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『芋ケンピ』を両親が貰ってきたので世界を救ってくる  作者: 鴉野 兄貴
芋ケンピを両親が貰ってきたので世界を救ってくる

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ババアが三倍速で迫ってくる件について見解を求む

 青年。いっしーはふと後ろを振り返った。


 熱気漂う静岡県。語感から涼しい県とか思われても困る。

 普通に太陽光線を受けたアスファルトは熱波を増幅させて大気を揺らす。瘴気すら放つ暑さは東京から少し離れた静岡でも健在だ。


 そんな焼けたアスファルトの上に老婆が立っている。


 暑いのに日傘も差さずゆらゆらと揺れる蜃気楼のただ中に立つ老婆。

 彼女はゆっくりと歩を進めてくる。


「あれ?」

 いっしーは振り返る。老婆は一歩進むごとに三倍の速さで地面を駆ける。結果的に歩いているんだか走っているんだか。

 つい先しがたまで遠くに見えていた老婆の顔の皺、白髪交じりの髪の詳細まで迫ってくる。

「まてぇえぇ」

 老婆はいっしーに告げた。待つわけがない。


「またんかあああ」


 振り返ると老婆は焼けたアスファルトの上を四つん這いで疾走してくる。

 何故に四つん這い?! いっしーは必死で逃げる。


「トランスフォーム!」


 老婆が叫ぶと彼女の手足に車輪が生えた。あり得ない。

 いっしーは加速装置が付いたかのようにマッハの速度で静岡県の国道を走る。既に車道と歩道の区別はつけている暇はない。老婆はそれ以上に早く走るのだ。

 というか、今フェラーリを抜いた。

 何故それでも追い付かれない。いっしーさん?!


 四つん這いの老婆は所謂加齢臭を彼に華麗に放ちながら叫ぶ。

「またんかああ」

 だから待つわけがない。


 いっしー氏は更に走る。しかし老婆の動きはその上を行く。

 毎朝ゲートボールで先読み技術を身につけている証拠だ。

 ゲートボール関係ない。


「イモ食ってけ」


 何故か老婆は大量の芋を手に呟いた。

 ふごふごふごふご。

 無理やり食わされる芋に閉口しつついっしー氏の意識は飛んでいき……。


「変な夢見た」


 熱帯夜だからだろう。

 彼はクーラーの電源を入れるともう一度夢の世界に旅立った。


「勇者よ。我が国を護ってください」

「お断りです。このまま寝かせてください」


(Fin)

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