1 お目覚めは薄暗い馬車の中で
ゆっくりと目を開けた。
ぼんやりとした視界には柔らかな朝日が入ってくる。
横になっている自分の体を起こし、ぐいーっと背伸びをする。
学校行くのめんどくさいなぁ。
今日も平穏な日常を過ごしたいなぁ。
なんて事を、朝起きたらいつも思っていた。
が、しかし今日は思わなかった。
代わりに思ったのは、
ーーーーーーーここ、どこ?
就寝前に見た自分の部屋とは、全く違う部屋……というよりもなんかの乗り物の中?
なんか自分の体揺れてるし、よく見たら周りには数名の女性と小さな子供が座っている。
乗り物の中が少し薄暗いせいなのか、全員の表情が暗く見える。
「あら、起きたのね」
声を掛けてくれたのは、二十代ぐらいの女性だった。
なんか表情だけじゃなく、声まで暗いような……。
「あなた、道端で眠っている所を商人の人達が見つけて馬車の中に入れられたのよ」
み、道端で寝てた!?
いや、私は確かに就寝時には自分の部屋で寝てた筈。
寝相が悪いにしたって、まず自分の部屋から道端まで寝ながら移動するなんて絶対にあり得ない事だ。
誰かが運んだとしか考えられないが、そもそもなんで私がこんな目に?
「で、でも商人の人が見つけてくれて良かった〜」
もし、私を見つけたのが誘拐犯とかだったらシャレにならん。
いやマジで。
しかし、数秒後に女性の口からとんでもない言葉を聞いてしまった。
「ーーーーーーなにが良かったのよ?商人は商人でも、『奴隷商人』なのよっ!」
「え?」
涙目の女性の口から出た涙声の言葉に、私の脳内の思考はスリーズした。
いや、嘘でしょ?
それがスリーズした脳内で、唯一思い浮かんだ言葉だ。