【01 星見奈子】
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・【01 星見奈子】
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「ハロウィンは大喜利に限るな」
出た、ドヤ顔で自分のやりたいことを真っ先に言いたがるこの感じ。
今回は何をする気なんだ。いや言っているから何をするかは分かるけども、正直全然分からない。
教室の喧騒は相変わらず恋だの愛だのうるさいが、星見の周りだけは変な磁場があって、意味無く隔離されているような気がする。
否、気がするのか、それとも単純に星見がクラスメイトから浮いているのかどうかはまだ定かではないことにしておこう。
ただまあ星見のおかげで割かし私も”変人の友達”って感じで、年相応のつまんない世界から免除してもらえている部分はあるので、私はこれからも星見を平和的利用していこうと思っている。
星見は黙ったままの私に何故か上機嫌そうな表情でうんうん頷き、
「説明してほしいのだろう」
「そりゃまあそうだけども。ハロウィンはテレビ観ながら、少し上の世代のバカを見るに限るでしょ」
「実はこの町内会で、ハロウィンにて仮装しながら大喜利をする大会があってな、それに出ようと思っているんだ」
「というかプラモデル界に打って出るのはどうなったの?」
「あれは頓挫した。爆散頓挫だった」
「そんな派手だったんだ」
星見は思いついたことを何でもやり、ダメだと思ったらすぐにやめて、また新しいことをしたがる。
今回は大喜利という気分だったんだなぁ、と思った。
まあ確かに最近、大喜利というお笑いが市民権を得ている感じはひしひしとしている。
大喜利が人気のユーチューブもあるし、私も結構見るほうではある。
なので、一人の観客として、
「いいんじゃない? 好きにやってみれば」
「うん、だからエントリーしてきた」
「で、何で仮装しながら大喜利なの? 意味あるの?」
と相槌のつもりで適当にそう言うと、星見はキメ顔で、
「さすが玖瑠実、さすくる」
「それ毎回言うけども、元々流行るとかそういう概念のあるモノじゃないからな」
「実は仮装に合ったキャラクターを自分に付与して、大喜利を行なわないといけないんだ」
「何それ、町内会のくせに高度だね」
コクリと頷いた星見。
ということは、
「サッカー選手の恰好をしていたら、オフサイドとかVARでボケないといけないということね」
「まさしくそういうことになるな、でも例を一気に二つ出すなんて目立ち過ぎ、イエローカード」
「私が選手なら目立っていいだろ、嫉妬する審判嫌だわ、バイシクルに全部レッド出すだろ、そんなヤツ」
「まあバイシクルは危ないしな」
「優しさからのレッドじゃないでしょ、目立つなの人でしょ、その審判」
星見は何だか品定め完了といった一息をついてから、
「やっぱりそうだ、玖瑠実も一緒に出よう」
私はゲッと思ってしまったと共に、やってしまったとも思った。
最近の星見は私にも何かをやらせたがるのだ。
しかもお笑い関係で、というのが私の見立て。ちょっと前は一瞬ハガキ職人になりかけたが、ハガキの値段が高過ぎで辞めたらしい。
まるで最終的に何かしらの目標があるかのように。
私はあくまで星見の傍観者として傍に寄り添いたいだけで、プレーヤーとなって縦横無尽に動きたいとは思わないのだ。
変人・星見の良き理解者的ポジションは死守したいが、タッグを組む気はさらさら無い、というか、私にプレーヤー適正が無い。
表舞台に立つことがとにかく嫌なのだ。そりゃ星見と比べたら、誰とでも会話できるほうだが、広く浅く、人畜無害の人間感というか。
そこで星見と隣に並んでしまったら、いよいよ怪物になって、まともな会話に参加できなくなってしまう。それだけは避けたかった、までで、0.01秒。
私は間髪入れずに、
「やるわけないじゃん! そんなの! 人前に出る能力無いし!」
と意味無く大笑いしながらそう言ってみると、星見は少し不満そうな顔をした。
でも私は次の矢を放つ。
「練習ならいくらでも付き合ってあげるけども、私が何かをするなんてありえないよ! 人前でさー!」
星見は曇った表情から少しだけ明るくなり、
「じゃ、じゃあ、今後はアタシの練習に付き合ってもらう」
「勿論だよ! それくらいならいくらでも!」
良かった、これは完全に声のデカさで乗り切ったと思っている。
ここぞという時はデカ声に限る。デカ声はアド。
星見に機微で気付いてもらうなんてことは無理だ。ある意味真面目に額面通り受け取ってしまうところがある。
だから言いたいことは全てハッキリ言って伝えるしかない。
まあ言えば意外と分かってくれるほうなので有難いけども。
星見は咀嚼するように頷いてから、
「じゃあ練習の話だけども、一体何をすればいい?」
「それは自分で考えてよ」
即座に塩対応してしまったが、実際にマジで分からないし。
大喜利の練習って何かする方法あるのかな?
星見はうんうん唸っているし、もう自分の世界に入ってしまったようなので、星見から離れて、自分の席に戻ることにした。
すると隣の席の子から、
「星見さん、何か悩んでいるみたいだけど大丈夫?」
「うん、全然。悩む時は悩ませておけばいいだけだから」
「ウケんね」
と薄い会話をいろんな人としながら、時間は経っていった。
放課後はバイトがあるので、素早く高校を脱出し、一旦家で着替えてからコンビニへ向かった。
コンビニは忙しさと暇の半々でほどよい心地だ。
このあたりはヤンキー校も無いので、治安が良く、威圧的なオジサンとかもいない。
むしろ声が小さくて何を言っているか分からない男性ばかりで、こっちが圧まみれにならないように注意しなければならない。
なんせ私は声が大きくなってしまう傾向があるので。
コンビニのバイトもそこそこに、家へ戻ってきて、お風呂入ってご飯食べて、宿題をこなして、動画見て、スマホ見て寝るだけの毎日。
だからこそ星見というエッセンスというかアクセントは悪くない。アイツは炒飯の紅しょうがだ。
紅しょうがと言うと最近めっちゃ面白いお笑い芸人さんもいるから、何かすごく良く言っている感じもしてしまうな。
でもまあノーマルの紅しょうがね、いやいや私にとっての星見だって、紅しょうがくらいすごいんだと思いつつ、その日はいつの間にか寝落ちしていた。
朝起きて、支度して登校すると教室にはもう星見がいても、しかも待ち構えているような感じでワクワクした。
私はバッグを自分の机に投げるように置き、星見のほうへ行くと、早速星見が得意げにこう言った。
「川柳や短歌のコンテストに投稿して、自分のセンスを磨くことにした」
「あー、短文系で言葉をまとめる技術を学ぶということ?」
「さすが玖瑠実、さすくる」
「まあその言い回しは端的過ぎて、言葉足りていないけども」
とはいえ、私は一個懸念点を感じていた。
それは、
「川柳とかのコンテストってさ、何かあまりにもセンスがオジサン過ぎるような気がするんだけども、大丈夫?」
「センスがオジサン?」
ピンときていないようだった。
じゃあここはちゃんと説明したほうがいいみたいだ。
「短歌はセンスがあるイメージあるけども、川柳って何かさ、駄洒落ばかりで仮装大喜利大会なんて若者が出そうな大喜利大会には合わないんじゃない?」
「そこ詳しく」
「というか投稿しているコンテストの過去の受賞作とか見てみなよ、そうすれば分かると思うよ」
「なるほど、過去の受賞作か」
そう言いながらスマホをイジリ出した星見に私はもう少し言う。
「なんというか川柳のコンテストって、オジサンがでへでへ言いながら下手に出るだけのヤツばっかりで、星見のような女子高生がやるようなもんじゃないと思うんだよね」
「このコンテストなんていいと思ったんだけどもな」
そう言って見せてきたのがお寿司の川柳コンテストだった。
お寿司ってまあ日本人が好きなモノだから、いろんな視点から単語が出せそうだなと思った。
私は指示するように、
「じゃあ過去の受賞作のページを見ようか」
「分かった」
とスマホの画面を私にも見せながらタップすると、いきなり”オジサン”が飛び込んできた。
『妻トロで 俺は高いと 吐露をする』
私はついデカい声で、
「オジサン過ぎる!」
と叫んでしまった。
星見はむしろ感心しているように、
「これは一本だな」
「全然一本じゃないよ! オジサン過ぎるんだって! これぇ!」
「玖瑠実の言う、オジサン過ぎるって何なんだ?」
「感性がでへでへ笑っているオジサン臭がすごいんだよ!」
「でも大賞だぞ?」
「これが大賞っ? 選考委員に問題があるよ!」
そう、こういうコンテストって結局選考委員次第なのだ。
実は私も一時期、こういった公募に応募していた時期があるから分かるんだけども、いろいろ良い作品は届いているんだろうけども、結局は選考委員が全てで。
たまにM-1とかでも、何でこんなネタが決勝にあがったんだ? という時があるけども、それはそのネタをした人が悪いのではなくて、選考委員が悪いのだ。
星見はピンときていないというような顔で、画面をスクロールし、
『透き通る 鯛に嫉妬よ 我が肌は……』
「今度はオバサン過ぎるなぁ!」
もうママタルトのひわちゃんくらいデカい声の大砲を放ってしまった。
対する星見は、
「短いセンテンスに入れ込んである、三点リーダ―を使って悲哀を表現できている」
「いや星見の細かい分析は悪くないよ! でも句がオバサン過ぎだってぇ!」
「オバサン過ぎて何が悪いんだ?」
「センスが無いんだって!」
「でも準大賞だぞ?」
「選考委員次第なんだって!」
私と星見の熱量が全然合っていない。
そうか、星見はこういう機微が分からないか。額面通り受け取るから、受賞しているから良い作品に違いないと思っている。
これは最初が重要だぞ、ということに気付いた。
もし星見が『コレが面白いということ』と認識してしまったら、星見の大喜利は一生コレが至高だ。
卵から出てきたひよこが最初に見たモノを親と認識するように、コレを親と認識してしまったら、駄洒落女子高生という、とんでもキメラの完成だ。
私はストップのポーズをしながら、
「一旦終了! 私がめっちゃ良いサイト見つけてあげるから、川柳や短歌は保留!」
「そうか、玖瑠実が探してきてくれるなら安心だ。でもできるだけ早くな。町内会のハロウィン仮装大喜利大会は今月の二十六日だ。あと二週間しかない」
「分かってる! すぐに探す!」
私は星見と軽くバイバイしてから、スマホで一気に探し始めた。
とりあえず大喜利で検索するしかない。
すると広大喜利というサイトと、大喜利休憩所というサイトが上位にヒットした。
調べてみると、広大喜利は吉本が運営するサイトで、大喜利休憩所というサイトは今、一番盛り上がっている個人サイトらしい。
ピックアップ回答を見てみると、両方とも良さげだし、何よりもその日のうちに結果が出るスピード感のあるサイトっぽいので、この二サイトをオススメしようと、思ったところでチャイムが鳴り、そこから授業&授業で、昼休みになったところで、星見にこの二サイトを教えた。
星見は嬉しそうに、
「さすが玖瑠実、さすくる。こんなに大喜利を楽しめる場所があるなんて、未来は安泰だな」
と既に感性がオジサンナイズされていてヤバイ。
ちゃんと若者のおもしろになってくれるといいんだけども。
星見は少し伺うように、
「というわけで早速やってみるから、その、なんだ、玖瑠実も一緒にやってみるか?」
「いややらないよ、でもあれだよ、星見の回答をあとから結果と照らし合わせて見てみる、感想戦なら放課後にやるよ」
「さすが玖瑠実! さすくる!」
その台詞、あんまデカい声で言わないでくれと思いつつ、私は星見とは離れて、クラスメイトの女子の輪に入って、一緒にご飯を食べ始めた。
このグループは比較的に穏やかで、音楽の趣味も合うので、会話が弾む。
ただふと思ったことではあるんだけども、この前まで一緒に食べていた子が一人で食べるようになっていた。
まああんま藪蛇なので、変なことには突かないようにはするけども、一体どうしたんだろうとは思った。
昼休みも終わって、授業&授業で放課後になったところで、星見のほうを見ると、うんうんと唸っていた。
明らかに上手くいっていない顔をしている。五連敗して『私の責任』と言っているサッカー監督のような雰囲気を醸し出している。ちょっと男梅にも似ている。
「どうしたの? シワは伸ばしたほうがいいんじゃないの?」
と私が話し掛けると、星見は安過ぎるシュークリームの皮のようなしわしわなツラで、
「おおぎり、むずかしい……」
と森の中にひっそりと佇むゴーレムのようなことを言った。
一応そのサイトを勧めたのは私なので、できるだけ明るい感じで、
「感想戦でもしよっか」
と近くの席に座ると、星見は深い溜息をついてから、
「アタシは渾身の出来だと思っている」
と言いながら、スマホをイジって、多分自分の結果を見れるページを出して、こちらに見せてきた時、正直絶句してしまった。
『お題:忍者の握手会』
『ボケ:妻クナイ もらっていたのに 俺、罠に』
既に毒されていたぁ! オジサン川柳に既に毒されているぅ!
「星見! オジサン川柳は一旦忘れて、まずサイト内の過去の優秀回答を熟読しよう!」
星見は少し不満そうに、
「でもこういう駄洒落系統は結構ウケているぞ」
「だからって川柳ではなかっただろ! 575じゃなかっただろ!」
「う~ん、でも川柳のほうが収まりがいいからな」
「そんなことない! 大喜利はもっと短いほうがいい!」
「ほら、上手いこと言ってる回答も点数伸びてるぞ」
と言いながら私に誰かの回答を見せてきた。
『お題:陰でこそこそしているサッカーチーム』
『ボケ:うわさレッズ』
私は一息ついてから、
「これは端的じゃん、川柳にしてないじゃん」
「川柳のほうが良くないか?」
「川柳のほうが良くないよ」
頭を抱えて俯いてしまった星見。
私は星見からスマホを奪って、そのサイト内の傾向を見ていき、
「確かにクイズの正解みたいな回答が上位を取ることも多いね、駄洒落が本当に好きならそういう方向でも決して悪くはないのかも。私はしっかりボケている大喜利のほうが好きだけども、それでいいならそれでいいのかな」
すると星見が顔をあげながら、
「別に駄洒落が好きなわけでもない……」
「じゃあそうだねぇ、できるだけお題から離れず、芯を打つように回答したほうがいいんじゃないかな? 川柳という指定が無い時に川柳でボケると『何で川柳?』ということがノイズになると思うよ、あえてそれが違和感の笑いになる時もあると思うけども、それは採点側に高度な感性が必要なんじゃないかな、そういう感性があったとしてもそう汲み取ってもらえるかどうかは別だし」
星見は震えながら、
「さすが玖瑠実、さすくる……」
「せめてハツラツ言いなよ」
そこからまた星見の回答にダメ出しをしたりしていった。
毎日そんな放課後を過ごすことにより、徐々に星見の回答も最先端の大喜利スタイルが身についていき、まあ大スベリはしないかなといった感じになった。
そんなある日の放課後、というかその本題、今思えば遅くない? というようなことを星見は言い放ってきた。
「どんな仮装が一番いいのか」
「そう言えば、仮装のキャラになりきって大喜利回答をするというハロウィン仮装大喜利だったね」
「タコピーの原罪でいこうと思っている」
「いや! そんな鬱アニメでいこうとすな!」
「でもお笑いってギャップっていうじゃないか」
そう真顔で言う星見。
いやいや、
「あんまみんな知ってるかどうか分からないアニメとかは避けたほうが無難だよ。普通に看護師とか悪魔とかそんな感じがいいんじゃないかな」
「水着でカマすしかないか」
「十月の最終日曜日にっ? 寒いでしょ!」
と私はツッコむと、星見は眉一つ動かさずに、
「でも最初にカマさないとダメでは?」
「カマすとかそういう発想じゃなくていいんじゃないの? というかタコピーの原罪もカマすつもりで提案した?」
星見は堂々と、
「カマすつもりで提案した」
「カマさなくていいよ! 自分が答えやすいヤツにしなよ!」
「答えやすいヤツとは?」
「何か二属性持っているみたいな!」
すると星見は斜め上を見てから、
「あぁ、悪魔看護師とか」
「変なキメラすな! 職業的に食い合わせ悪いでしょ! 逆に悪魔的な看護師の一個しかできなくなるだろ!」
「さすが玖瑠実、さすくる」
「……じゃあそのさすくるついでに、一個案があるから私のソレに乗ってみる?」
「話を聞かせてくれ」
そしてついに当日になった。
参加者は全員で五人みたいだ。みんな高校生から大学生くらいだ。社会人はこんなんに参加しないだろうから。
私は星見の傍観者、否、観測者なので当然ながら来ているわけだが、周りを見渡すと、同じクラスの男子もいるっぽい。他の参加者の知り合いとかだろうか。
それぞれ壇上にのぼっていき、最後の星見が階段に足を引っかけて思い切り倒れて、大笑いが起きた。
いいぞ、いいぞ、星見、作戦通りだ。階段が無くても絶対コケろと指示した通りだ。
何故なら星見のコスプレはサンタクロース、つまり”あわてんぼうのサンタクロース”だ。十月にやって来てしまったサンタクロースという設定だ。
こうすればサンタクロースの範疇であるクリスマスと、さらにはあわてんぼうというキャラクターの二つを使うことができる。
最初の挨拶で星見が「あわてんぼうのサンタクロースです」と言ったところでまた小さくウケたし、みんな星見には好意的な目線を送っている。これはチャンスだ。それこそあとは回答でカマしてやれ!
「最初のお題は、こんな商店街は嫌だ、です」
出た、大喜利のお題を作り慣れていない人が作ったこと丸出しの雑なお題。
でも実際、今の主流の二要素よりもこっちのほうがいいのかもしれない。何故なら、参加者側が既に一要素持っている状態だから。
私は星見にさらに一個伝授していることがある。まあこれは欽ちゃんの受け入りなんだけども、
「はい!」
「まずはあわてんぼうのサンタクロースさん、参りましょう!」
そう自信が無い時ほど最初に手をあげろ、だ。
なんだかんだで最初が一番ハードルが低い。
まず最初に回答して、他のメンバーが考えているうちに、次の渾身の回答を出す。だから最初はスピード命の手前のボケを出せと指示している。
「こんな商店街は嫌だ、ではどうぞ!」
星見は斜めになっている建物をたくさん描いて、
「あわてて作ったので全て傾いている!」
と答えて、ちゃんとウケたのだ! これはデカい! これは空気が一気に星見になるぞ!
さてさて、次は誰が答える……って! 誰も答えない! これは予想外! でもそりゃそうか! 町内会の小さな大喜利大会にプロのオオギリストは来ていなかった!
星見は私のほうをチラチラ見てきたので、強くサムアップして鼓舞しておくと、星見がまた手をあげて、
「おっ! またあわてんぼうのサンタクロースさんですね! こんな商店街は嫌だ!」
クリスマスツリーの先端に家があるような絵を描いて、
「家の根元からクリスマスツリーが生えてきた」
と答えた。これはちょっとシュールでウケづらいのでは? と思ったんだけども、ややウケして、もう完全に流れがきていると思った。
司会者のお方も、
「クリスマスツリーは生えてくるヤツじゃないでしょ!」
と援護するようなツッコミをしてくれて、そこで一段さらに盛り上がった。
どうやら司会者のお方も基本的にあわてんぼうのサンタクロースさん(星見)しか答えないことに気付き、この人の回答で盛り上げなければいけないと思ったみたいだ。
そこからはとにかく星見が数を打ち、司会者のお方が面白おかしくツッコんでくれる。
こんなん見せられると、ちょっと嫉妬してしまう、司会者のお方に。私もツッコミできるのに。いや出役の能力は無いからいいけども。絶対緊張でアガるだろうし、私は。
そんなこんなで星見が圧勝といった感じで幕を閉じて、商品券をもらっていた。
私は万雷の拍手を送ったつもりだったけども、周りの観客たちも強い拍手をしていたので、私は目立たなかったと思う。
イベントも終わり、星見がサンタクロースの恰好のまま私に近付いてきて、
「さすが玖瑠実! さすくる! 全部玖瑠実のおかげだ!」
「そんな手放しで褒めないでよ、ちゃんと大喜利をやった星見の勝利だよ」
「いやいや! 玖瑠実の作戦が全部ハマった! ありがとう!」
そう手を強く握ってきた星見。
まあ星見の傍観者、観測者、いや一番の右腕として、まあこのくらいのことはしないとねっ!
私も気分よく、その日を過ごしていった。
ちなみに星見がもらった商品券はその日のうちに商店街に還元してしまうという、優良なお客様ぶりを発揮していた。
何か星見ってそういうことを天然でできるからいいんだよね、奢ってももらえたし、最高の一日だった。




