妖怪プロジェクトX
彼らは思った。
この思いが届けば、皆が喜ぶのにと。
妖怪。
こころのつどいが形を成し実体となる。
どうしようもない妄想やくだらない思い付きが心と個性を持った彼らとなる。ゆえにどうしようもないほどバカバカしいことを普通にやってそうやってみな生きている。
こうしたらもっと楽に生きられる。そんな処世術関係ない。
既に楽なんだから楽にする。それだけだ。
「と、言うわけでてるてるぼうずをいっぱい干すことにした」
妖怪たちの議長がそうつぶやく。
意味不明だが皆は満場一致で手を叩く。
「よーでるよーでる!」
「よーでる!」
議長を讃える声が響く中、計画は実行に移された。
雨の中、寒さに震えて家路に急ぐ女子中学生はよそ様の家の軒先に吊るされたてるてるぼうずを見て固まってしまった指先を合わせてほほ笑んだ。
ローファーはぐずぐずでもう足の感覚もおぼつかない。
それでも彼女の足はアスファルトの水たまりを蹴った。暖かな家に。
吹雪の中、なぜかそりを引くてるてる坊主軍団。
なぜてるてる坊主?! その問いを放つ人間はいない。
暖かな家で味噌汁を啜り、今日起きたことを幸せに語る家族がいる。
風の中ベランダに追い出されて震えていた少年はてるてる坊主を発見した。
「なにこれ」
彼は学校すらまともに行かせてもらえない。
母は何度も父と称する男を連れてきては暴力を振るうだけだ。
マヌケな笑顔を見せるてるてる坊主にほほ笑む彼。
てるてる坊主のすそが大きく開き、中から大きな足が飛び出る。
少年はパラシュートのようにてるてる坊主を開くと、空に向けて飛び出した。
青く青く広がる空の下、たくさんのテルテル坊主が飛んでいる。
あるものは軒先の下にちゃっかり収まり、あるものはコドモのランドセルに。女子高生やサラリーマンのケイタイの根付になっていたりして身体を揺らす。
やがて星が煌めき、大地の下に人々の営みである星々が煌めくころ、少年はてるてる坊主に手を振って別れ、もとのベランダに舞い降りた。
「どうしたの?」
「ううん。妙な夢を見ていた」
「ベランダで? 風邪をひくわよ?!」
「何処か遠くに連れていってくれる夢」
「へえ? あなたはどこかに行かないでね。私の小悪魔ちゃん」
「あはは。母さん。父さんは?」
「結婚記念日を忘れることなんてないんだから、もうちょっとしたら帰ってくるわよ」
「へへ」
「うん?」
「なんでもない」
呆れる母親の暖かなスープを口に含み彼は笑う。
さっきのお話は夢物語。すべては妖怪の仕業なり。




