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『俺様、御家乗っ取り記』(仮)  作者: くろめがね


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21/32

第二十一話 ――条件

21話です。

翌朝。


市場の集会所は、

人で埋まっていた。


多すぎる。


それだけで、

状況は悪い。



レイは、

入口で立ち止まった。


一歩も、

中に入らない。


それを見て、

ざわめきが走る。


「……入らねぇのか?」


誰かが言った。


レイは、

静かに答える。


「ここからです」



「話を聞きに来たんだろ!」


「戻るって言ったじゃねぇか!」


声が重なる。


焦りが、

混じっている。


レイは、

一つだけ手を上げた。


それだけで、

少し静かになる。



「戻るとは言いました」


「ただし――

 条件付きです」



最前列にいた男が、

苛立ちを隠さず言う。


「条件だぁ?」


「今さら偉そうに……」


「偉そうに、

 聞こえますか」


レイは、

淡々と返す。


「では、

 やめましょう」



空気が、

凍る。


「待て!」


別の声が、

割って入った。


「……聞こう」



レイは、

一枚の紙を取り出した。


「条件は三つ」



「一つ」


紙を、

指で押さえる。


「私の裁定に、

 その場で逆らわない」


「……は?」


ざわめき。


「理由は後で聞いていい」


「だが、

 現場では従う」



「二つ」


「私が介入するのは、

 公の場のみ」


「裏の揉め事、

 私怨、

 報復」


「それらは、

 一切扱いません」



誰かが、

叫んだ。


「それじゃ意味ねぇ!」


「裏で殴り合ってんだぞ!」


レイは、

即答した。


「だからです」



「裏を扱い始めた瞬間、

 私は“裁く側”ではなく

 “使われる側”になります」



「三つ」


場が、

静まり返る。


「責任は、

 必ず名前付きで出す」


「匿名、

 噂、

 “みんなが言ってる”――

 それは却下」



沈黙。


重い。



代表格の男が、

低く言った。


「……それで?」


「それで、

 俺たちは

 何を得る?」


レイは、

視線を向けた。


「今より悪くならない」



笑い声が、

一部で起きる。


だが、

すぐ消えた。



「良くなるとは、

 言わないんだな」


「ええ」


「正直だな」


「私は、

 救世主ではありません」


レイは、

一歩踏み出す。


「崩壊を遅らせるだけです」



沈黙のあと、

一人が言った。


「……それでも、

 いい」


別の声。


「今よりマシなら」


「殴り合いが減るなら」


「子どもが巻き込まれねぇなら」



レイは、

一つだけ確認した。


「全員ですか」


返事は、

遅れた。


だが、

最後は揃った。


「……全員だ」



その瞬間。


レイは、

初めて中に入った。



「では、

 契約成立です」


「最初の案件に入ります」



ざわめき。


「もう決まってんのか?」


「ええ」


「昨日の刃物沙汰」


「名前を出してください」



沈黙。


長い。


誰も、

口を開かない。



レイは、

一度だけ言った。


「――これが、

 あなた方の

 “最初の試験”です」



空気が、

重く沈む。


誰かが、

ようやく言った。


「……俺だ」


名が、

落ちた。



レイは、

その名を

紙に書いた。


ゆっくり。


逃がさない文字で。



誤字脱字はお許しください。

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