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ワープ!×ワープ!  作者: 七賀ごふん


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7/7

#7



「空から降りてくるところ誰にも見られなくて良かったな。いや、いっそ見られた方が良かったか。天使の降臨ってことで大金持ちになれたかもしれないし」


中々下衆なことを言ってると思ったが、彼から離れて全身の土埃を落とした。


「貴方が帰れたのはいいけど、何で俺のことまで……。俺はこの世界に居場所はないのに」

「そんなの俺が作るから心配しない! 」


豪快かつ潔い即答にたじろく。けどアケミはこちらの心配などまるで気にしない様子で微笑んだ。

「無理やり連れてきたんだ。君ひとりぐらい、養ってみせるよ」

でも一ヶ月行方不明になってたな、と彼は少し青ざめて口元を押さえた。

無計画で楽観的な彼にどこから突っ込めばいいのか分からない。でも、何故だか笑ってしまった。


冥王は冥界から離れることはできないし、追っ手も亡者では送り込めないだろう。多分だけど、彼を危険な目に合わせる可能性は低い。


「今後のことはまた考えるとして。とりあえず俺の家に帰ろっか。あと、すごく今さらなこと聞いていい?」

「何ですか?」

「天使ちゃんって名前あるの?」


闇をかきわけるように、橙色の街灯が連なっている。


「ありません」

「ないの!?」


アケミは露骨に驚いた。住宅街では予想外に声が響いた為、慌てて口を押さえている。


「じゃあ俺が名前つけちゃおうかな。いい?」

「ええ」

「やった! 真白、でどう? 暫定だから、嫌になったら変えていいけど……」


「……」


多分、前に言ってた猫の名前を真似たんだろう。


「嫌じゃないです」

「ほ、ほんと?」

「だって、大切な家族だったんでしょ?」


笑いかけると、彼もつられて笑った。

小さく頷き、「もちろん」と、ひと言だけ。


右も左も分からない自分を導くように、手を引いてくれる。

こんなに心強いのは初めてだ。安心させてくれる人が傍にいることが、こんなにも幸せなことだったなんて。


「行こう、真白」


あれほど暗く騒がしかった連夜が嘘のように、小さな灯火が自分達を包んでいる。

これからはこの、狭く輝かしい景色を見ていくんだ。


「はい。……アケミさん」


俺が攫ったひとはすごいひとだったんだ。

こんなにも容易く、俺のことまで攫ってしまうんだから。


一歩前に踏み出して、踵を浮かす。油断してる彼の頬にキスすると、心配になるほど顔を赤くした。


初めてそんな顔にできたことに驚きと、少しばかりの優越感。そしてたまらない愛しさを覚える。


「初めて俺から触れられた。……こんなに嬉しい気持ちになるんですね」


はにかんで言うと、アケミも嬉しそうに微笑んだ。

頭を優しく撫でられ、「幸せにするよ」、と耳元で囁かれる。俺はとてもありきたりな感謝の言葉しか言えないけど、この夜は絶対に忘れない。時間も次元も超えて、大好きな人と歩き出せたから。





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