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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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35/39

第三十五話 ――殴られた数だけ、残る

35話です。

朝。


倉庫の前は、

昨日より人が少なかった。



列は、

半分。



だが――

目は揃っている。



ユーハは、

立っていた。



包帯はない。

痛みは、

隠していない。



それが、

一つの合図だった。



「……昨日の人、

 来ないな」



誰かが、

小さく言う。



「殴られるの、

 嫌だろ」



別の声。



ユーハは、

聞こえていないふりをする。



守る側は、

理由を説明しない。



説明すると、

選ばせてしまうからだ。



昼。



倉庫の中。



帳面の前に、

七人。



減った。



だが、

空気は軽い。



「……正直に言う」



年長の商人が、

言った。



「昨日で、

 やめた」



沈黙。



「殴られるのは、

 想定外だ」



「家族がいる」



「ここで、

 英雄になるつもりは

 ない」



誰も、

責めなかった。



レイは、

頷く。



「正しい」



「残る理由より、

 去る理由のほうが

 わかりやすい」



商人は、

深く頭を下げ、

出ていった。



残ったのは、

五人。



そして、

ユーハ。



夕方。



倉庫の外。



昨日、

殴った男が来る。



一人だ。



「……帳面は?」



ユーハは、

動かない。



「ここには、

 ない」



男は、

笑う。



「じゃあ、

 列を潰す」



一歩、

踏み出す。



後ろから、

声。



「やめとけ」



昨日の女商人。



「今日は、

 私の番だ」



男が、

振り向く。



「……は?」



「殴られるなら、

 一人ずつでいい」



列の中から、

もう一人。



「私も」



さらに、

一人。



三人。



四人。



男は、

舌打ちする。



「……狂ってる」



「そうかもね」



女商人は、

笑った。



「でも、

 逃げないって

 決めただけ」



男は、

去った。



夜。



倉庫の灯りは、

小さい。



だが、

消えない。



ユーハは、

入口に座り込む。



「……なあ」



レイを見る。



「俺、

 まだ守れてるか?」



レイは、

答えない。



帳面を閉じ、

外を見る。



「守るってのはな」



静かに言う。



「残った数じゃない」



「去った後に、

 誰が戻ってくるかだ」



ユーハは、

空を見る。



星は、

少ない。



だが――

ゼロじゃない。

誤字脱字はお許しください。

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