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『芋ケンピ』を両親が貰ってきたので世界を救ってくる  作者: 鴉野 兄貴
芋ケンピを両親が貰ってきたので世界を救ってくる

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異世界に飛ばされたけど何時でも帰れるので冒険にならなかった話

 夜中に子供が起きているとオバケが出て何処かに連れていくよ。


 そういえばそういったことを幼き日に読んだ絵本にて学んだことがあるし、親も同じことを言っていたことがある。


 にしたって現在の状況は理不尽である。いっしー氏はそう思うとため息をついた。


「受験勉強しすぎと、早く寝すぎたから早く起き過ぎただけなんですけど」


 そもそも彼は未成年には違いないが高校卒業する年齢だ。同級生は人によってはもう運転免許を持っている。


「というか、異世界転生とか勘弁してくれ」


 いっしー氏は頭を抱えたいのだがその頭は何処にあるのやら。現在の彼の意識は肉体と切り離され何処か不明な空間を引きずられて。


「あれ? 今日の魂コイツだったっけ」

「山口。違うと思うわ。でも書類書き直すの面倒だからそのままでいいんじゃないかと」


「ひでぇ」


 ヒドイなんてもんじゃないよ。抗議したいが現在の彼は声帯が存在しない。


「良い手があるわ。異世界に捨てる」


「このモノグサ死神が」


 こういう訳でいっしー氏は再び異世界に舞い降りた。


 再びって前も転移したのか?! 詳細は拙作「『竹やり』を奪ったのでちょっと世界を壊してくる」にて出てくる。


 衝撃。頭がくらくら。衝撃を受けた影響で鼻が妙な感じ。

 目まいと耳鳴りから回復し、自分が倒れていたことに気付いて立ち上がったいっしー氏。

「あいててて。ここ何処ですか」

 いつの間にか着ていた部屋着が高校の制服とダサい『必勝』なる鹿島神社のタスキに変わっている。

「まぁたすきがあれば多少の難事には対応できるか」


 意味不明だがこの襷はタダの襷ではない。まずブサイクだ。

 普通につけていたら確実に同級生にバカにされる。


 それだけではない。『(なんでも)掴む』と言うとても妙な能力を持っている代物である。

 今回登場しない相棒の『落ちない(飛べる)』鉢巻と比べるとなんとも使い勝手の宜しくない代物だ。


 かような格好をした不審者は幸運な事に人里離れたところに落ちたらしく誰もいない荒野を水も食料もなしに流離う羽目になりそうだが彼は特に気にしていない。

 その気になれば実家の机などの自重より重たいものを『掴んで』帰還すればいいだけなので、こういった難事は彼にとってはさほど深刻なものではなく受験勉強の合間に起きた珍事でしかない。


「とりあえず食べ物」


 『調整豆乳メロン味』と書かれたパックが出てきた。こんなもの要らない。


「どうせ飛ばすならもっといいところに飛ばしてほしいよなぁ……『さっきの死神さんたち』」


 愛想よく笑う高校生の前で左右往生する男女の死神たち。


「こんにちは。死神さんたち」

「あれ? なんで俺たちここに」

「おかしいわね」


 いっしー氏は笑みを崩さずに告げた。


「取り敢えずお二人とも正座してください」


 異世界の空は快晴。元世界の受験勉強は修羅場。そんな正月前の一日だった。

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