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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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36/39

第三十六話 ――戻る理由

36話です。

朝。


倉庫の前に、

見慣れた影があった。



昨日、

去った商人。



帽子を深く被り、

周囲を気にしている。



ユーハが、

視線を向ける。



商人は、

一歩だけ下がる。



「……用は?」



ユーハの声は、

低い。



商人は、

小さく息を吐いた。



「列には、

 並ばない」



「殴られるのも、

 ごめんだ」



ユーハは、

何も言わない。



「でも――」



商人は、

帽子を外す。



目が赤い。



「昨日、

 教会に行った」



沈黙。



「優しかった」



「温かかった」



「……安心できた」



それを、

否定する者はいない。



「でもな」



商人は、

唇を噛む。



「話を聞かれなかった」



「“大丈夫です”

 って言われて、

 終わった」



ユーハの眉が、

わずかに動く。



「俺は、

 大丈夫じゃなかった」



商人は、

地面を見る。



「だから、

 戻ってきた」



「列には、

 並ばない」



「守る側にも、

 ならない」



「でも――」



顔を上げる。



「話は、

 聞かせてくれ」



ユーハは、

倉庫の中を見る。



レイと、

目が合う。



レイは、

頷くだけ。



「入れ」



商人は、

一歩踏み出す。



殴られない。



怒鳴られない。



ただ、

通される。



昼。



帳面の前。



商人は、

座らない。



立ったまま、

話す。



「俺は、

 戻らない」



「でも――

 黙らない」



レイは、

短く答える。



「それでいい」



「戻る理由は、

 残ることじゃない」



「選び直すことだ」



夕方。



倉庫の外。



噂が、

ゆっくり変わり始める。



「殴られたって、

 戻れるらしい」



「辞めても、

 追われない」



「……話は、

 聞いてくれる」



夜。



ユーハは、

入口に立つ。



今日、

殴られていない。



だが、

油断しない。



商人は、

外に出る前、

振り返った。



「……俺、

 正解だったか?」



ユーハは、

少し考える。



「知らねぇ」



「でも――」



「逃げっぱなしじゃ

 なかった」



商人は、

小さく笑い、

去っていった。



レイは、

帳面を閉じる。



「……戻り方が、

 増えたな」



ユーハは、

頷く。



「殴られなくても、

 戻れる」



「守らなくても、

 関われる」



夜の倉庫は、

静かだ。



だが――

入口は、

 閉じていない。

誤字脱字はお許しください。

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