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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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第四十一話 ――顔のない王

ラストスパートです。

倉庫の灯りが、消える。



机の上には、

一枚の紙。



赤い印で囲まれた

名前。



「……これが?」


ユーハが問う。



レイは、頷かない。



ただ言う。


「名義だ」



「本体じゃない」



紙に書かれた名は、

街でも聞いたことのないもの。



だが――

印が重なっている。



土地譲渡。

債権移動。

保証契約。



すべてが、

一つの影に集まっている。



「どこにいる」



レイは、

静かに答える。



「いない」



沈黙。



「……は?」



「“いない人間”が

 王になっている」




教会。



司祭の前に、

一枚の契約書が置かれる。



「……ここまで来たか」



裏金融の帳簿の名義人。



教会の土地管理部門と、

繋がっている。



「司祭様、

 これでは……」



「表に出るな」



司祭の声は、

冷たい。



「まだ、

 彼は気づいていない」




男爵邸。



奥様が、

古い書類を開く。



その横で、

クララが首をかしげる。



「これ、なに?」



「昔の融資契約よ」



「誰の?」



奥様は、

ゆっくり言う。



「この家の」




回想。



セバスチャン。



黒い手袋。



深夜の契約。



若き男爵。



震える署名。



“顔のない名義人”。




倉庫。



レイは、

最後の紙を出す。



そこには、

セバスチャンの筆跡。



短い一文。



――「借金は金ではない。鎖だ。」



ユーハが、

息を呑む。



「……つまり?」



レイは、

言う。



「裏金融は、

 金を貸していない」



「街を担保にしている」



沈黙。



「払えない者は、

 働く」



「働けない者は、

 土地を失う」



「土地が集まる」



「そして――」



「街そのものが、

 名義人の所有になる」




ユーハの拳が、

震える。



「それ、

 誰だ」



レイは、

目を閉じる。



ゆっくり開く。



「……男爵家だ」



空気が、

止まる。



「は?」



「正確には――

 男爵家の名義を使った契約網」



「男爵は?」



「知らない」



「奥様は?」



「気づいている」



「クララは?」



レイは、

一瞬だけ

目を伏せる。



「……何も知らない」




その瞬間。



外で、

馬の音。



倉庫の扉が、

乱暴に開く。



ユーハが、

前に出る。



だが――

刃はない。



立っているだけ。



入ってきたのは、

見回りではない。



男爵家の紋章を

つけた使者。



息が荒い。



「……先生!」



「お嬢様が――」



一拍。



「攫われました」



静寂。



風が止まる。



ユーハの背筋が、

凍る。



レイは、

動かない。



顔色も、

変わらない。



ただ一言。



「……予定通りだ」




核心。



攫われたのは、

偶然ではない。



男爵家が

担保になっていると

知った瞬間。



“王”は、

動いた。



クララは、

鍵だ。



そして――



この誘拐は、

脅しではない。



回収だ。



レイは、

セバスチャンの手袋を

引き出しから出す。



黒い革。



ゆっくり、

はめる。



「……ここからは、

 教育じゃない」



ユーハが、

息を呑む。



「何だ」



レイは、

静かに言う。



「回収だ」


あと少しです。

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