表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/39

第三十三話 ――刃を置く理由

33話です。

夜明け前。


倉庫の中は、

妙に静かだった。



刃を落とした男――

名を、ユーハといった。



年は二十前後。

骨ばった肩。

目だけが鋭い。



彼の仲間は三人。



誰も座らない。

誰も逃げない。



「……で?」



一番年嵩の男が言う。



「俺たち、

 捕まるのか?」



レイは首を振る。



「捕まえる権利は、

 俺にはない」



「なら、

 追い出す?」



「それもしない」



沈黙。



「じゃあ、

 なんなんだ」



ユーハが、

低く問う。



レイは、

床に落ちた刃を拾い、

布で包む。



「預かる」



「……は?」



「力は、

 使う前に

 保管できる」



「使う理由が

 出るまでな」



ユーハは、

鼻で笑った。



「きれい事だ」



「腹が減ったら、

 人は刺す」



「それは――」



レイは、

彼を見る。



「腹が減ったまま

 考えさせられた

 ことがない人間の

 言葉だ」



空気が、

止まる。



「腹が減る」



「寒い」



「怖い」



「だから、

 奪う」



「でも――」



一歩、

踏み出す。



「奪った後は、

 もっと怖くなる」



ユーハの喉が、

鳴る。



「追われる」



「疑われる」



「仲間が、

 減る」



「最後は、

 一人だ」



沈黙。



それは、

全員が

知っている未来だった。



「……じゃあ、

 どうしろって」



レイは、

短く答える。



「守れ」



「……誰を?」



「ここを」



倉庫を、

指す。



「教会でも、

 街でもない」



「選べる場所を」



ユーハが、

眉をひそめる。



「守ったら、

 腹が膨れるのか」



「すぐには」



「だが――」



「仕事になる」



他の三人が、

ざわつく。



「見回りみたいな

 もんか?」



「違う」



「殴らない」



「脅さない」



「逃げない」



「立っているだけだ」



ユーハは、

しばらく黙っていた。



やがて、

言う。



「……一つ聞く」



「俺が、

 また刃を取ったら?」



レイは、

即答する。



「その時は、

 俺が止める」



「力で?」



「言葉で」



「……止まらなかったら?」



一拍。



「それでも、

 立つ」



「逃げない」



ユーハは、

笑った。



短く、

苦い笑い。



「……面倒な奴だな」



「そういう仕事だ」



夜明け。



倉庫の前に、

人影が立つ。



教会の列に、

並ばなかった女。



商人でもない。



子どもを連れた、

痩せた母親。



「……ここ、

 話を聞いてくれるって」



ユーハは、

反射的に前に出る。



刃は、

ない。



代わりに、

立っている。



レイは、

その背を見て、

何も言わなかった。



刃は、

床に置いた。



だが――

居場所は、

 生まれた。

誤字脱字はお許しください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ