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こちら天上界俗世課~マイナー下級神とゆかいな仲間たち~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:マイナー下級神の仕事中毒(ワーカホリック)は止まらない
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第一話 有給休暇は貰えない


「助けてくださいっ、アシュリーさん!」

「……」


 助けを求めてくる彼女(・・)を、目の前の光景を呆れた目で見ている私は悪くないはずだ。


   ☆★☆   


「あの、課長。有休を使いたいんですが」

「だーっ、クソッ! 転生課の奴ら、またやりやがったな!?」


 課長の元へ有休申請に向かえば、相変わらず転生課に対するイライラ度合いは高いらしく、どこからの連絡なのかは分からないが――いや、大体の予想は出来るのだが――、内線で話し終えると、投げ付け気味に受話器を叩きつけるかのように戻す。


「俺たちは、転生課の奴らの尻拭い担当じゃねーんだよ! ――で、何だって?」


 どうやら、いつも以上に怒ってはいらっしゃるようだが、こちらの用件を聞けるだけの余裕はあるらしい。


「有休を、有給休暇をください」

「却下。略さずに言ってもダーメ」


 笑顔で断られた。

 しかも「このクソ忙しい時に、何言い出してくれてんだよ。ふざけんな」という副音声も聞こえた気がする。どうしたものか。


「それよりも、仕事しない?」

「なら、有休で片付けます」

「うん、仮にも休み中なのに、いつも通りの仕事してたら、有休の意味ないからね。それ」


 まあ、そんなやり取りも経まして、有休による『いつも通り(・・・・・)の仕事』の始まりなのでした。





 そんな私に与えられた仕事内容は、前回同様の『婚約破棄』関係なのは『婚約破棄』関係なのだが、状況が少しばかり違うらしく『どうしてそうなったのか』と言いたくなる展開になっていた。

 とりあえず、溜まりに溜まった有休を消化するために、一年間という期間を設けて、『アシュリー』という偽名を使って、状況観察の開始である。

 そして、最初の半年で把握したことは――……


「助けてくださいっ、アシュリーさん!」

「待ってください、ナナメリア様。彼女の相手をするぐらいなら、私と一緒に過ごしましょう!」


 何か、ヤバかった。

 私に助けを求めてくる少女――ナナメリアはまだ分かるが、彼女を追い掛けている(乙女ゲームとかの主人公みたいな)少女は『そちら』の性癖でもあるのかと疑えるほどに、ナナメリアをどこか嬉しそうに追い掛け回していた。それはもう、最初はツンデレ対応していたナナメリアが怯えて逃げ出すほどに。

 そして、少女に好意を寄せる――攻略対象(仮)たちの顔もヤバいことになっていた。

 完全に陥落はしていないのだろう、ナナメリアの婚約者が「ナナは俺のだから、お前こっち来るな」的なことを言ったのに見事に無視され、他の攻略対象たちも一緒に過ごしたいのに、少女はナナメリアしか見ていない。

 となると、彼らから見れば異性であるにも関わらず、ナナメリアは嫉妬されるわけで。


「状況を知っているのなら、婚約者を助けてほしい」

「どうしても、彼女から逃げ切りたいの。そうしないと彼らも怖い」


 ――今回の、依頼。『ライバル的立ち位置にいる令嬢、ナナメリアの救済』。

 依頼者はナナメリアの婚約者であるアルトリアと、ナナメリア本人。


 だが、彼らは私がマイナー下級女神だと知らないので、普通に同級生に相談する感じで相談してきた。

 では、どこから私の存在を知ったのか。

 アルトリアと同じクラスになり、私と一緒に有休消化に来たウィルリードが「隣のクラスのアシュリーなら、多分どうにかしてくれるぞ」と丸投げしてきたのだ。

 次は私が丸投げしてやろう。そうしよう。


「ああ、それは分かる。確かに私から見ても、あれは怖い」


 見ていた限り、少女はナナメリアだけにああなる(・・・・)のだが、何か表情が怖いのだ。それが、どうにも表現しにくい怖さで、どう説明したものか。


「どうにか出来そうか?」

「手が無い訳じゃないけど……」


 仮にも女神だから、神の力で接触できないようにすることは出来るけど……それじゃ、駄目だよね。


「けど?」

「いや、駄目になった場合のことも考えて、いくつか策を考えないとね」


 そう約束してしまったから、私がナナメリアたちと話していれば、ナナメリア大好きな彼女が知るのも早く。


「ナナメリア様! 何で彼女は良くて、私は駄目なんですか! 彼女のどこにそんな魅力が!?」


 知らんがな。

 ただ、その一言に尽きる。


「あ、あのね。そもそも、私たちは――」

「とにもかくにも、私たちの邪魔したら、許しませんからね!?」


 何をどう許さないのかは分からないが、やはり前途多難であることだけは理解した。



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