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こちら天上界俗世課~マイナー下級神とゆかいな仲間たち~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:マイナー下級神の仕事中毒(ワーカホリック)は止まらない
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第五話 閉じ込められたら


 終わらせたい。ああ、終わらせたい。終わらせたい。

 こんな句を詠んだのだって、早くこの問題を解決して、ウィルリードとともにのんびりと有休を過ごしたいからだ。

 それなのに、それなのに……


「マジで、何でこんな状況になってるの」


 だが、嘆いても仕方がない。

 私は女神。下級の女神かつマイナー女神だけど、神様だもの。……今は人間だけど。



 さて、現実逃避はここまでである。

 何が起こったのか言うのなら、誰かさんの罠に()まって、攻略対象の一人と仲良く閉じ込められた訳です。何てこったい。


「……」

「……」


 私は仮にも女神なので、普通に魔法を使おうが神力使おうが脱出しようと思えば出来ます。

 けど、彼はどうしようか。

 私が出ていって、助けを呼ぶという手もあるけど、そこまでの流れを見られたら、絶対に何か言われかねない。


「……」

「……」


 一番の救いは、双方ともに大怪我してないことだろう。

 まあ、怪我していたところで、私が瞬時に治すので文句を言わせる暇は与えないし、治した後に文句言ったら、怪我の状態に戻してしまえばいい。


 ――それよりも心配なのは……


 ウィルリード、気づくかなぁ。

 つか、気づいて暴れてなきゃいいけど。


「……」

「……」


 一気に不安になってきた。

 ちなみに、双方ともにさっきから話してないのは、私は考え事してるし、彼は単なる無口(+無表情)だからである。

 しかも、何かあっても困るので、物理的に距離を取っているから……うん、多分彼女にも疑われる可能性は、減ったのかもしれない。


「……」

「……」


 つか、私たちを閉じ込めたお嬢さん方、おとがめとかどうなるんだろうか。

 私は頼まれたから(どうなるのか分かっていながら、あえて)引き受けたのだが、まさか彼が来るとは思わなかったし、彼まで閉じ込めた以上、お嬢さん方、確実に何か言われるよね?


「……」

「……」


 彼も彼で、何でこんなとこに来たのか分からないから、どうすることもできないし……


「……」

「……」


 さて、どうしよう。お腹が減ってきた。

 いや、私は使用属性が無属性だから、亜空間使えるし、そこに大量の食料とか詰め込んであるから、そこから出して食べれば良いけど、そんな私の様子を見せられる彼にしてみれば、拷問だろう。

 それに、『彼女の敵』扱いしている私の食料など、受け取りたくもないだろうし。

 となれば、取れる手など限られてくるわけで。


「……どうしたものか」


 悩みどころである。

 そもそも私たちが居るのは体育倉庫である。

 貴族も居るのに、体育なんてやるの? とお思いだろうが、体力作りと護身術は体育の授業の範疇だし、騎士を目指す人たちは必須科目なので、この学園にはそういう場所が存在している。


 ぶっちゃけ、誘拐されて、大きなお屋敷に閉じ込められましたという状況だったら、無理矢理にでも脱出して、食料を探しに行けたり出来るんだけど、今居るのは体育倉庫だもんなー……


「……」

「……」


 夕飯、食べたい。

 本当ならしっかりとしたもの食べたいけど、こんなところじゃ火を使うことすら無理だから、そのまま食べれる木の実とか果物系にしておこう。

 一応、お坊ちゃんな彼には動物を捌くどころか、見ることすらダメだと言われかねないからね。


「……何してるの」


 君、そんな声だったのか。

 とりあえず、第一声聞けただけでも良かったよ。

 というか、亜空間に手を突っ込んでるときに話しかけないで欲しい。


「いや、お腹空いたから、何か食べようかと」

「……」


 とりあえず、りんごを二つ分取り出したけど……


「食べます?」

「……いらない」

「そうですか」


 いらないというのであれば、二つとも食べてしまおう。

 二つも食べれば、腹の足しにはなるだろうし。


「……」

「……」


 そのままかぶりついても良かったけど、持ち歩いてる十徳ナイフで食べやすい大きさに切っていく。ゴミを出さずに済むから、皮も食べられるのは有り難い。


「……」

「……」


 それにしても視線が痛い。


「……」

「……」


 私が彼の方に視線を向ければ、こちらを向いていたはずの目は逸らされる。

 そして、私が目線をりんごに向ければ、再度視線を感じる。

 欲しいのなら欲しいって言えばいいのに、さっき断ったから言えないのと、プライドなのかなぁ。

 彼女からのものなら、隣で一緒に食べていたんだろうけど……今一緒に居るのは私だからなぁ。


「……」

「……」

「……」

「……」


 少しだけ待ってみているけど、声を掛けてくる様子はない。

 仕方ない、か。


「これ、食べてください。何も食べないよりはマシだと思うので」


 ずっと視線を感じて、それが気になるから、食べてほしい。

 とりあえずりんご一つを丸々渡してみれば、受け取ってはくれた。


「……」

「……必要なら切りますが、特に入らなければ、そのままかぶりついてください」


 入らないかなー、とは思ったけど、一応言っておく。


「……」

「……」


 どうやら切る必要は無いらしく、彼がそのままかぶりついたのを見て、私も自分の分を片付けるために、再度口をつけ始める。


 ああ、誰か早く気づいて、助けに来てくれないかな。


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