婚約破棄から始まる愛国令嬢の狂気お手紙【短編シリーズ】
初投稿のため諸々ご指摘いただけると幸いです。
ルフ様が当家を訪問なさるなど初めてのこと、はて、いったいなにが?
「婚約を破棄する。」
息が止まる。
気まずそうに目を逸らしながら破棄を告げる、ダメだそれはいけない。
ルフ様がわたくしなどに目をそらすなど、武威を損ねる。
あってはならないことだ。
ルフ様は寡黙で傍若無人、王の前でも膝をつくことはない。
愛国者たるわたくしとしてはこれは否である。
しかしながら12歳の初陣から22歳までのあらゆる戦場を制した武神であり、国益に適う存在である。
わたくしはそう見ている。
「貴方様とともあろうお方が、わたくしなどに目を逸らすなどあってはなりませぬ。」
愛国者たる父からは侯爵家の野心、ルフ様の武が危険だからわたくしを嫁がせ、引き寄せる政略だと告げられる。
貴族子女たるわたくしには政略結婚など当然の話だ。
恋愛ごっこにうつつを抜かす同年代の令嬢がたちが理解できない。
わたくしは貴族子女として、唯一の特技である舞を極めた。
国王陛下の御前で舞った際には天上の舞とまでお褒めいただけた。
ゆえに、わたくしはルフ様と初めてお会いした時に犬馬の労を厭わぬことをお誓い申し上げた。
そうか、お前は犬なのか、そうルフ様は興味なさげにおっしゃった。
ルフ様は存在が国益なのだから尽くすのは当然なのだ。
ルフ様は兵を率いたりはしない。
兵が必死に彼を追うのだと。
お役に立ちたいと兵書を学びつくしてきた。
父に沢山の兵書を取り寄せてもらいもしたし、
引退した元将軍閣下に教えを教えを乞うたりもした。
甘いささやきなど皆無である。
政略結婚なのだ。
当然のことだ。
婚約者として言葉を交わすことは少ない。
名を呼ばれたことすらない。
ルフ様を訪ねても言葉を交わす事もなく
修練を見ているだけである。
しかしわたくしはそれで満足なのです。
ルフ様の武技は美しいのだ。
完成している。
このわたくしがただ一つ人より秀でたる舞踊に見立てると
連撃を振るうお姿は美しい舞そのものである。
戦場であってもおそらくルフ様は舞うように矛を振うのだろう。
わたくしはそれに合わせて無意識に舞ってしまう事もある。
おかしな女だと思われてるかもしれないが。
ルフ様は何も言わない。
ただルフ様の愛馬たる大きな子が優しい顔でわたくしの舞を見ていてくれるのですよ。
わたくしの容姿など並みだ。
気の利いたお話もできやしない。
ルフ様がそういった女性がお好みであれば、傍においておかれてもよいと思うのです。
だから、どうか。
「どうか理由を伺いたく。」
「親父が隣国と組んで反乱を起こす。王党派のお前の家とはこれまでということだ。」
巻き込まれたくないだろう。
そう、いいたいのでしょうか。
侮らないでいただきたいのです。
わたくしはこの国を愛している。
――貴族たる我らは国のために死ぬべきだと教えられた。
その通りだ、全くもって正しい。
――我らは王国の藩屏、王国が滅んで生きてる道理がない。
法衣貴族たる父の教えは全くもって正しい
隣国は、王子と公爵令嬢の婚約破棄騒動で揺れている国だ。
くだんの王子が失態挽回に武功を急いだのか。
侯爵閣下が与しやすしと見たのか。
くだらない騒動と思っていたが今のわたくしを鑑みるとまったくもって笑えない。
隣国を引き入れて侯爵が敵になるだけでも王国にとっては致命的だ。
ルフ様がその先陣を切ったら完全に詰む。
父は王党派で死ぬまで戦って死ぬでしょう。
そして御国は滅びるのでしょう。
どうすれば、何をすれば御国を守れるのでしょう
このわたくしに何ができるでしょう。
考えるのだ。
何か。
何かないだろうか。
これは。
これはいけるでしょうか?
いや難しいのでは。
わたしくではこの一計以外思いつきませぬ。
時間にして3秒、私は止まっていたのでしょうか。
「隣国と通じようとする義父をルフ様が裏切るのです。」
「この俺に親父を討てと?」
「いいえ、侯爵閣下を討つわけではございませぬ。」
「なんだと?」
怪訝な顔をなされる。
そうであろう、だがここで止まるわけにはいかない。
私は一気にまくしたてる。
はしたなかっただろうか。
予定通り侯爵閣下には隣国軍を引き入れていただき、
貴方様と当家の兵で隣国軍を殲滅すれば、侯爵閣下はこちら陣営として
参戦する以外の選択肢がございませぬ。
動かなければ隣国を引き入れた大罪人との事実だけが残ってしまいまする。
理にさとい侯爵閣下にそれがわからぬとは思えませぬ。
されば反逆者の汚名を着ることなく敵を引き入れうち滅ぼし、大功を挙げた名将と讃えられましょう。
いかがです!?
一息にわたくしの拙い計を語りきる。
部屋にある鏡をみると、息を荒くし血走った目をしている狂女がわたくしだった。
だがわたくしはもう踏み出したのだ。
止まる選択肢などありはしない。
戦うのだ。
「面白い...乗ってやる。俺は見誤ったぞ。躾のいい犬かと思っていたが、貴様は狂犬の類であったか」
胸の内で、そっと呟く。
はい、わたくしは狂っているのかもしれませぬ。
しかし、それが国益にかなうのであれば、
それは正しいことなのだと思うのです。
【侯爵閣下へのお手紙】
急啓、侯爵閣下におかれましてはご壮健の段、まずはお慶び申し上げます。
お忙しいところ、文を伝令兵がお届けする無礼をお許しください。
ルフ様より、侯爵閣下の隣国を誘い込み討ち果たす深慮遠謀を伺い、
わたくしも不肖ながら助太刀せねばと、当家手勢を馳せ参じさせました次第にございます。
このお手紙が届くころには、
すでにルフ様と当家による隣国軍への挟撃が始まっているかと存じます。
どうか、侯爵閣下ご本陣のご出馬あられますよう、
勝敗を決していただきたく、伏してお願い申し上げます。
勝利の暁には侯爵閣下は王国史の名将と刻まれましょう。
心よりお喜び申し上げます。
追伸
隣国軍殲滅の折には、敵国領へ攻め寄せる際、
侯爵閣下のお名を高らかに掲げること、
何卒お許しくださいませ。
かしこ
愛国心が芽生えたら、評価とブクマをいただけると作者の国防力が上がります。
シリーズ続編も順次投稿いたしますのでよろしくお願いいたします。
6/29 18:00 シリーズ短編2話はルフ視点前日譚投稿しました
少々シリアス寄りになるかと存じますが、何卒ご容赦くださいませ。
病弱な幼馴染を優先を私の解釈で書いてみたりしたいなと
かしこ




