なごや なごや~(いっしーさんの冒険。最終話。のはず)
なごや~ なごや。
いっしー氏はめでたく大学に合格し、静岡県から愛知県名古屋市の大学に通うために旅立った。
「そう言えば、静岡にいた時は色々あったなぁ」
相方と共に謎の異世界に旅立ったり女子高生の知り合いの何気ないtweetが実現してしまったり。高校生活だけで充分すぎるほど忙しくて充実してたのに、あの一年間はわけのわからない冒険までセットでついてきた。
@KarasunoAniki なごや~ なごや~って『馬子や馬子や』って聞こえるよね
聴こえません。
いっしー氏はお馬鹿なtweetが次々と更新されていく携帯を仕舞い、軽く伸びをする。妙なTwitterに巻き込まれる日々が終わると思うとそれはそれで感慨深い。
@KarasunoAniki うちの師匠が言うには名古屋は『花〇』って言う店がいいらしい。料金固定制で女性は無料だそうだ。
高校卒業したての未成年に何を薦めている。このバカは。
この知り合い、見当ハズレの皮肉が効いている性格は相変わらずだ。
そういった台詞はスルッとスルーするに限る。いっしー氏は再び携帯を取り出す。何処かで駅弁を売る売り子の声が聞こえてくる。
「馬子やってなんですか?」
何気なく打ち込んだ質問メッセージに即座に返答が帰ってきていた。
「牛飼いと鬼婆って伝説があるけど、この場合馬で輸送する昔の職業だな」
凄い勢いで返答が帰ってきた。張り付いているのかよ。まったく。なんでも牛飼いや馬子さんに鬼婆が襲い掛かってくるホラーな話らしい。
「ちなみに鬼婆って言うのは鬼のばあさんで可也強力かつ凶暴だ。馬くらいならバリバリ食うぞ」
へえ。
逃げて逃げてやっと逃げ込んだ先が当の鬼婆の家で、必死でメタル〇アして釜で寝る鬼婆を茹でて退治してやっつけるというホラーな物語だそうだ。
知り合いはそう抜かすのだが、『釜』だの『鬼婆』だの『牛飼い』等々次々と意味不明の言葉が飛び出てくる。そもそも釜で寝ることが出来るのか。梁にしがみついてやり過ごすとか言われてもちょっとピンと来ない。針だけにってやかましいわ。
「ほら、何時ぞや見た夢のババアが近いんじゃね?」
「全然違うと思います」
四つん這いの婆が高速移動してきた挙句、大量の芋を胃袋に押し込められるという訳の解らない悪夢の事を思い出す。そういえばあれも実現したっけ。
(※ ババアが三倍速で迫ってくる件について見解を求む 参照)
「こうカートを押してきて」
がらがらと車輪が床をきしませる音。
「駅弁を食べさせてくれる代わりに人肉饅頭にすっぞということですか。鴉野さん」
「おお。それ頂き」
うん? この知り合いが何か書くと何故か実現する。
妙な臭いに嫌な予感。心なしかイモ臭い。甘ったるいサツマイモの匂い。
「やぁ。小僧。久しぶりだな」
『まごや名物人肉饅頭』と書いたカートを押してきた婆さんはニヤリと笑う。
「あ。何時ぞやの夢の?!」
瞬間。泡立つ肌に飛び出す唾。それを受けて艶然と笑うババア。
「再びトランスフォーム!!!」
ガキガキバキゴキゅん♪ 謎の効果音と共にカートから伸びた小さな機械がくるりと回転してババアを包む。ババアもまたその腕を左右に広げ、両手が二つに裂けてその合間から巨大な刃とチェーンソーとドリルが飛び出した。
『Let's パーティィィィ?!!!!!!』
嬉しくねえぇ。こんな卒業祝い嬉しくない。
二つに分離した婆の頭の間から『卒業おめでとうございます』『大学進学祝い。祝合格!!』と書いたのぼりがパンパカパーンと出現。そののぼりを開いて婆の割れた頭から飛び出てラッパを吹いて笑う謎のペンギンたち。何故にペンギン。
「ジェットブースターオン!!!」
婆は車内で空を飛んだ。人類初の自力飛行である。
「なごや~~♪ なごや~~♪」
「こんな最終話は嫌だあああ」
頑張れいっしーさん。あなたの前途は明るい。




