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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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38/40

第三十八話 ――孤立の設計図

38話です。

朝。


市場の空気が、

少しだけ違った。



挨拶が、

減っている。



視線が、

一瞬だけ逸れる。



誰も何も言わない。



ただ――

距離だけが増えた。



ユーハは、

倉庫の前でそれを感じていた。



列はない。



だが、

通り過ぎる人間が、

明らかに足を速める。



「……何か、あったな」



レイは、

帳面を閉じたまま言う。



答えは、

まだない。



昼。



仕入れに行った女商人が、

戻ってくる。



顔色が、

悪い。



「……断られた」



「どこで?」



「全部」



沈黙。



「理由は?」



女商人は、

苦笑した。



「理由はないって」



「ただ――

 “今はやめといた方がいい”

 って」



ユーハが、

拳を握る。



殴る相手が、

いない。



それが、

一番厄介だった。



午後。



倉庫の前を、

見回りが通る。



止まらない。



注意もしない。



だが、

視線だけを残していく。



“見ている”という

合図。



夕方。



いつも来ていた

パン屋の男が来ない。



水売りの少女も、

姿を見せない。



代わりに――

遠くから見る人間が増えた。



近づかない。



関わらない。



孤立は、

静かに完成していく。



夜。



倉庫の中。



空気が、

少し重い。



ユーハが、

口を開く。



「……俺、

 何かやったか?」



誰も、

答えない。



レイが、

静かに言う。



「これは、

 罰じゃない」



「設計だ」



「設計?」



「怒鳴れば、

 敵ができる」



「殴れば、

 理由が生まれる」



「でも――

 何もせずに

 孤立させれば」



一拍。



「自分から

 崩れる」



ユーハは、

天井を見る。



拳が、

震えている。



「……どうする」



レイは、

少しだけ笑った。



「何もしない」



「は?」



「孤立は、

 外から壊せない」



「中からしか、

 崩れない」



灯りが、

揺れる。



外は、

静かすぎる夜。



それでも、

倉庫の扉は閉じない。

誤字脱字はお許しください。

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