呼び名
他に人が居そうな場所が見えてきたので名前を決めます。
森を抜けた先には湿原が広がっていた。湿地になっているからこそ森がそこで終わっているのかもしれないが、とにかく見晴らしの良い場所だ。そして湿地の中にぽつぽつと小高い丘があり、集落があるのが見える。恐らくその周りは畑か何かになっているらしい。そして少し遠くに一つの城がある。川と湿地は天然の要害、防衛のしやすい場所なのだろう。
ただ神様は、
「この辺りにも村が出来ているとはね、川の氾濫に湿気もすごいだろうに」
と言っていた。確かにそうかもしれない。
「この辺り、昔は人は住んでなかったんですか」
「あの城は、もっと小さかったけどまあ、あったかな。川の流れがあの辺りにあって、橋もあった気がするけどまあ、ずいぶん経ったし」
そんな事を話しながら暫く歩いて道が両脇を畑に挟まれるようになった頃。
「そろそろ人間と会うかもしれないね。お互いどう呼ぶか決めとこっか」
と神様は言った。
「さすがに神様と呼ぶ訳にはいきませんしね」
「何それ、そんな呼び方されてたの」
呼び方に驚かれたが、確かに今まで二人だけだったのでわざわざ声に出して神様と呼んだ事はなかったかもしれない。
「どうしようかな。主人、いや主様とか、うーん」
「なんですかその言葉えら……」
その時、笛の音がしたので話を中断し辺りを見回すと、先の方で何人かが畑から道に出てくるのが見えた。そしてそのまま向こうの方へ走って行く。
「魔物がこっちに来ているらしいね」
と神様は言うと、
「アルジーヌって呼んでね、それから君はジュークで。いくよ」
そう言って名前に突っ込む隙を与えず道の先へ走り出したので、慌てて後を追った。




