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リバース・シンデレラ  作者: 天そば
第一章 メールの送れない月曜日
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メールの送れない月曜日 2


「そっか、メアドか……」


 事情の説明を受けた嶋くんが、こくこくと何度か頷く。


 わたしたちは手近な空席から椅子を拝借し、藤井の席をぐるりと囲んで座っていた。藤井から見て正面にわたし、右手にあかり、左手に嶋くんだ。藤井の席は端っこなので、壁と机に挟まれる嶋くんがちょっと狭そうだった。


「それで、嶋君はどうしたの? なにか私たちに連絡?」


 あかりが尋ねる。わたしはどぎまぎしながら返答を待った。わたしからのメールを見てなにか言いにきたのかな、なんて考えが頭をよぎる。

 だけど嶋くんはあっさりこう答えた。


「数学の教科書忘れたから、一樹に借りに来たんだ」


 肩の力が抜けた。なんだ、わたしに用があるわけじゃなかったんだ。ってことはたぶん、メールはまだ読んでないんだろうな。嶋くん、そんなにケータイ見る人じゃなさそうだし。

 脱力するわたしの横で、嶋くんは藤井に話しかけた。


「高橋さんって、去年東京ドームで知り合った人だよな?」

「そう、その高橋さん。写メ見る?」


 藤井がケータイを机に置く。そこには、巨人の二四番のユニフォームを来て、オレンジのタオルを持った女の子がカメラに向かって笑っていた。


 セミロングの黒髪は毛先がカールしていて、大人っぽさを演出している。それに輪をかけるように唇の左下に濃いほくろが一つ。座っているから身長はよくわからないけど、細身であることは見て取れる。同い年だと言っていたけど、大学生と言われても充分通じそうだ。つまり高橋さん、一言で言えば


「美人だね」


 そう、あかりの言うとおり、美人に分類してもいい顔立ちなのだ。わたしほどではないけど。


「確かに」


 し、嶋くん? そんな、しれっと同意しないでよ。ほら、もっと美人が目の前にいるじゃない、ほらほら!


「だろう?」


 藤井、なに得意げな顔をしていやがる。べつにお前の彼女でもなんでもないだろうが!


「な、川口もそう思うだろ?」

「ええ。いままで見た中で一番美人だわ」


 嘘つけ、という視線を向けてくるあかり。ふふん、いいのよ。嶋くんの前では謙虚で控えめな女の子でいるんだから。

 高橋さんが美人と認められて相当嬉しかったのか、藤井は機嫌良さそうに笑いながら嶋くんに頼む。


「良次。よかったら、考えるの手伝ってくれないか?」

「もちろん」


 即答。昼休みはグラウンドでバットを振るのが日課のはずなのに。友だち想いの嶋くん、なんてステキなんだろう。身も心も本当にイケメンだ。


「じゃあちょっと、共通点を整理してみよう」


 机の上に転がっていたシャーペンを取ると、嶋くんは三つのアドレスの『luv-g^_^.』をマルで囲んだ。


「高橋さんのメアドは、どれも最初はこれで始まっている」


 わたしとあかり、藤井が頷く。ただ、後ろの絵文字はいいとして、『luv-g』はいったいどういう意味なんだろう。わたしがそう言うと、藤井はすぐに答えた。


「ラブ・ジャイアンツだよ。高橋さん、大の巨人ファンなんだ」

「巨人かあ……」


 横浜ファンのあかりが残念そうに肩を落とす。


「相当好きらしいぜ。なんでも、私服のシャツより巨人のレプリカユニフォームの方が多いって」


 うええ、なにそれ。そんなにユニフォーム買ってどうするの、とわたしは思ったけど、藤井は、そういうところが可愛いんだよなあ、とにやけている。人の好みも色々だ。


「この絵文字にも、なにかこだわりがあるのかしら? 藤井くんとメールするときとか、よく使う?」

「どうだろ? おれとメールするとき、基本デコメなんだよな。……あ、でもその絵文字、高橋さんのトレードマークだって言ってたぜ」


 トレードマークねえ。この絵文字、なんの変哲もない普通の顔だけど。気に入ってるってことでいいのかな。 


「二つ目の共通点だけど」


 一つ目についてはこれ以上なにもないと判断したのか、嶋くんが次の話に移る。


「昔のメアドは、どっちも最後は数字で終わってるな」


 メアド①の『1_3_』と、メアド②の『16』を三角で囲む。


「ってことは、たぶん、新しいメアドも最後は数字で終わるってことだよね? でもこの数字、いったいどうやって選んでるのかな」


 あかりが首をひねる。確かに両者には、数字という以外になんの共通点も見出せない。メアド①の『1_3_』は数字の一と三だと思うんだけど、メアド②の『16』とは桁も違うし。


「これはあれだよ。巨人の背番号」

「背番号?」


 ああでもないこうでもないと頭を悩ませていたわたしは、思わず藤井に聞き返してしまった。


「ああ。巨人の永久欠番の背番号」


 あ、とあかりが声をあげる。


(おう)貞治(さだはる)長嶋(ながしま)茂雄(しげお)に、川上(かわかみ)哲治(てつはる)だね!」

「なるほど。巨人ファンらしいな」


 嶋くんまでわかったような顔をしている。あれ? 話についていけないのわたしだけ?


「ちょ、ちょっと待って。つまり、この番号、一と三と十六は、ぜんぶ永久欠番ってことでいいの?」

「そうだよ。『1』が王貞治、『3』が長嶋茂雄で、『16』が川上哲治。先週一緒に東京ドーム行ったとき説明したじゃん」

「え? いや、あの。……ごめん、忘れてた」


忘れないでよー、とあかりが頬を膨らませる。正確には忘れてたんじゃなくて聞いてすらいないんだけど、それはまあいいや。

 むくれるあかりから目をそらし、藤井に尋ねる。


「じゃあ、新しいメアドも最後は永久欠番の数字が入るはずって考えていいのよね?」

「たぶんな。他に残った永久欠番は、四番の黒沢(くろさわ)俊夫(としお)、十四番の沢村(さわむら)栄治(えいじ)、三十四番の金田(かねだ)正一(しょういち)だから、そのうちの誰かだな」


 なにも見ずに残りの永久欠番の選手が出てくる。一人で東京ドームに行くだけあって、こいつも相当な巨人ファンなんだろう。

 嶋くんが、余白部分に『4黒沢、14沢村、34金田』とメモし、小さく息を吐く。


「問題は、どの番号が入るかだよな」

「そうよね。一つだけじゃなくて二つ入る可能性もあるみたいだし」


 最初のメアドの数字は『1_3_』で、王貞治と長嶋茂雄の二人組み。次のメアドでは川上哲治の『16』だけ。どの番号が入るかも大事だけど、何個入るかも考えないといけない。


「私、王貞治と長嶋茂雄を一緒にしたのはなんかわかるなあ」


 メアドの紙を見ながら、あかりがポツリと言った。すかさず、藤井が同意してくる。


「ああ、おれもわかる! この二人はニコイチだもんな」


 ニコイチ? と、またわたしが話についていけてないのを察したあかりが説明を始める。


「王貞治と長嶋茂雄はね、現役時代、二人で三、四番を打つことが多かったんだよ。巨人が九年連続日本一になれた原動力はこの二人で、頭文字をとって、『ON砲』とか『ON弾』とか呼ばれたりもしてた」

「へえ、そうなんだ。ぜんぜん知らなかったわ」


 とりあえず凄い人だっていうのは聞いてたけど、そんなニコイチみたいな感じだったんだ。まあきっと、野球マニアの中じゃ有名なんだろうな。


「俺も、王貞治と長嶋茂雄が二人で活躍したから、高橋さんのメアドでもセットになってるんだと思う。で、大原。残った永久欠番組でそういう人たちはいる?」

「うーん、どうだろう? 私、横浜ファンだから。それぞれの選手の基本的なことは知ってるけど、あんまり深くは知らないんだよね……。藤井君は?」

「おれも、名前は知ってんだけど詳しい活躍とかは微妙なんだよな」


 ばつが悪そうに頭をかく。それを聞いて、あかりはケータイを取り出した。


「じゃあ、ちょっと調べてみるね」


 真剣な顔で指を動かす。たぶん、ウィキペディアかなにかで調べているんだろう。

 しばらくケータイをいじったあと、あかりは、あ、と声をあげた。


「ね、ユズ。今日って七月九日だよね?」

「そうだけど。それがどうかしたの?」


 あかりが顔をあげる。瞳がきらきら輝いていた。


「うん。あのね、沢村栄治と黒沢俊夫の背番号が永久欠番になったのは、二人同時だったんだって。しかもそれが球界初の永久欠番で、認定された日は、一九四七年の七月九日!」


 一九四七年の七月九日? それってつまり、


「今日ってこと?」

「そう。これって偶然なのかな?」


 あかりが早口になって意見を求めてくる。わたしたちの答えは揃ってノーだった。


「いや。偶然にしては、なんかできすぎてる気がするぜ」

「わたしも」

「俺もそう思う。なあ、一樹。もしかして高橋さんって……」


 嶋くんは藤井を見て、言った。


「永久欠番の選手と関係がある日に、その選手の背番号が入ったメアドに変えてるんじゃないか?」


 場の空気が少し高揚したのが肌で感じられた。説得力のある仮説に、それだ! と言うように藤井は何度も頷く。


「そうだよ! おれが東京ドームで始めて高橋さんに会ったとき、今夜メアドを変える予定だって言ってた。あれ、王貞治と長嶋茂雄に関係のある日だから、その日にメアドを変えるって決めてたんだ!」

「藤井君、その日って、何月何日だった?」


 あかりが訊くと、藤井は机の上に置いてあるケータイに手を伸ばし、素早く日付を調べた。


「六月二五日だ」


 あかりはケータイに向き直り、一分足らずで顔を上げた。いつもより早口で興奮気味に、わたしたちに話す。


「六月二五日は、王貞治と長嶋茂雄が初めてアベックホームラン――いわゆる『ON弾』を打った日だって!」

「それじゃあ、一月十八日は川上哲治に関係あるか? この日にメアド②に変えてあるんだけど」


 あかりはまたケータイに視線を落とすと、しばらくしてから、満面の笑みで顔をあげた。


「その日は、川上哲治の背番号が永久欠番に認定された日だって。嶋くんの考えたとおりだよ。高橋さんは、メアドに入る選手と関係のある日に、メアドを変えてるんだ!」

「つーことは、新しいメアドに入るのは、黒沢俊夫と沢村栄治の背番号――『4_14』ってことか?」

「うん! それで間違いないと思う」


 あかりが力強く親指を立てる。わたしたちは顔を見合わせて笑った。


 まずは、第一関門突破だ。





 後ろに入る数字は『4_14』。それは確定した。だけど、本当に難しいのはこれからだ。


 わたしたちは、メアド①とメアド②の顔文字と数字に挟まれたところに注目していた。メアド①は『bonsaikyo』、メアド②は『vdnk_golden』。さあ、これはどういう意味だろう? 比較的楽に共通点や意味を見出せる前半と後半に比べて、こっちは正直なんの見当もつかない。


「メアド①は普通に読むと『ボンサイキョウ』になるけど、いったいどういう意味なのかしら? 高橋さんに盆栽の趣味があるとか?」

「いや、そんな話は聞いたことねえし、仮にそうだとしても、そのあとの『キョウ』の意味がわかんねえよ」

「メアド②は、後ろの『golden』はいいとして、『vdnk』がわかんないね」

「なにかの略なんだろうけど、ぱっと思いつくものがないんだよな。あまり聞いたことのない並びだし」


 はあー、と四人でため息をついてしまう。厳しい道のりだ。

 藤井は不満そうに下唇を突き出し、メアドの書かれた紙を見る。


「一瞬だけ見た高橋さんの新しいメアドは、この真ん中部分に『rst_e』って入ってたんだけどなあ」

「真ん中部分の中でも、絵文字寄りか数字寄り、どっちだったか思いだせるか?」


 考えるように腕を組み、目を閉じる。


「どっちだったっけなあ……。ただ、絵文字のすぐ後ろでも、数字のすぐ前でもなかったぜ。これは絶対だ」


 絵文字の直後でも、数字の直前でもないところに『rst_e』。区切りをするように小さい線が入ってるから、『rst』と『e』はべつの言葉なんだろうけど……。

 四人とも、しばらく無言で頭を悩ませる。誰もなにも思い浮かばず、沈黙が何十秒か続いたあと、嶋くんがぱしんと手を打った。


「とにかくいまは、昔のメアドからひとつひとつ考えていこう。メアド①の『bonsaikyo』は、川口の言うとおり、そのまま読むと『ボンサイキョウ』になるけど……」


 言いながら、余白部分に『ボンサイキョウ』と書く。


「これ、どこで区切ればいいのかな? ユズが言ってたみたいに『ボンサイ・キョウ』なのか、『ボン・サイキョウ』なのか、いまいち微妙だよね」

「でもなあ。『ボンサイ・キョウ』でも、『ボン・サイキョウ』でも、意味がわかんねえよ。「ボンサイ」っつっても、鉢に木ぃ植える「盆栽」なのか、平凡な才能って書いて「凡才」なのか」


 『ボン・サイキョウ』でも、「ボン」がなんのことかわかんねえし、と続ける。

 わたしも自分なりに考えてみたけど、藤井の言うとおり、どこで区切ってもいまいちしっくりこないのだ。『ボンサ・イキョウ』とか『ボンサイキ・ョウ』でも区切れるかもしれないと思ったけど、逆に混乱してしまった。


「こういう風にどこで区切るかわからないときって、普通、わかりやすいように途中でピリオドとかを入れないかしら?」

「あ、そうだね。私はそうするかも。嶋くんたちは?」


 あかりの問いに、嶋くんは少し笑って答えた。


「俺は、あんまりそういうのわからないんだ。メアドにもこだわりとかないし」


 ああ、そういえば嶋くんのメアド、どう見ても初期設定のままだもんね。とりあえずローマ字と数字がずらっと並べられてるだけの。


「おれはあんま気にしねーかな」


 藤井が軽い口調で答えた。


「メアドって、自分の自己満で決めるみたいなとこあるから。友達とかに意味通じなくても、自分さえわかればいーや、みたいな」


 そっか。そういう考えもあるのか。確かに藤井は、我が道突き進むみたいなところがある。たぶん高橋さんも同じ考えで、だからわたしたちはこんなに頭を悩ませているのだ。

 わかりきったことを再確認するような流れになってしまって、けっきょく話は進まなかった。他になにかあるかと考えていると、嶋くんが顎に手を当てながら言った。


「この真ん中部分も、なにか野球に絡めてあるとは思うんだ。例えば、後ろの永久欠番の選手と関係があるとか」

「それって、メアド①では王貞治と長嶋茂雄ってことか?」

「そう」


 『ボンサイキョウ』が、王貞治と長嶋茂雄に関係がある? ……あ、もしかして!


「野球界を引退して、二人とも盆栽に目覚めたんじゃない?」

「ないない」


 うわ、三人一斉に首振ったよ。あかりと藤井はいいけど、嶋くんにまではっきり否定されてちょっとショック。


「嶋君、この言葉がどう関わってくるの?」


 あかりに問われ、嶋くんは、それはわからない、と言うように首を振った。そのあとで、メール②を指差す。


「ただ、これはわかる気がしないか? 川上哲治に、『golden』」


 あかりと藤井が、あ! と驚き、ほんとだ、そういうことか、と口々に感嘆の声をあげる。本日二度目の、わたしだけわからない現象の発生である。まあべつにいいんですけどねー。


「あ、ごめん。ユズは川上哲治知らないよね?」


 あかりがいまさら、気遣うように言葉をかけてきた。


「うん。ぜんぜん知らない」

「でもけっこう有名だよ。聞いたことないかな? ほら、ナントカの神様って言われてたって」


 ナントカの神様? そういえば最近、テレビで聞いたことあるな。……そうだ、あれは確か!


「トイレの神様だ!」


 あかりと藤井、嶋くんまでもが、一斉に噴きだした。藤井なんか、ひーひー言いながら机をバンバン叩いている。


「そんなに笑わないでよ……」


 なんか、周りの人からもちらちら視線を感じる。こんな形で注目されるのは屈辱だ。

 あかりが必死に笑いを抑えながら謝ってくる。


「ご、ごめん、ユズ。怒らないで。川上哲治の異名は「打撃の神様」だよ。その名の通り一流のバッターだったんだけど、監督としてもすごく優秀な人で、巨人の九年連続日本一のときは川上哲治が監督だったんだよ。そのV九時代、つまり巨人の黄金時代を築いた人だから『golden』なんだろうって」

「あ、そっか。そういうことなのね」

「そうだよ。べっぴんさんになりたくてトイレをぴかぴかにしてる人じゃねーから」


 それは植村花菜だろうが。


「もうその話はいいじゃない。とりあえず、メアドの真ん中も野球に関係のある言葉が来るってことで良いのかな?」

「他の意味がわからない以上、はっきりとは断定できないけど。とりあえず、そう考えておこう」


 嶋くん、まだ言葉の節々が笑ってる。わたしは自分の顔が急激に熱を持っていくのがわかった。他の二人ならまだしも、好きな人にこんなに笑われるなんて。

 嶋くんは笑いを振り払うように、おほん、と咳払いをして、


「それから、いま気づいたんだけど、このメアド、どっちも二二文字なんだよ。これもなにかあるかもしれないな」

「二二文字か……」


 藤井がわたしに視線を向け、尋ねる。


「な、川口。メアドの規定文字数って、何文字だっけか」


 表情は半笑い。……こいつ、また珍回答を期待してるな。

 わたしはイラつきを抑えて、平坦な声で答えた。


「ケータイの機種とか、会社によって違うんじゃないかしら。それがどうかしたの?」

「たぶんだけど高橋さん、メアドは規定文字数いっぱいに設定すると思うんだよな。あるものはぜんぶ使わないと気がすまないっつってたし」


 すかさず、私もだよ、とあかりが手をあげる。


「もったいないような気がするんだよね、文字数に余裕があると」


 そうなんだ。わたしはぜんぜんそんなことないけど、あんがい、あかりみたいな人は多いのかもしれない。藤井も頷き、


「高橋さんもそうだと思う」


 高橋さんのメアドは二二文字。そのうち、九文字は『luv-g^_^.』で、五文字は『rst_e』で、四文字は『4_14』で潰れる。つまり、


「新しいメアドを完成させるには、あと、四文字いれればいいということね」

「そういうことになるな」


 嶋くんはメアド②の下に、


 メアド③『luv-g^_^.○○○○○○○○4_14』


 と書いた。


「丸一つで小文字一つだ。で、一樹。『rst_e』はどの辺りにあった?」

「だいたい、この辺りだったかな」


 言いながら、藤井がメアド③になにか書き加える。


 メアド③『luv-g^_^.○【○○○○○○○】○4_14』


 すみつきカッコの中のどこかに、『rst_e』が入るということだろう。

 あかりが笑顔で言う。


「なんか、こうして書くとわかりやすいね。頑張ればできそうな気がするよ」


 あかりの言うとおりだ。高橋さんの新しいメアドを推理するなんて無謀だと思ったけど、こうしてきちんと整理されれば、不思議とできそうな気がしてくる。わたしはもう一度、並べられたメアドを見直した。


 メアド①『luv-g^_^.bonsaikyo1_3_』

 メアド②『luv-g^_^.vdnk_golden16』

 メアド③『luv-g^_^.○○【○○○○○】○○4_14』


 あとはみんなで知恵を出しあって、この丸を埋めていくだけだ。

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