彼女は魔法使いですね?!
「マジかよ?!?!またかよ!ほんまにやめてェェェ」
どうも、お久しぶりです、ルカです。また魔物と(生死をかけた)鬼ごっこ中です。やっぱり魔物は足が速く、なかなか疲れるんです‼
「は、や、い!!」
最初は一匹だけだったけど、いつの間にか三匹に増えていた。その中の一匹が妙に足が速く、蹴りをいれるタイミングが掴めない。色々考え事をしているうちに、足元に石が・・
「痛っ・・・?!・・・・・・・あああぁぁぁあぁあぁぁぁあ」
じいん、と右足に痛みが入る。右足が、なかった。石につまずき、テンポを崩した瞬間に魔物に攻撃されたのだ。バランスが取れなくなり、どしゃりと地面に倒れこんだ。千切れた足は遠くに転がっていて、周りは血で恐ろしいほど溢れかえっていた。気持ち悪い。
「・・・っあ」
魔物は目の前にいた。とんがった爪をぎらりと光らせ、奇妙な歩き方でやってきた。
「もう、間に合わ・・・」
爪が目の前に伸びてきた。そして、腕を振って・・・・・
ぐしゃり。
「今なんかキモい音しなかったか?」
一方その頃、優人は友達の西之宮瞳也と杉谷陸の三人で夜道を歩いていた。
「別にしてねぇよ。それよりさ、あらざーさ、今日、妙に波白の事観てたよな。もしかして気になってんの?」
瞳也が肘でツンツンつついてくる。もしかして波白が空を飛んでいるのを見たときのことだろうか。確かに、あの時は何回もあいつの席を確認してたな。あ、ちなみに「あらざー」は俺のあだ名。
「そうだったね、十六回も観てたよ。」
「杉谷、お前はなんでそんなに数えてたんだよ・・。ていうか、違うからな!いやらしい目で見てないから な!あいつが、・・・」
その時、あの事を言っていいのか。もし言ったら、呪ったりしないだろうか、と一瞬考えたが、俺は隠し事が苦手だ。だから、
「あいつが、魔法使いだったからだよ。」
するっと言ってしまった。あ、やべ。変なやつに見られないかな。
「は?お前大丈夫?」「熱でもあるのかなぁ?水ぶっかけてみる?」
今一番心配なのは、陸の言葉だ。お前も熱あるんじゃね?
あの嫌な音が聴こえて、二秒くらい経った。反射的に瞑った目を開けた。
「・・・・・え?」
目の前で紫色の血や肉片が飛び散っていた。魔物のものだ。顔にかかる!と思いきや、目の前で灰に変わっていった。灰の後ろには、魔物と、一人の少女がいた。
銀色の槍を持ち、チャイナドレスみたいな服に身を包んだ、漆黒の髪を持つ少女。
「波白・・・マリカさん?」
彼女の鋭い瞳が、私を捉えた。紅い目がキラリと光った。
「名前、覚えてくれたんやね!」
にこりと笑った。今まで見た事ない、綺麗な笑顔を。
「うち、あんたとずっと友達になりとうて!ほんまにうれしぃ〜!あ、やべ、大阪弁喋っちゃった。ゴホン・・・、それより時間無いや!ちょっと下がってて。」
大阪弁喋ってた・・・じゃなくって、いつのまにか波・・マリカさんは槍を構え、攻撃の準備をしていた。
「バーンズ・フューエトラーゼ!」
彼女が何やら呪文を唱えた。すると、槍から紅い炎が!
マリカさんは蝶のように華麗に飛び回りながら長い槍で敵を貫く。この美しい動作に、私は思わず見とれてしまった。あっという間に魔物は灰へと変わり、あたりが静寂に包まれた。
「・・・・超かっこいい」
魔法やら超能力やらが好きな私は思わず興奮してしまった。マリカさんはニコニコしながら私を見ていた。彼女は私に近づき、手を取った。すると光に包まれ、足の痛みが引いた。脚がくっついてる!
「実を言うとね、ウチはあんたとこの世界を守るために来た、魔法使いなんや!」
「うん、知ってた。」
私が言うと、マリカさんはえええええ、と大袈裟に驚いた。可愛い。
「そーだ!もうマリカさんって呼び方はやめて。マリカって呼んで!ウチらはもう友達や!」
彼女がにこりと笑った。
「・・・うん、」
一川野ルカ。生まれて初めて、友達に興味を持ちました。
「ねェ、お友達ごっこはやめようよ。」
空から声がした。はっと上を見ると、栗色の髪の少女が浮かんでいた。マリカは彼女に気がつくと、すっと立ち上がった。彼女はニヤリと笑うと、
「私と闘おうよ、最弱で最強の魔法使い、マリンカ。」
光の渦から、大きな剣を取り出した。その大剣は月の光にあたりキラリと輝いていた。
どうやら影の薄い私は無視されたようです。