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嬉しい事に、この短期間の東京弾丸ツアーで皆が了承してくれた。星夜は東京から戻る道中だった。そして実はもう1人、会う約束を交わした人がいた。

星夜は名古屋を超え、そのまま京都に向かった。最後の1人は、今京都にいるのだ。

駅近くにあるバーで待ち合わせ、先に着いた星夜は、ビールを1杯飲み始めた。京都も随分久々だった。今回は日程的にこの日に名古屋迄帰らないといけない為、滞在時間は2時間程だろうか。こうして1人で飲むのも何だか久しぶりだ。何も考えずに1点を見つめぼんやりしていると、「お久しぶりです。」

と言う優しい声が聞こえた。

「変わってないね。」

星夜はにこっと微笑んだ。現在32歳となったその青年は、京都出身の女性と東京で出会い、

そのまま結婚。今は奥さんの実家付近で幸せに暮らしている。

インテリアの会社で無理なく働き、子供もいてパパになっていた。

「成田所長…いやもう今は成田さんですね。何だか以前よりも若々しいですね。今何されてるんですか?」

こうして隣合わせで話すのも久しぶりで何だか懐かしい。

「何というか…今は歌を歌うお兄さんになったよ!」

星夜は含み笑いの表情でそう答えた。

「NHKと仲良しになったんでしょうか?」

こういうシュールな返しも【今根さん】らしい。アルマクだと告げると流石の今根さんもかなり驚いていた。しかし、実は結構アルマクの音楽が好きだとも言ってくれた。

その話の流れで、星夜は仕事の依頼をかけた。「東京で今根さんに俺たちが所属しているアッセンブルと言う会社の広報をお願いしたいんだ。先ず立ち上げ時に2人をメインに考えていたんだけど、その2人は自分の中で直ぐに決まっててね。あ、因みにもう1人は秋田さんなんだ。」すると今根さんは、

「何だか面白そうな話ですね。秋田さんお元気ですか?久しぶりに会いたいな。」

そう穏やかに言っていた。

「かなり重要なポジションなんだ。宣伝・PRは交渉力も必要だからね。だから出来れば断らないで欲しいんだけど。」

星夜はそう言って笑った。今根さんはその言葉も冷静に受け止めている様で、その場で誰かに電話をかけ始めた。

「もしもし、今大丈夫?あのさ、世田谷で働いていた時代に凄くお世話になった成田所長覚えてる?そうそう、でね、また東京で一緒に働こうって誘ってくれたんだけど…色んなアーティスト達を支援するレコード会社みたいな感じかな。うん、広報担当だって。え?良いの?…あ、そうなんだ。わかってくれてありがとう。詳しい事はまたゆっくり話そう。じゃまたあとで。」

話は終わったようだ。

「今、妻に話したんですけど、それはやるべきよ。あと単身赴任で大丈夫だから思いっきりやりなさいよ。今度はあなたが返す番よ。

って言われました。単身赴任で大丈夫をサラッと言われたのがなんか少し切ないですけど…。」

今根さんらしいアクセントも付け加えて教えてくれた。素敵な人は、素敵な人にめぐり逢うのだろう。星夜は単純に凄い奥さんだなと思った。そして、

「どこかのタイミングで改めて奥さんに直接挨拶させてね。」

そう伝えた。またこうやって縁が繋がった事が凄く嬉しかった星夜は、この後も時間目一杯、今根さんとの会話を楽しみ京都をあとにした。


アルマクも名古屋と東京を行き来するライフスタイルが新たに始まった。どちらにも大好きな仲間達がいてくれる。美縁も東京メンバーの皆とすっかり意気投合してくれて、その姿を見ると星夜も凄く嬉しくなる。そんな素晴らしい環境で楽しく過ごせている事もあってか、曲作りも順調に進んでいた。

これまでにも様々な曲を生み出して来たアルマクだが、今、正に原点回帰をテーマにアルバムの作成に取り掛かっていた。音楽業界もその昔のように、CDが売れる時代ではない為、アルバムをどんどんリリースしているアーティストも少ない。アルマクも今作が3rdアルバムとなる。全11曲程の作品になるだろう。今作でリード曲となるのが、【assemble】という曲だ。

アッセンブルは社名でもあるが、

『集まる・集合する』

という意味がある。今回も、星夜の人生でお世話になって来た人達が、それぞれに時を重ねてまた同じ時間を共有する事になった。人々との出会いにより、同じ志を持った者同士が集結する奇跡を作品にしたいと考えた。作詞は星夜で作曲は美縁。そしてこの曲は、今後のライブでの定番曲となる。疾走感のあるロックチューンで2人のお気に入りの曲にもなった。

この【assemble】はこの年の大ヒット曲に成長していった。サブスクでは軒並み年間トップを獲得し、再生回数も5億超え。アルマクは名実共に、もう国民の誰もが知るような人気アーティストの仲間入りを果たしたのだ。


今から半年ぐらい前、名古屋と東京の2拠点で会社運営をしていく話の中で、星夜と美縁は、

社長の大輝にあるお願いをしていた。

2人の夢だった地元ライブについてだ。

勿論、アルマクの2人は興行の為では無く、地元への恩返しの為に実現させたい。観客の皆さんに無料でとは言えないが、誰もが参加出来るようなライブにしたいし、ライブにかかる必要経費は、これまでに2人で貯めてきた”アルマク貯金”を使うつもりでいた。大輝からは2つ返事でOKを貰った。社長と言う肩書はあるが、大輝にとって星夜はかわいい弟だし、美縁も子供の頃から知っている。もう1人の弟の様なものだ。

大輝はこれまでにも2人からの提案やお願いにNOと言った事はない。

どの様に実現するか、どうしたいかを考えようと言ってくれた。大輝と言う存在は、

アルマクの『誇り』なのだ。


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