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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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37/40

第三十七話 ――関わらないという選択

37話です。

昼。


倉庫の前は、

相変わらず静かだった。



列は、

できていない。



だが、

誰も困っていないわけではない。



ただ――

急がなくなった。



ユーハは、

入口に立つ。



立っているだけ。



呼び込みもしない。

追い返しもしない。



一人の男が、

近づいてくる。



見覚えはない。



年は、

四十前後。



服は、

きちんとしている。



「……ここは?」



「話す場所だ」



ユーハの返事は、

それだけ。



男は、

眉をひそめる。



「借りる場所じゃないのか」



「借りることもできる」



「……条件は?」



ユーハは、

首を振る。



「聞くだけ」



男は、

一瞬黙る。



「……じゃあ、

 やめておく」



背を向ける。



止めない。



倉庫の中。



年長の女商人が、

ぽつりと言う。



「……逃がしたわね」



レイは、

帳面を閉じる。



「選んだだけだ」



「関わらない、

 という選択も」



女商人は、

苦笑する。



「数字が、

 増えないわよ」



「増やさない」



沈黙。



「ここは、

 便利な場所じゃない」



「安心も、

 即効性も、

 保証しない」



「だから――」



一拍。



「残る人間は、

 嘘をつかない」



夕方。



倉庫の裏。



ユーハが、

壁に寄りかかる。



「……俺、

 向いてねぇかもな」



「呼ばねぇし、

 止めねぇし」



レイは、

横に立つ。



「向いてる」



「え?」



「守るってのは、

 縛らないことだ」



「縛らなきゃ、

 人は残らない」



「それでいい」



ユーハは、

空を見る。



雲が、

流れている。



夜。



教会。



司祭が、

報告を受ける。



「人は、

 集まっていません」



「だが――

 離れてもいません」



司祭は、

眉を寄せる。



「……“場”になっているな」



「はい」



「利用されない場は、

 一番壊しにくい」



司祭は、

しばらく黙る。



「なら――

 次は、“必要性”を

 消す」



「どうやって?」



「孤立させる」



夜の街。



倉庫の灯りは、

小さい。



だが、

通りすがりの人間が、

ちらりと見る。



入らない。



だが――

知っている。



それだけで、

場は生きている。

誤字脱字はお許しください。

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