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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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34/39

第三十四話 ――守る側の値段

34話です。

朝。


倉庫の前に、

人が並び始めた。



多くはない。



だが、

昨日までゼロだった場所に、

列ができている。



ユーハは、

入口の横に立っていた。



腕を組み、

背筋を伸ばす。



刃はない。



それでも、

近づきがたい空気がある。



「……あいつ、

 何者だ?」



「元は、

 外れの連中だろ」



小声。



だが、

ユーハは聞こえていないふりをした。



それが、

“守る側”の最初の仕事だった。



昼。



女が、

倉庫の中で泣いている。



金額は、

小さい。



だが、

期限は迫っている。



レイは、

帳面を閉じた。



「返せる」



「今月は、

 ぎりぎりだ」



女は、

何度も頭を下げる。



外。



ユーハの前に、

二人組が立つ。



見回りではない。



街の、

“別の守り手”。



「……最近、

 ここが騒がしいな」



低い声。



ユーハは、

動かない。



「列ができると、

 匂いが出る」



「匂いは、

 獣を呼ぶ」



ユーハは、

目を合わせた。



「ここは、

 奪わない」



男は、

笑う。



「奪ってない?」



「なら、

 “取り返す”だけだ」



一歩、

前へ。



ユーハは、

一歩も引かない。



「帰れ」



声は、

低い。



だが、

震えていた。



男の拳が、

腹に入る。



鈍い音。



ユーハは、

倒れなかった。



二発目。



三発目。



列が、

静まり返る。



誰も、

止めない。



止められない。



男は、

吐き捨てる。



「守るってのはな、

 殴られる側に

 立つことだ」



去り際。



「次は、

 帳面の中身だ」



夕方。



ユーハは、

壁にもたれて座っていた。



口の端が切れ、

血が乾いている。



「……正解だったか?」



レイが、

問う。



ユーハは、

少し考える。



「わからねぇ」



「でも――」



列の方を見る。



朝の女が、

まだ待っている。



「逃げたら、

 もっと楽だった」



「だから――」



短く、

笑う。



「正解じゃない方

 を選んだ」



レイは、

何も言わない。



帳面を開く。



数字は、

減っている。



だが、

消えていない。



夜。



倉庫の外。



新しい影が、

増えている。



刃を持つ者。



言葉を持つ者。



どちらも、

まだ混ざっている。



レイは、

灯りを消した。



「……ここからだ」



ユーハは、

立ち上がる。



痛みを、

噛み殺しながら。

誤字脱字はお許しください。

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