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『芋ケンピ』を両親が貰ってきたので世界を救ってくる  作者: 鴉野 兄貴
芋ケンピを両親が貰ってきたので世界を救ってくる

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そのTweetを誰が知る

 空は晴天。風は清涼。絶好の土日休み。

 そんな素敵な日であるにも関わらず久々に登場の佐倉サチの心中は曇天であった。

「帰る帰る帰りたい帰りたいおうちに帰らせて~~!??」

「サッちゃん。諦めなよ」


 心中悶えるサチの隣で聡い性質の友人、美子がつぶやく。


 炎天下の下、母校のサッカー部の応援に繰り出した佐倉嬢含め母校の生徒たち。肝心のサッカー部は勝負の世界の必定で今回は負け試合。悔しいが仕方ない。

「女子高生のローストが出来そう」

 そしてそれは全然おいしそうではない。


 制服をうっとおしそうに摘み上げる友人。英子。

 彼女は何処からか取り出したか炭酸飲料を口に含む。

「これからバスに乗って帰るのね」

 車酔いで悲惨なことになった友人の事を想い、英子がぼやく。

「なんか変なのが見えたんだけど。あの時天使だか竜だか」

「美子、疲れているのよ」

 疲れているわけでも何でもありません。サチは思わず返答しかけたが黙る。


 その友人(男)だが、帰りのバスでは寝ていた。騒ぎは起きそうにない。

「お茶でも飲もうよ」美子が告げるとお菓子を出してきたが。

サチの手が止まる。「芋ケンピ……」懐かしくもトンでも体験の数々が脳裏をよぎりかけたが。

『あんな事件は二度も三度も起きない』平静を装い、口に運ぶ。

 芋ケンピの甘さと適度な硬さにはしゃぐ一行。

「美味しいね」「うん」外を眺めるが、別にバスが空を飛んでいるなどの異常事態は起きていない。

初見の読者の皆様には当たり前で理解不能な話だが、彼女周辺では異常事態が起きることがままある。

多くは余計な発言をうっかりTwitterにつぶやくことで発生する。


「(変なこと喋ってないし、大丈夫)」何気なくTwitterにアクセスして首をひねる。

「……」「どしたの? サッチャン」「どうした?」寝ているハズの友人がTwitterで会話している。

「ウッチャン。ウッチャン。Twitter乗っ取られてない?」その友人(男)は目覚めなかった。


……。

 ……。

「ここはどこだよ。また異世界?」ウッチャンは頭を掻いた。

Twitterが使えるところからすると少なくとも異世界ではないと思うが。


 大きな穴の中に彼はいる。

手をついてみると土の香り。ボロボロ髪にあたる泥。

さっきまで寝ていたはずなのに。夢か? 首をひねるが。

「ふえええ……」泣き声に気づき、振り返ると小さな子供が泣いている。手には大きなスコップ。

子供の泥だらけの手をみて察した彼はぼやく。「まさか、自分が掘った落とし穴から出れないとか?」そのまさかであった。


「『夢の中にいる』? それは大変」サチはTwitterで報告する友人もしくはアカウントハッカーに返信をする。

「とりあえず穴から出る」目の前で眠りこける友人のアカウントから返答があった。

ちなみに、芋ケンピを咥えながらの臨時の茶会はまだ続いている。

美子が英子に抱き付いてじゃれている中、再び返信。

「穴から出た」「おめでとう」「指示を求む」「目覚めろ」身も蓋もない。

いつの間にか臨時の茶会のメンバーが増え、更に多くの友人が芋ケンピをつまむ。

「さっさと起きないとお菓子が当たらないぞ」「今子供をあやしている」

ポリポリポリ。小柄な美子が口を大きく膨らませて無心に芋ケンピをかじる姿に英子が噴きだす。

「美子。アンタはリスか」


「どうやったら目が覚めるんだろ」


 難問だ。サチは悩む。

読者のみなには信じられないだろうが、サチの脳内には普通に夢魔が生息している。

彼に頼めば起こしてくれるのだが、友人のウッチャンにはそのような便利な存在はいない。

「明晰夢なら自分の意志でコントロールできるというけど?」「明晰夢ならTwitterにアクセスできないだろ」

異常事態なのは間違いない。

「サッちゃん。紅茶いる?」「あ、ありがとう」

眠りこけるウッチャンと本人に反して呟きを続けるTwitterアカウント。

取り敢えず紅茶を口に運びながら思案する。「あ。クッキーいる?」「頂こう」友人たちがじゃれあっている。

ふわふわと紅茶の香りがバスの匂いに混じり、揺れが身体を動かす。

それでも男友達は目覚める気配がない。

「なんかなつかれた」「おめでとう?」Twitter仲間たちから返信。

「珈琲いる?」「うん」珈琲を渡され、友人たちの視線を避けながらすばやくTwitterに返信するサチ。

「とりあえず、頬をつねるとか、空から落ちるとか、水を被るとか、起きろと叫ぶとか」「試した。無理」

これは難しい。


「今、かくれんぼしたり鬼ごっこしている」「え。まだ五分経っていないよ」「え? もう三時間ほど経ってるよ?」

どうもあっちとこっちでは時間が合わないらしい。


 美子がそろそろと彼に近づき、マジックで髭を書く。思わず吹き出すサチ。

「みっちゃんがウッチャンの顔にラクガキはじめている」「止めてくれ」

「無理。英子も混じってる」「あいつら~?!」

ポリポリと芋ケンピをかじりながらここぞとばかりに遊ぶ級友二人。ちなみにこの二人、めったなことでは暴走しないが、一度暴走すると誰もそうそう止められない。

「ずっとここにいてって言われた」「うーん」

こっちのウッチャンは結構酷いことになっている。

何処からか化粧用具まで持ち出してきた二人。

「それより、芋ケンピが足りなくなってきたから帰って来なよ」「そうする。この子にもそう伝える」

目覚めたウッチャンは化粧を片手に固まる二人にあえて穏やかな笑みで対応した。


「また。あそぼうね」


 謎のアカウントからウッチャン宛にツイートがあった。

級友二人と笑顔で罵り合う友人はいつの間にか「勿論」とツイートしていた。

サチはケイタイを仕舞い、最後の芋ケンピを口に入れ、湿気が混じりだしたそれをゆっくりかみしめた後。


まだ罵り合う三人の仲裁に入っていった。

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