8 心に秘めたいこともあるさ
手紙を書いてくれたのを覚えてるかい?
あの手紙は、今でも自分の中で宝物さ。
汚い字だなぁ、って笑ったよ。
今でもなんて書いてあるか読めないんだ。
すまない。
あの手紙には、今から西へ向かうと書いてあったそうだね。ま、今、知ったんだけど。
そうだね、危うく北へ向かうところで、間違いに気が付いた。
落ち着いて考えれば、西へ向かうのが正解だってわかったはずさ。
考えたわけじゃない?
ペンを立てて、倒れたのが北だったから、北へ向かった?
もっとダメだろ。
いや、照れ隠しならともかく、今は褒めてない。
手紙に描いてあったクマは可愛かったぜ。
猫を描いた?
⋯⋯⋯あっそう。
途中の街には寄ったのかい?
まぁ、当然か。
仲間を集めたんだろ?
どんなやつが集まったんだい?
一人は、戦士か。凄いじゃないか?
違う? なんでだい?
一緒にご飯食べて、途中でトイレに行くって、 そのまま帰って来なかった?
それは、仲間なのかい?
もう一人は、さっきのガチムチオイリーアニキ?
シャワーから出てもテカテカだったの?
ところで、なんで君はシャワーから出てくるアニキを見ているんだい?
話せば長くなる?
時間はたっぷりあるのさ、良かったら聞くよ。
そういえば、餞別に渡したミサンガはどうしたの?
その街で切れた?
じゃあ、何か願いが叶ったのかい?
逆に不幸な目に遭ったって?
どんな?
ちなみに、あのミサンガは安産祈願のいわれのあるところでもらったやつなんだ。
だって、そのポッコリお腹、ずっと5ヶ月のままじゃないか。
もう帰るって?
もう来ることはないとか、寂しいことは言わないでほしい。
君の居場所は、いつもこの席なんだ。
この席は、君のためだけに空けておこうと思うんだ。