Lier~砂粒のような僕だった~
初投稿作品です。
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僕は嘘をついた。理由は簡単で僕は逃げたかったからだ。
「僕は英語のスピーチコンテストで入賞したことがあるんだ」
こんなこと。僕はクラスの中では、へぼ助という変なあだ名がつけられていた。僕はそれが気に食わなかった。今日もクラスの野郎に絡まれていたところだった。
「おい、へぼ助。お前さっきの国語のスピーチで盛大に噛んだな。マジへぼすぎだろ、ありえねー」
「おいおい、やめろよ。へぼ助、泣くだろ」
どれだけ僕のことを見くびれは気が済むのだろうか。確かに僕はさっきの授業中のスピーチで盛大に噛んだ。だが、人には得意、不得意があって当たり前だ。そんなことで笑いものにされて、へぼ助、へぼ助、と言われても正直ウザったいの一言に尽きる。でも、僕にそう言い返せる力は無くて、冒頭に至るわけである。
「へー、そうなのかよ。じゃあ、英語の時間にお前スピーチしてみろよ。そこまで言うなら見せてみろよ」
野郎はそう返してきた。ここで僕は引き下がらない。こんな程度で引き下がっていたら男が廃る。ここは譲れない、そう思った。
そして次の日、運命の英語の授業はやってきやがった。正直昨日の夜から胃が痛くて堪らない、そしてそれのせいで眠れていない。不眠状態だ。そんな中でも朝のバスの中でひたすら原稿を目で追って、読んでいた。一応国語よりは英語の方が得意だから何とかなると僕は思っていた。
「せんせー、へぼ助がスピーチをしたいって言っていましたー」
あの野郎が先生にふっかけた。先生にも僕のへぼ助というあだ名は定着しているらしく、先生は僕に目線を向けた。
「そうなのか、貞重」
僕が返事に躊躇っていると、あの野郎が僕を睨み付けてきた。まるで「逃げるのか」と言っているかのように。だが、引くわけにはいかないと思い、僕は思い切って返事をした。
「はい、やります」
僕は教壇に立った。教卓に原稿の紙切れを置く。思い切って、声を出す。テーマは夢。僕はとにかく噛まないことだけを頭に置いて、ただひたすらに読んだ。頭を時々あげながらも、僕は確実に一文一文を読み上げて言った。
最後の一単語を読み終わった瞬間、拍手喝采に包まれた。あの野郎も驚いているようだ。スピーチコンテストに入賞しただなんて、真っ赤な嘘だった。だから僕はそれなりに頑張らなければいけないと思った。
「いやー、見直したぞ、貞重。お前、スピーチうまいんだな。みんなも貞重を見習えよ」
僕はその一言を聞いて自分の席に戻った。まだ心臓の鼓動の速さがもとに戻らない。でも、僕は苦し紛れの嘘によって、何か一歩を踏み出す勇気を掴めたそんな気がした。そして僕は「へぼ助」というあだ名から卒業したのだった。
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九条 瑠実