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【07 上手くいくことと、上手くいかないこと】

・【07 上手くいくことと、上手くいかないこと】


 私たちの即興短文は良い具合に回り出したものの、教室のギスギスは止まらない。

 言い換えればギスギスが回りまくっている。ギスギスのくるくる狂い咲きだ。この”くるくる”は決して私のハンドルネームではない。

 昼休みすぐに星見が教室から出て行ったところで、また始まった。星見はまた委員会かな? 保健委員会そんなやることばっかあるぅ?

 スクールカースト上位女子たちは視線を感じるとすぐさま、

「見てんじゃねぇよ」

 と声をあげて、そう言われれば当然男子たちも、

「見てねぇよ」

「パンチラ狙ってただろ」

「ブスのパンチラ狙うはずねぇだろ」

「川辺ごときで興奮してたくせにさ」

「知らねぇよ」

 何かもうガンのつけ合いで気分が悪い。空気は最悪。

 弥助もボケれる雰囲気じゃないらしく、何だか憂鬱そうに俯くだけ。

「見てんじゃねぇよ」

 またスクールカースト上位女子たちがそう言った。

 もう辞めろよ、それ不毛だろ、何にもなんないだろ。

「見てねぇ言ってんだろ!」

 と言って教卓を蹴った男子。

 いやいやモノに当たるとかマジでダサい。もう高校生だろ、いい加減に辞めてほしい。

「ダセェ」

「こっちの台詞だろうが!」

「キモイんだよ」

「テメェらのほうだろ!」

 もう正直、女子が喋ってんのか、男子が喋ってんのか分からないくらいのだみ声喧嘩。

 というかどっちも同じようなことしか喋っていないので、マジで一緒だ。

 とはいえ、救いというかもう二度と救いは無いんだけども、このギスギスが”川辺ちゃんが不登校になったことについて”から起因しているということはある意味の救いだ。

 両陣営共に、川辺ちゃんを不登校にするまで追い詰める気は無かったということの現れだから。

 だからこそ罪を擦り付け合っているというわけだ。ちゃんと罪に感じていることはまあ救いだろう。いやまあ川辺ちゃんも教室も全然救われないけども。

 すると星見が教室に戻ってきて、どうやらお手洗いだったらしい。普通に席に着いた。

 ここは星見を連れて外でお弁当を、でももう十二月で寒いしな、とか思っていると、またスクールカースト上位女子たちが、

「マジ男子キモイ! 変態だから死ねよ!」

 とさすがに”死ね”はヤバイだろと思ったその時だった。

「死ねとはなんだ。そういう言葉は良くないだろ」

 と挙手しながら立ち上がった星見。

 するとスクールカースト上位女子たちが、

「うるせぇ! 変人! 黙れよ!」

 でも星見は一切動じず、

「変人と呼ばれていることは知っている。黙る必要は今のところ無いかな。授業中でも無いし」

 と言うと、今度は男子たちのほうが、

「さすが星見! 最高! ヤラせてくれよ!」

 と、なんという下品な言葉を星見に掛けやがって最悪だ。

 というか星見は男子側をかばったはずなのに、男子側がそんなこと言ったらダメだろ。

 スクールカースト上位女子たちはクスクス笑いながら、

「あっ、そっちとデキてるってわけかぁ、この場でするのぉ?」

 とか言い出して、いやそんなはずないだろ、何なんだよ。

 男子は男子で、

「もうこの場で始めようぜ! なぁ! ハハハ!」

 とか口走って、マジで最悪。

 というかなんというか、川辺ちゃんがいなくなったから、新しいターゲットとして星見を選んだということ?

 何そのスクールカースト上位女子たちと男子たちの憂さ晴らし連携。そういうのはすぐに通じ合うって似た者同士過ぎる。

 星見は小首を傾げながら、

「始めるって何をだ?」

 と言うと、スクールカースト上位女子たちがヘラヘラしながら、

「川辺の次は星見とセックスするんだぁ」

 と言って自分たちで吹き出していた。

 男子たちもそれに乗っかるように、

「よっしゃ! 星見! セックスしようぜ!」

 ……何か、全員やぶれかぶれというか、もうどうなってもいいみたいな無鉄砲さを感じさせる。

 もう過激なことを言ったほうが勝ちみたいな、訳の分からない勝負になっている。

 私は他力本願ながら弥助のほうを見ると、弥助は黙って注視しているようだった。

 でも私と同じ気持ちだと思う。

 きっと星見が自分でなんとかする。星見はそういう人間だから、下手に邪魔しないほうがいいのだろう。

 星見は溜息交じりに、

「セックスというものはもっと親しい人間とするべきことだ。私は君のことを一切知らない。ただ同級生なだけだ」

 男子たちは負けじと、といった感じで、

「いや! 誰とでもしていいんだぞ! セックスは!」

「同意の上ならな。そもそもこんな白日のもとで交渉するものではない。私はセックスをする気は無い」

 スクールカースト上位女子たちがニヤニヤしながら、

「セックスって言ったぁ」

 と突くような声でそう言った。オマエたちもさっき言っただろ。

 星見は毅然とした態度で、

「ハッキリ言って辞めてほしい。不快だからだ。それは男子側にも女子側にも言いたい」

 と男子たちのほうと、スクールカースト上位女子たちのほうを見た。

 スクールカースト上位女子たちは目線を外し、男子たちのほうはまだ負けていないといった感じで、

「いいじゃん! セックスしようぜ! 絶対気持ち良くするからさぁ!」

「この時点で気持ち悪いのだが?」

 という冷たい言葉に怯んだ男子たちは、負け惜しみのように叫んだ。

「オマエが何もしないから川辺は不登校になったんだぞ!」

 な、急に何を言っているんだ。

 すると星見が頭上に疑問符を浮かべながら、

「川辺さんは病欠なはずだが?」

「ほらバカだ! 分かってねぇ! 川辺は病気じゃなくて自ら不登校になったんだよ!」

「いや先生が病欠と言ったはずでは?」

「嘘に決まってんだろ! そんなことも分かんねぇ鈍感とセックスしてもしょうがねぇわ! この不感症!」

 男子たちのリーダーが”いくぞ”と手を振ると、そのまま教室から出て行った。

 呆然と立ち尽くしている星見にスクールカースト上位女子たちが吐き捨てるように、

「星見のせいだぁ」

 と言ってから、スクールカースト上位女子たちもいなくなった。

 固まっていた星見は徐々にガクガクと震えだして、

「アタシの、せいなのか……」

 と言い出したので、ここはさすがに口を挟まないといけないと思って、

「そんなはずないじゃん! 星見! 星見のせいじゃなくてイジメていた今いなくなった連中のせいだよ!」

「そ、そうなのか……」

 星見の瞳には涙が浮かんでいた。

 すると弥助が、

「そうだよ! 星見のせいじゃないに決まってるじゃん! 星見に押し付けてるだけだよ!」

 と声をあげると、弥助のグループの男子たちが、

「星見のせいのはずないじゃん」

「全然星見関係無い」

「星見、口挟んだほうが良かったか? すまなかった、星見の対応を待ってしまった」

 と口々に言い始めて、周りの控えめな女子たちもうんうんと頷いていた。

 でも星見は、

「でもアタシのせいなのかもしれない、こうやって何もせず、何も分からず生きていたアタシのせいなのかもしれない」

 その言葉は正直その他大勢と化している私たちにも刺さった。

 弥助もつらそうに俯き、弥助のグループの男子たちも「そ、そっか」とか「おれも、なんだよな、きっと」と言い、控えめな女子たちも口をつぐんだ。

 一体どうすれば正解だったのか。もっと激しく川辺ちゃんのことをかばうことが正解だったんだろうな。

 でももうそれは全て過ぎてしまったこと。

 私たちにできることなんて、と思ったその時だった。星見が口を開いた。

「悪口合戦をしよう」

 弥助が矢継ぎ早に、

「どういうことだよ」

 星見は淡々と、

「悪口合戦を開催して、思い切り揉め合おう」

 さすがに私も、

「何言ってんの? 星見」

「確かに説明が足らなかった。男子陣と女子陣に分かれて悪口を言いまくろう。でもそれは傍から見たら滑稽だと思う。だから個人的なクラスの喧嘩を見世物にして、お笑いに昇華させてしまおう」

 私はおそるおそる、

「そんなこと、どうするの?」

「弥助が男子側の総大将、玖瑠実が女子側の総大将になって、悪口っぽいネタを即興短文のフォーマットで書いて、最初はマジっぽく書いて、後半ギャグっぽくして滑稽にしていこう」

 弥助が神妙な面持ちで、

「つまり星見の生配信に全員参加させて、俺と志田が代弁者のフリしてネタにするということか」

 弥助の周りにいた男子たちが「どういうこと?」と聞いてきたので、まずは一から即興短文やネット長文の説明をした。

 一応言っていることは理解できたっぽいけども、弥助の周りの男子の一人が、

「そんなこと、上手くいくのか?」

 と言えば、星見が、

「どうせ何もしなくても最低だ。何かやってみてもいいんじゃないか? だからここにいるみんなにはあえて男子・女子に分かれて喧嘩していてほしい。その流れでアタシがアイツらに説明する。とにかく喧嘩の生配信を見てほしい、と」

 弥助がふと、

「乗ってくるか? 教室に戻ってきたら俺と志田が喧嘩しているってことだろ? 今まで参加していなかった俺と志田だぞ?」

 すると弥助の周りにいた男子の一人が、

「でも激しく罵り合っていたら乗ってくると思う。おれたちも囃し立てるし。とにかく喧嘩したくてしょうがないという空気ではあるから、そこの違和感には気付かず、思考停止で突っ込んでくる可能性はある」

 それに関して言えば、

「私もそこは賛成かな。賛成というか賛同ね。帰ってきて男子と女子で別れて喧嘩していたら、気持ちがヒートアップして乗ってくると思う」

 星見もうんと頷いて、

「アタシもそう思っているわけだが」

 すると弥助が、

「じゃあ川辺と友達だったのに何もしなかった志田が悪いっていう感じで男子側は怒鳴っていればいいかな?」

 実際は友達というわけじゃないけども、でもまあ親しく会話していたし、そもそもこっちの控えめの女子たちは川辺ちゃんと同じグループだったし。

 私は、

「男子側はこっちを攻めやすいかもだけども、こっち側が男子をどう攻めればいいかな?」

 弥助が間髪入れずに、

「そりゃ何もしなかっただろって感じでいいんじゃないか。男なんだから仲裁できただろ、みたいな感じで」

 星見がまとめるように、

「ではやるならすぐだ。喧嘩を始めてほしい。いつ戻ってくるか分かんないからな。生配信のURLを作って、クラスLINEに流す」

 というわけで弥助の、

「テメェら友達が助けてやらねぇといけなかったんじゃねぇのか!」

 という怒号を皮切りに、そこからずっと私たちは罵り合い始めた。

 正直言われていることがクリティカルな一面もあるので、キツいけども、もうやり続けるしかない。

 最初に戻ってきたのはスクールカースト上位女子たちだった。

 面喰ったみたいな顔をしていたけども、状況を把握してからは、弥助たちを一緒に攻め始めた。ちゃんと乗っかってきた。

「川辺とのセックス動画共有とかしてたんじゃねぇの! 男子全員はさぁ!」

 とか、こっちが思いつかないような罵倒も入れ込み、かなり白熱している。

 男子たちも戻ってきて、すぐに状況を理解したようで、女子のほうへ怒号を飛ばす。

「そもそも始めたのテメェらだろ! テメェらが追い詰めたんだろ!」

 すると星見がデカい声をあげた。

「この言い合い! 弥助を男子の総大将に、玖瑠実を女子の総大将にして、喧嘩生配信を今日の夜にしよう! 司会はアタシがする!」

 弥助はそれに乗っかるように、

「おぅ! やってやんよ!」

 私も合わせなきゃと思って、

「男子なんてクソだから受けて立つわ!」

 めっちゃ盛り上がってきている。

 何で弥助と志田(私)なんだろう? という疑問は多分あるはあるだろうけども、雰囲気に飲まれているって感じだ。

 最初からサクラをやってくれている、弥助の友達勢と控えめな女子勢がずっと弥助と私を鼓舞するため、もう流れが出来上がっている。

 星見と弥助と私だけでは絶対こうなっていないと思う。サクラのみんながいるからこそ、盛り上がっている。

 数的には私たちとサクラ勢のほうが多いので、もう勢いに乗せれている。

「女子なんてカスなんだよ!」

 と弥助が言えば、

「男子はクズじゃん!」

 と私が叫ぶ。

 それに呼応して怒鳴り声をあげるサクラ勢がいれば、それぞれ五人程度しかいないスクールカースト上位女子たちと男子側は合わせるしかないわけで。

 自分たちの世界だけで空気を読んできた連中の弊害というか、空気を読まないとという脳が多分動いてしまっているんだと思う。

 多分家に戻った時に、何で弥助と志田(私)なんだ? と思うかもだけども、また星見が実況をする生配信に来て、騒ぐコメント欄を見たらきっとまた心が勝手にヒートアップすると思う。

 星見も音読は上手い。コメント欄を煽るように読めば、きっとまた激しくなると思う。クラスのLINEグループを軽く見ると、星見が、

《アカウント持っていなかったらLINEでも勿論OK、生配信中はメッセージ送ってくれ》

 と書いていて周到だった。

 昼休みはそんな感じで終わり、五限目と六限目の中休みになったら、弥助が思い切り私の机を蹴ってきて、それに対して私は怒髪天のように立ち上がり、

「カスめ!」

 と言えば、また弥助の周りの男子たちが、

「テメェが何もしなかったからだろ!」

 と言えば、控えめな女子たちが、

「そっちがやり過ぎたんだろ!」

 と食って掛かって、私と弥助でガンのつけ合い。

 それにスクールカースト上位女子たちとあの男子側が息を飲むみたいな感じ。

 完全に喧嘩がこっちのモノになっているようだった。逆にアイツらが傍観者みたいになってる。

 熱量がカンストしているみたいな。まあ当たり前だ。こっちは演技なんだから、いくらでも過剰にできる。

 私は弥助を睨みながら、

「マジ、テメェらの悪行、ネットに晒すからな」

「こっちの台詞だわ、カス女」

 と言い合って、その場は収まった。

 授業中、何で好きな……じゃなくて、友達の弥助にこんなこと言わないといけないんだろうと思えてきた。いやいやマジで好きな、じゃなくて。弥助は友達として好きなだけだし。別にそれ以上の好意とかないし。でも何か、マジで弥助に嫌われていたら……いやいやそんな、バカなこと考えても仕方ない。でも弥助がすごく状況に感化されやすいヤツだったら。いやそもそも好きじゃないし。全然好きじゃないし。目が合った時ドキドキとかしてないし。ちょっとだけだったし。ちょっとだけでもダメじゃないか? いいや悪口言い合って怖くてドキドキしていたとかだし。好きで心臓が高鳴ったわけじゃないし。あぁ、もう、何この作戦。星見マジでちゃんと上手くいくんだろうな。というか笑いに昇華するって、結局私たちの腕次第じゃない?

 そうだ!

 笑いに昇華するって結局こっちの腕次第じゃん!

 星見が実況で上手くやってくれるんだろうな! マジで!

 ネタ書くの私(と弥助)ってことじゃん! しかもネット長文というか即興短文を始めて見る連中にウケないといけないだとっ? めっちゃハードル高くないかっ?

 脚本形式とか受け入れられるものなのかっ? ここは星見の朗読力に任す部分も込めて、ちゃんと会話っぽいネタを書いたほうがいいよな。

 というか悪口を笑いにするってどうすればいいんだ? いやもうなるようにしかならないのか? あぁもう! これってさぁ! 結局ぅ!

 私だけが表舞台に立ってるじゃん!

 星見が微妙に表舞台に立ってなくね? いや実況するけどもさ! 実況するんだけども、なんやかんやで私のほうが星見よりもフロントマンじゃねぇのかなぁ! 星見が生身で顔出してやってるだけで、フロントマンは私(と弥助)のほうじゃねぇのかなぁ! なんやかんやで私と弥助に全任せじゃん! 私は表舞台に立ちたかったわけじゃないんだよ! でも……でも……川辺ちゃんに何もできなかったという後ろめたさはあって。せめて男子と女子の喧嘩を滑稽なモノとして辞めさせて、川辺ちゃんが戻ってきやすい環境は作りたい。いやもう戻ってこないかもしれないけども、とにかくこの言い合いは辞めさせないといけない。言い合いを辞めさせるネタ? マジでどうするんだろう。

 そんなことを悶々と考えていたら六限目の授業は終わった。

 ホームルームも終わり、放課後になった瞬間、まだ担任が教室にいるのに弥助が、

「女子がカスだから帰るわ! 教室がクセェよ! マジで!」

 と怒鳴って、担任は何も聞こえなかったみたいな顔して足早にいなくなった。

 弥助の隣の席の控えめな女子が、

「テメェのほうがクサいだろ! 男はクサい!」

「女子もだろがぁ!」

 と言いながら、自分の席を蹴って、直しもせずにバッグを持って帰り出した弥助。

 控えめな女子も「キモっ」と小声で言いつつ、弥助の席を蹴って少し元に戻した。

 弥助は私の目の前を通り際に、

「志田! テメェ言ったよな! マジ覚えとけよ!」

 と言って教室から出て行ったので、私は後ろから、

「言った通りだろうがよ! 雑魚が!」

 と声を荒らげたけども、別に何も言っていない。雰囲気で喧嘩しているだけなので、特に別に何も言っていない。

 チラリとスクールカースト上位女子たちや男子側を見てみると、何か独特の高揚感を抱いているようで、マジで術中にハマっているようだった。

 私も荒々しく教室から出て、走って家に戻ってきて、即座に星見と弥助のグループLINEにメッセージを入れた。

《ゴメン弥助! 変なこといっぱい言っちゃって!》

《いや俺もだから というか星見 結局俺らのネタ次第ってことだろ 星見もネタ考えろよ》

 すると星見からもメッセージがきて、

《即興短文なんだから、即興じゃないとダメでしょ。》

 弥助が矢継ぎ早に、

《今回はそこどうでもいいだろ というか展開とか作るために長尺のネタに ネット長文にしたほうがいいんじゃないか?》

 星見がすぐに、

《二十五行にはするべきだと思う。向こうが読み慣れていないからだ。短いほうがいい。二十五行を二本ずつやるイメージで。》

 私は二十五行のほうはまあいいとして、

《即興にこだわる必要は無いんじゃないの?》

《だからって今から作って、即興性が薄かったらテンションも薄まらないか? 書かれたコメントもネタに拾いながら喧嘩ネタを書いたほうが盛り上がるぞ?》

 私は(多分弥助も)手が止まった。

 確かにその通りだ。書かれたコメントをネタに組み込んだほうが絶対ウケる。

 すると星見が連投で、

《玖瑠実はツッコミが面白いから、絶対にコメントに対応できると思う。弥助も即興短文の経験がたくさんある、できるはずだ。アタシのような自分のペースに引き込むことでしかネタの書けない人間は向いていない。ただし音読は任せてほしい。声を変える練習もした。四役まではできる。そこは信頼してほしい。》

 そんな信頼されたらさぁ、

《もうやるしかないじゃん》

 と私が返信すると、弥助も、

《だな》

 という言葉を送ってきた。

 つまりはもうやるしかないということだ。とはいえ方向性はやっぱりほしい。

《どういう流れで滑稽にすればいいの?》

 ちょっとした間があってから、星見から返信がきた。

《玖瑠実はツッコミで面白くする方向で。男子側のコメントを茶化したり正論でぶった斬ってほしい。弥助の一人コントもツッコミ気味なので、コメントを受けつつも上手く展開してほしい。》

 弥助が溜息のスタンプからの、

《まあ確かに俺のネタもツッコミ側の一人コントばっかだからな あくまでツッコミで笑わせていくということか》

《今回はネタバレとか関係無く、全部朗読していくから。まあケースバイケースだが。》

 弥助がまた同じ溜息のスタンプを押してから、

《分かった そこは星見に任せるよ》

 私も、

《じゃあ本当即興勝負だね》

 と返信しておいた。

 午後七時くらいから、クラスのグループLINEが活発に動き出した。

 仕掛けたのは弥助の友達たちだった。

 悪口をいっぱい同時に書き込んできて、それにスクールカースト上位女子たちも反撃している。

 するとあの男子側も酷い罵倒を送ってきて、かなり盛り上がっているようだった。

 午後八時から生配信を始める。

 ついに勝負の時だ。

 ちなみにクラスのグループLINEにはもう川辺ちゃんはいない。退会されていた。

 だからこそグループLINEを悪口でいっぱいに埋められるわけだけども。埋められるわけだけども。


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