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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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32/39

第三十二話 ――選ばれなかった者たち

32話です。

夜。


街の外れ。



灯りの届かない倉。



人影が、

四つ。



誰も、

教会の列には

並ばなかった。



誰も、

倉庫にも

来なかった。



「……結局よ」



一人が、

吐き捨てる。



「どっちも、

 “ちゃんとしてる奴”

 向けなんだ」



笑い声。



乾いた、

短い笑い。



「祈れるほど

 素直じゃねぇ」



「考えられるほど

 頭もねぇ」



「でも、

 腹は減る」



別の男が、

床を蹴る。



「選べ、選べってよ」



「選ばれたこと、

 一度でもあったか?」



沈黙。



それが、

答えだった。



一番若い男が、

小さく言う。



「……奪えばいい」



全員が、

彼を見る。



「祈りも、

 帳面も、

 信用も要らねぇ」



「“今”があればいい」



彼の手には、

刃物。



粗末だが、

十分だった。




同じ頃。



倉庫。



七人。



帳面を囲んでいる。



数字は、

慎重に減っている。



それでも、

減っていないものがある。



「……人が、

 足りないな」



年長の商人が言う。



「来ない層が、

 いる」



レイは、

頷く。



「見えてる」



「見えてるけど――」



少し、

言葉を選ぶ。



「呼べない」



「呼んだら?」



「来る理由が、

 ない」



沈黙。



誰かが、

口を開く。



「教会は?」



「同じだ」



「祈れない人間は、

 救えない」



「じゃあ――」



空気が、

重くなる。



レイは、

続ける。



「だから、

 最初に来るのは――」



「刃だ」



全員が、

息を呑む。




深夜。



倉庫の裏口。



音。



鍵が、

こじられる。



レイは、

起きていた。



灯りを、

点けない。



足音。



荒い呼吸。



刃が、

光る。



「動くな」



若い男の声。



震えている。



レイは、

手を上げる。



「話せるか?」



「黙れ」



「……腹、減ってる?」



間。



刃が、

わずかに下がる。



「教会、

 並ばなかっただろ」



男は、

答えない。



「ここにも、

 来なかった」



「でも――」



ゆっくり、

言う。



「ここには、

 来た」



沈黙。



「選びに来たんだ」



「奪うか、

 話すか」



男の手が、

震える。



「……話して、

 腹は満ちるか?」



レイは、

首を振る。



「今は、

 満ちない」



「でも――」



一歩、

近づく。



「次は、

 選べる」



刃が、

床に落ちた。



乾いた音。



男は、

泣いていなかった。



ただ、

疲れていた。



外で、

足音がする。



他の三人。



「……遅いぞ」



レイは、

入口を見る。



「中に、

 入れ」



「選ばれなかった奴は、

 ここに集まれ」



夜が、

静かに割れた。

誤字脱字はお許しください。

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