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『芋ケンピ』を両親が貰ってきたので世界を救ってくる  作者: 鴉野 兄貴
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空飛ぶ車のある世界

『ついにBTTF2の時間になりました\(^o^)/ 空飛ぶ車、見たかったなぁ(笑)』


 2015年10月21日(木):午後4時29分

 日本でのそれは彼、いっしー氏の言う映画の時間より若干早い。時差が存在するからだが。


「じゃ、空飛ぶ車の存在する世界に招待しよう」


 その声を彼が聞いたのはずいぶん後になってからであった。

 主のいない昏い部屋。スマートフォンが通知を鳴らし、薄型テレビが画期的なごみ処理技術のニュースを流していたが彼がそれを見ることは無い。



 2015年10月22日午前8時29分

 彼、いっしー氏はスコンと忘れていたことがある。

 名古屋に引越しする際のドサクサに捨てたはずのたすきをこともあろうに衣装籠に吊るしていたことに。


 その能力は『引き寄せ』。

 うまく使いこなせれば空だって疑似的に飛べる。どこぞの蜘蛛男形式だが。

 やれることはそれより性質が悪いかもしれない。異世界の物品すら引き寄せる。

 本当に余談だが蜘蛛糸はある程度の太さがあれば飛行機すら止めることができる。まったく本編と関係ない。


 そんな良いものをなぜ使わないというとまず最初の理由としてダサかったからであり、次点の理由として環境の変化的に使う理由もなく、また普通に日常によってその存在を忘れ去っていたからである。

 とにもかくにも彼は『たまたま』その襷を手にして『空飛ぶ車』とつぶやいてしまった。

 そして今に至る。



「あれ。ここはどこですか」


 確か大学に向かう途中だったはずなのだが。


 彼の目の前を『へい! ごめんよ!』と通り過ぎる人力車。

 ただし、空を飛んでいる。


「目がおかしくなったかもしれない」なんか昔こんな体験をしたかもしれないけど。


 山高帽にお守りを首に下げたおっちゃんがバナナのたたき売りをしながら飛んでいた。静岡時代の友人の一人なら大喜びしていたかもしれない。(※ 渥美清さんの御冥福をお祈りしております)

 おっちゃんがグーグルグラスをくれたのでそれをつけて道を歩く。

 タブレットの地図が示す地名はしらないものばかり。


 通りでは魔術師が幻影による寸劇を演じている。

 勝手にひもが閉まったり開く靴によって転んだり苦しんだりする男の寸劇に皆笑顔を浮かべており。


「なんかいいですね」


 日本円が通じるとは思わなかったが五円玉を珍しがったおじさんがたくさんおつりをくれたのでちょっと遊ぶ程度の資金はあるようだ。

 大学に向かう途中購入した炭酸飲料のプルタブを弾いて飲み干す。じゅわっと弾ける泡が膨れ上がってなぜか身体を覆い彼の身体は宙に舞った。

「おー。まさにパーフェクトな炭酸飲料ですねぇ」彼は動じない。


 足元に輝く魔方陣が現れたかと思うと子供たちが次々とそれに飛び乗る。嬌声をあげる少年たちは両手を振って彼に挨拶すると空の彼方に消え去っていく。


 雲が近づき、それを抜けると雲の上で背中に翼をつけたヤギたちが野球のような競技を愉しんでおり、白球が彼に向かって。


「あぶないですね」さっと受け止める。

 はずみで空飛ぶ車に堕ちてしまった。車の主は驚いたようだがサムズアップ。

「ホームランボールだぜ! 優勝だぜ!! もう最高だっ!」抱き着かれてしまった。ちょっとセクシーなお姉さんだった。


 頬に連打されるキスを巧みにかわし、集まってきた空飛ぶヤギたちの平謝りを微笑ましく思いながらも彼は空に向かって襷を投げる。


 青い青い空に赤い線が迸り、彼の姿は元の世界にと消えた。

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