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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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22/35

第二十二話 ――名前が落ちる瞬間

22話です。

名を名乗った男は、

若くはなかった。


三十を越え、

四十には届かない。


腕は太いが、

震えている。



「……俺だ」


その一言で、

空気が変わった。


同情と、

距離と、

安堵。


――自分じゃなかった、という顔。



レイは、

何も言わない。


紙に書いた名前を、

一度見ただけで、

視線を上げた。


「確認します」


声は、

淡々。


「昨日の刃物沙汰」


「相手は?」


男は、

唾を飲み込んだ。


「……港通りの

 酒場の用心棒だ」



「理由」


「……借金だ」


「誰から」


「……言わなきゃ、

 ダメか」


レイは、

一瞬も迷わず答える。


「条件三」


「名前付きです」



男は、

歯を食いしばった。


「……東区の

 金貸し、

 バルカン」


ざわめき。



「刃物を抜いたのは?」


「俺だ」


「先か、後か」


「……先だ」



沈黙。


重い。


誰かが、

ぼそっと言った。


「自業自得だろ……」



レイは、

その声を拾わない。


男だけを見る。


「相手は?」


「……生きてる」


「怪我は?」


「肩を、

 少し」



レイは、

頷いた。


「では、

 裁定を出します」



一瞬、

場がざわつく。


「もうかよ」


「早すぎねぇか」


レイは、

静かに言った。


「迷う余地がない」



「あなたは、

 暴力を先に選びました」


「理由が何であれ、

 これは事実です」



男は、

俯いた。



「よって」


「三日間の

 市場立ち入り禁止」


「その間、

 あなたは

 酒場側に

 治療費と

 損失分を払う」



「金がねぇ」


即座に、

男が言った。



レイは、

即答する。


「知っています」


「だから――」



「働きで返します」



ざわめき。


「働き?」


「何やらせる気だ」



「市場の清掃」


「荷の仕分け」


「人手が足りていない場所」



「三日で足りなければ、

 延長」


「刃物を持たず、

 争いの場には

 近づかない」



男は、

呆然とした。


「……それだけか?」


「それだけです」



「殴られねぇのか」


「縛られねぇのか」


「追い出されねぇのか」



レイは、

はっきり言った。


「これは罰ではありません」


「再発防止です」



場が、

静まる。



「最後に」


レイは、

男を見る。


「あなたは、

 悪人ではありません」


男の顔が、

歪んだ。



「だが、

 危険な選択をした人間です」


「そこは、

 はっきり区別します」



レイは、

周囲を見渡した。


「次に刃物が出た場合」


「条件一」


「その場で、

 私の裁定に

 従ってもらいます」



誰も、

口を挟まない。



男は、

ゆっくりと頭を下げた。


「……わかった」


「やる」



レイは、

紙を折った。


「では、

 次です」



その言葉に、

何人かが息を詰めた。


――終わらない。


――これは、

 始まったのだ。



レイは、

次の名前を書く準備をした。


誰かが、

自分の名が

呼ばれる予感に、

背を固くする。


誤字脱字はお許しください。

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