て大剣を振った。マリカが槍で剣を止める。まるでアニメを見ているような感覚になり、ルカは興奮していた。そんな時、敵がもう一度空気を固めた。マリカは咄嗟に構え、防ぐことに成功したが、割れた空気の破片がルカの方へ飛んでいった。

「!ルカっ」

「ソイヤッ」

「!!!!!!!!!」


  マリカがルカを運び、何とか避けた。そう、いわゆる[お姫様抱っこ]で。

「ななななななな!ちょっとマリカ、下ろして下ろして!」

「今は無理。気ままはっぴゃくは後で言うて!!!」

  ワガママじゃないし、スカートめくれてる、中見えてるー、と赤面しながら顔を隠す少女を真剣そうに抱える・・・なんとも少女漫画でありそうなシチュエーションだ。

「えェェ!!そんな奴居たっけ?!?!」

どうやら敵は本気でルカのことが見えていなかったらしい。

「え、いつから波白さんと仲良くなったんだ、ルカのやつ。」

  星弥が笑った。こいつら、面白いな。そして立ち上がると、闘いの場に入っていった。

 

「おいお前。あたしも混ぜろ。」


みんなの動きが止まった。一分間くらいの静寂の後、高笑いが響いた。

「っはははははははは!!何いっちゃってんの、一般人の癖に。殺すよ?」

「星弥?!?!ここは危ないよ!」

「戸方さん、戻って戻ってっ」

「何やってんの、星姉!」

   敵の笑い声。敵にとっては星弥はただの弱いものとしか見ていなかった。ルカやマリカ、甘美とレカの心配する声。皆の声がするなか、それでも星弥は一人敵に近づいた。


「はははははははは!あんた死にた、い、の・・・」


  敵の声が静まった。敵の周りに、赤い血飛沫が飛んだ。敵の目が見開いた。彼女は、攻撃されていたのだ。

「静かにしろ。」


    一般人のはずの星弥に。


「それは、白、魔術・・・・?」

  マリカが不思議そうに呟く。敵は星弥の持つ大鎌で腹を裂かれ、苦しみもがいていた。

「魔術・・?よくわかんないけど、あたし、変なのが使えるんだ。」

ルカは目を見開いて驚き、レカは口をあんぐりと開け、甘美はニコニコと満面の笑みを浮かべた。星弥は何事も無かったように振り向くと、急に土下座をし始めた。

「ん?!ちょちょ、何やってんの星弥!」


「皆ごめん!実を言うと小学校の頃からこの変なのが使えてたんだ。でも、この事言うと嫌われるって思って、言えなかったんだ。」


星弥立ち上がると、今度はルカを見て土下座をした。暗い夜道に少女が六人。しかも一人がうずくまっていて、もう一人が土下座なう。側から見ればかなり奇妙な光景だろう。


「ルカ、ごめんな。あたし・・・」

「ちょっとストップ。私は全然良い。ていうか、嬉しいんですけど、親友に魔法使いがいるとか。もっと早く行ってよお!」


ルカの顔はまるでおもちゃを買ってもらえてとても嬉しそうにはしゃぐ子供のようだった。予想外の反応に、星弥は目を見開いた。そっか。ルカは非現実的なのが好きなんだ。なんだ、もっと早くから言っておけばよかった。星弥がありがとう、と言おうとした時。


「っは!そんなに魔法使いがいたとはねェ!予想外だよ。」


敵だ。服についた汚れを手で落とし、ゆっくりと立ち上がった。怪我がひどく苦しいのか、息遣いが荒い。立ち上がり、マリカ達をきっと睨み付けると吐き捨てるように言った。


「ま、今日はここまでだね。あ、そうだ!名前教えよう。次覚えてなかったら殺すから。」


そんな理不尽な。無理に決まってるだろ!とルカが怒鳴ったが、また無視されたようだ。少しムッとしたルカの顔を見て、敵は満足そうに笑った。


「私は志保。ミドルネームは・・・あ、そこはいっか。まぁ、じゃあねぇ!」




「あのリボン、何者だ・・?」

暗い部屋に、人が一人。志保だ。因みにリボンとは、星弥のことだ。

志保は本を取り出すと、また目を閉じた。すると、本に文字が浮かび上がった。


「星弥さんね。!お母さんがいないのか・・・かわいそうに。」


あ、そうだ!と思い出したように、志保は指をパチリと鳴らした。すると光の中から幼稚園ぐらいの少年が出てきた。マジシャンのような燕尾服を身に纏い、白い小さな手袋をはめた少年。


「ね、レオン。ちょっとこの人達、見て来てくれない?」


そう言うと彼女は写真を取り出した。マリカ、星弥、レカ、甘美が映った写真だ。何故かルカだけ居らず、写真に写るみんなの顔はどこか寂しそうだった。


「うん、わかった。行ってくるね姉ちゃん。」


レオンという名の少年ははにかみながら光とともに消えて行った。


「ふふふ!これであいつらの弱点がわかる!待ってなさいよマリンカ!」




ルカの存在は、また忘れられてしまったのか。

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