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新たな仲間との出会い

翌朝、早速世田谷の社員達と営業に出た。

曜日ごとにまわる社員を変えるスケジュールだ。

世田谷エリアのお客様の反応を見ていると、

まだうちの会社を認知していない方も多くいる事がわかった。いわゆる『塩対応』のお客様は多いのだが、それは想定外では無い。社員1人1人の今の悩みも聞いた。

契約のとれない社員には共通している事がある。それは、

『契約がとれない事は自分のせいでは無い』

という心構えだ。それとこれは圧倒的に男性に多い。皆、自分の自己評価としては頑張っているのだ。頑張っているのにお客様のアポもとれない状況の為、

『契約がとれるイメージが湧かない』となる。人間は途方に暮れると動けなくなるものだ。結論を簡潔に言ってしまえば、

『あきらめが早く仕事しなくなる』のだ。

そしてこの状況は星夜の経験上、周りにも連鎖する。人には本音と建前がある。星夜は、1人1人の社員と自らコミュニケーションをとり悩みを聞いていたが、全てを鵜呑みにする気はない。皆と話す中で星夜が知りたかったのは、

1人1人の『目的』だった。


ひと通りの社員との同行営業を終え、星夜は改めてこれからの戦略をノートに書き込んでいった。この時点で何名かはそう長く持たないだろうと思っていた。

星夜は新人時代や営業課長の時代も、よく上司に目標を聞かれた。勿論、言われた通りに目標をたてて日々邁進していたが、一方で目標は原動力にならない事を感じていた。これは人によっても違うかもしれないので、そう言いきるつもりもないが、どちらかというと重要なのは目標よりも目的だと思う。

『何の為にそうするのか』、

『何の為にここにいるのか』。

ここの部分が全くない人で、この会社で結果を残して来た人を見た事がない。例えば、

『ただお金を稼ぎたい』よりも、

『いつまでにこれぐらいの規模の家を建てたいので、これぐらいのお金が必要。』とか、

『彼女との結婚費用がいつまでにいくらどうしても必要。』等、

何でも良いので具体的に歯を食いしばって頑張らないといけない理由がある人と無い人では、『継続できるモチベーション』が全く違う。

その為、今一度皆に『報奨金』の制度について把握してもらった。この『報奨金』について、会社から毎月頂ける固定給や年2回のボーナス以外にも、営業には報酬があるのだ。いくらぐらいの規模のご契約をもらう事で、営業担当にいくら入ってくるのか、何回に分けられて頂けるのか、着工(工事着手)迄にはどのくらいの期間が必要なのか、完工(工事完了)迄はどのくらいの期間が必要なのか、そして、この報奨金が増える事でボーナスにもどう影響してくるのか。他にも項目がたくさんあるのだが、これをちゃんと理解している営業社員はかなり少ない。

自分に返ってくるもので、この会社で営業マンとして存在し続ける指針のひとつとなる大事な事だ。理解して貰えるまで、星夜は何度も教えた。

『いつまでにどのくらい』

のスケジュールを理解すると、今度は日々の時間がありそうで足らない事がわかってくる。

営業には本来すべき事が沢山ある。

そして、時間は自分だけでなく、人にも平等に流れている。

『少しなら時間を割いてみよう』

と思ってもらえる『耳より情報』が無ければ、誰も相手にはしてくれない。これはどんな地域で営業をしていても同じだ。


星夜は、この世田谷区の不動産会社周りも1人で同時に行っていた。しかし、こちらは個人の地主さんよりも塩対応だ。当然、最初から懇意にしてくれるとは思っていないので、こちらも情報を持って何度も何度も通った。

この『何度も』通う事で顔は覚えてもらえる。星夜は割と人当たりが良いキャラクターでもあるので、情報はくれるようになる。しかし、最も確信に迫る内容は中々教えてはくれない。他の不動産会社の社長と話しているうちに、違う不動産屋の情報に辻褄が合わなかったり、どの地域のお客様がどこの会社で建築する傾向にあるのか?デベロッパー達は、どの不動産屋から情報を得ているのか?そういう事がわかる様になっていった。まあ結局はどこも自分達の利益がいくらになるのか?で動く。

不動産屋から本当に濃い情報や案件を貰うのに、最も有効なのが『紹介料』だ。

例えば、A社から土地活用をしたい地主さんをご紹介頂くとする。そして、B社がその地主様と契約し、無事に着工・完工する事ができた。

その時に契約金額の◯%をB社がA社に支払う。これが紹介料だ。建築会社によっては、この金額を公表している%以上に支払っているところもその当時はあった。星夜はこの報告等、会社に相談を行った。しかし、これは会社の決定に基づくものであり、いち事業所長が決められるものでは無い。ここが変えられないと理解した時点で、星夜は、不動産会社からの紹介に時間を割くのを辞めた。


星夜が世田谷に来てから、同じ首都圏ブロックで意気投合した事業所長が2人いる。このブロックの中で、同じ様に23区の営業所立ち上げを任されている【青薙(あおなぎ)さん】と

秋田(あきた)さん】だ。

青薙さんは大田区を、秋田さんは墨田区の事業所長を務めている。歳は星夜より少し上だが、

2人共とても良い人だ。定期的に3人で飲んで情報交換したり、他愛もない話をした。青薙さんは東京都出身の人で、小柄だが結構豪快なところがある。凄く色々な遊びを知っていて、ユーモアのある気さくな人だ。

秋田さんは、北海道出身。物腰が柔らかく穏やかに話す人だが、胸の奥には熱いものを秘めている。正しいものは正しいと勇気を持って言えるところがある人だ。

星夜は、このお2人と川崎支店の事務の三谷さんが大好きだった。この3人には唯一、弱音を吐く事があったと思う。心の拠り所になる人達がいた事は、厳しい日々が続く星夜の支えになっていたと思う。今も心から感謝している。そして、気づけば季節は移り変わり、体の体温だけでは無く心の温もりも失われる程の冷たい冬が待ち受けていた。

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