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『芋ケンピ』を両親が貰ってきたので世界を救ってくる  作者: 鴉野 兄貴
芋ケンピを両親が貰ってきたので世界を救ってくる
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ホレヤスクナール

 出張帰りのパパからお土産。高1の初恋以来、恋バナしてないのを心配していたらしい。パパに言ってないだけで気になる人はいるんです。いつか報告しなきゃ!

「お土産だよ」


 出張帰りのパパが変なものをくれた。

 『ホレヤスクナール』と書かれた薬みたいなお菓子。


 佐倉サチは戸惑っていた。

 高校入ってばかりの時に初恋を経験して以降、確かにパパには恋バナをしていない。だけど気になる人がいるかいないかで言えば。いる。

 サチの戸惑いを何か勘違いしたのだろうか。

 父は「面白そうだから買ってきた」とニコリと微笑んでみせたので彼女も「ありがとう。パパ」と返し、自室にその御菓子を持ち込んだのはいいが。


「なにこれ」


 瓶の中のキャンディはともすれば本物の薬に見えかねない。成分表示まで手が込んでいる。星の王子さまの『うわばみ』と『ぞう』の縫いぐるみを寝台の上に抱き寄せながらその表示を眺めるサチ。


 曰く。


 ●効能――

 ・倦怠期、ときめき不足の回復

 ・青春プレイバックができる

 ・ロマンティックがとまらない

 ・「もう恋なんてしない」なんていわなくなる

 ・ビビビと来る

 ●用法・用量――

 ・大人/一回につき二錠

 ・子供/一回につき一錠

 ※なるべく『甘噛み』で服用してください

 ●成分(二錠中)――

 ・グットクール/210ナ~ル

 ・ゾッコンエキス/180ナ~ル

 ・ミツメアウンサン/120ナ~ル

 ・ヒトメボレール/70ナ~ル

 ・コイシトール/75ナ~ル

 ・ドストライクヤン/12ナ~ル

 ……etc


 サチはその御菓子をひと口だけ食べるとそのままベッドの中で眠ってしまった。あとから思えばそれがちょっとだけまずかった。お菓子は美味しかったけど。


「また。悪夢? それとも異世界?」

 後者だったら知り合いと再開できるので少し嬉しい。残念ながらそうではなかったが。


「パパ。ママ」


 両親は元々仲が良いとは思っていたが。

「パパ。早く食べないとお仕事に遅れちゃうよ」

 腕を絡めあい、時にはお互いの食べ物を譲り合い、頬を擦り合わせてはしゃぐ両親。何時にもまして仲が良い。

 結局両親はサチが朝ごはんを口に含み、その香りと味を楽しむ間、ずっと二人の時間を楽しんでいた。

「遅刻しても知らないんだから」

 サチは学校に向かうことにした。


 なにかおかしい。

 サチの頭上では鳥たちが集い、綺麗な声をあげている。

 近所のお爺さんとお婆さんが手を繋いで踊るように歩いているのが見えた。


 警察の人がスピード違反で現チャリの女の人を捕まえたが、二人は見つめあったかと思うと動かなくなってしまった。

 犬と猫がじゃれあっている。ありえない。

「ま、いっか」

 髭面のいかつい男と、細面の青年が腕を組んでスキップしている姿は全力で無視した。

「サチ。おはよう」

 友人の美子が声をかけてきたが。

「結婚して」

 はい?!

 美子の顔を思わず見つめてしまうサチ。何を勘違いしたのか美子は瞳を閉じて柔らかそうな唇を差し出し「スト~~~~~~プッ?!」

 辛うじて鞄で美子の唇を避けたサチ。

「酷い。サっちゃん」

 美子は泣きだした。

 良心の呵責かしゃくを一瞬感じたサチだったが、後ろから誰かの腕が首筋に絡み、生暖かい感触がうなじのあたりをつたう。舐めあげられたと直感して思わず総毛立った。


 恐る恐る振り返るサチに微笑む少女。

「おはよう。サッちゃん」

 友人の栄子だった。


 醜い争いを始める栄子と美子に呆れ戸惑いつつ、サチは原因を究明すべく知恵をフル回転させていたが。

「やぁ。サチ」

 同級生の男の子が声をかけてきた。とはいえサチはこの子とは親しくはない。クラスも違う。

「結婚してくれ」

「はい?!」

 何処から摘んできたのか野の花を差し出し、膝をついて愛をう姿は少女漫画なら決まるのだが。

「サっちゃんは」

「私の」

 残念ながらこの状況では決まらないらしい。

 二人の少女にもみくちゃにされる少年。

 暴れる三人を止めようとするサチの脳裏に昨日の『薬』の件が浮かんだ。

「まさか。あのふざけたお菓子」

 そのまさかであった。



「パパ。どうするのよ。この状況」


 あっちこっちでカップルが成立していく中、ぽつんと残されたサチは自棄やけを起こして例の『薬』をパクパク。

 栄子と美子も少年を伸した後は仲良くイチャイチャしているし。

 少年は少年で介抱してあげたサチを無視して今度は通りすがりの小学生を口説こうとして警察に引っ張られていった。こんな状況でも警察は仕事しているらしい。警察の人の隣に何故か原チャリを引いた女性がピッタリ寄り添っているのが気になったが。


「美味しそうな御菓子だね」

 ん?

「ぼくにも頂戴」

 あ……。

 サチが振り返ると、彼女が気になっているひとが微笑んでいた。


「いやぁ。参ったよ。朝起きたら皆こうなっててさ。君は正気みたいだからよかったよ」


 無言になるサチの隣でその人は『ホレヤスクナ~ル』をパクパク。

 何か言わないと。想いとうわはらに言葉は出ない。

「そうそう。これ」


 その人が微笑む。


「夢オチなんだ。御免」


 そんなのありか。


 目を醒ましたサチ。

 考えてみれば今日は土曜日ではないか。

「夢とわかっていてもヒドイ」


 目をあけたりしめたり、パサパサになった睫毛を気にしながら立ち上がる。

「おはよう。パパ。ちょっと聞いてよ。ひどい夢見たんだから」


 振り返る両親に昨夜の夢の顛末を聞かせるサチ。

 気になっているひとのことは軽く伏せたが。

 頬を膨らませて抗議するサチに父は意味ありげに微笑み、呟いた。

「いいじゃないか。ステキな人に薬なんかで惚れられるより」

 それは確かに嬉しくないけど。

 パパに言ってないだけで気になる人はいるんです。いつか報告しなきゃ!


「それより、もう一つあるんだ。試してみる?」


 ウインクする父。

 彼の手には「シアワセニナ~ル」と書かれた『薬』があった。


……To Be Continued

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