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結星門の巫女  作者: 安田座
9/26

9:宇宙人捕まる

 

 わたしは、治癒室を出て控室に居るふみちゃんと合流した。

 神殿内もいろいろと忙しそうだったので、今日はすぐに結星門を出ることにした。

「おかえりなさい、たいへんでしたね」

 扉を出たところでしおりさんが迎えてくれた。

「ただいまです。

 さく君は居ますか?」

 颯矢さんからさく君への伝言を頼まれているのだ。

「はい、家の方に……」

 その時、目の前に人影が現れた、と思うと、金属のぶつかり合うような大きな音がした。

 何事かわからなかったけど、目の前に立つのはさく君? 背中を向けている。

 そして、その前にもう一人居る。 でも、すぐに離れる様に後方へ飛ぶ。

「何者だ」

 さく君が聞いた。珍しく厳しい言い方。 その両手に、少し短い刀を逆手に構えている。

 そんな台詞を日常の世界で聞くとは思って無かった……とか一瞬で思った。

 ふと、相手の靴が昨日見た侵入者のものと同じことに気づいた。たぶんそうだ。

 まさか?

「貴様は、まさか?」

 さく君がもう一度聞く。そして間合いを詰めて刀を振る。敵なのだけは確定なのだろう。

 相手は答えずに刀を受ける。相手の武器はナイフかな。 一対一の状況での戦闘が始まった。 実際夜だからよく見えません。 昼でも自信無いですけど。

 というか、怖くてふみちゃんと抱き合って固まってます。警察に電話もまずそうだし……。

 しおりさんは、わたしとふみちゃんを庇う様に立ち小刀を構えている。しおりさんも、強いのかな?

「大丈夫ですよ、さくは強いですから。 二人とも今は私の後ろから動かないでくださいね」

 しおりさんが、わたし達へと落ち着いた感じで言葉をかけてくれた。 絶対、頼りになる。

 さく君は、戦いながらどんどん離れて行く、竹林の間の道のあたりまで行ったとき、敵の人がこちらへ何かを投げた。丸っこい?ボール?

 それが届く前に、さく君が素早く戻って蹴とばした。 丸っこかった様に見えたそれは、離れたところで爆発した。

「うわっ」

 ふみちゃんが声を上げた。

 わたしは”こわっ”って出そうだった。 爆弾よね?、初めて見た。 そういう問題じゃ無い。

 そして、気付くと敵の姿は消えたみたい。

「逃がした。ああ、やっちまった」

 さく君が竹林の方に戻って、頭を抱えてうずくまる。

 でも、逃げたって、どこへ? でも、さく君、すごくない?

「さく、こちらへ戻ってください、別な伏兵が居るかもしれません」

 しおりさんが、さく君を呼び戻した。

「さく君、ありがとう、守ってくれて」

 わたしはお礼を言う。 少し興奮気味なのは、怖かった事態から一息ついたのと、見事に敵を撃退した少年への感謝だ。 本人は納得して無かった様だけど。

「さく君、かっこよかったぞ」

 ふみちゃんの目はハートだ。

 それにしてもわたし、慣れてるとかだったら嫌だなぁ。怖かったけど、たぶん以前なら泣き叫んでたかも……いや逆だ、慣れるとか関係なくて、事態をもっと受け止めて行動できる様に強くならないとなんだ。


 その後、さく君に颯矢さんからの伝言を伝えると、彼は、あと十分くらいで閉じる結星門へと入っていった。

 さく君を見送ったあと、今夜は風見家に泊めてもらう事になった。 逃げた敵がどこに潜んで居るかわからないからだ。

 でも、明日からはどうすればと考えてたけど、とりあえずしばらくお世話になる事に決まった。 自宅を知られるのはまずいかもしれないのだ。

 連日の外泊になるけど、地球だし自分の家に居るのとあまり変わらない気分だった。

 しかも、必要な着替えや日用品等はネットで頼んでくれた。 必要経費でよいらしい。

 なお、さく君はすぐに戻ってきた。 結星門が閉まるぎりぎりだったけど、間に合った。素早い。偉い。


 だけど、この外泊はあっさり翌日には終わった。

 なんと、逃亡者が警察に連行されたのだ。

 パトカーが騒がしかったので、さく君が様子を見に行ったら、まさにその人で、警察の話声から病気らしいことも分かったみたい。

 地球に来たのが一人なのは、襲われた結星門の衛兵さんの証言からだけど、たぶん間違い無さそうとのこと。

 ということで、今、帰宅しました。

 頼んでくれた着替え等は、今後お泊りする事があれば利用することで収まった。

 しかし、宇宙人が捕まるとどうなるんだろう。 良くも悪くも信じてもらえないだろうなぁ。 と、あまり重く考えて無かった。いや、向こうで起きた件が重すぎるのだ。



 夜になり、わたしはふみちゃんといつもの様に神社へ来た。 

 鳥居をくぐった時、知らないおじさんに声を掛けられた。 おじさん二人、スーツ姿だけど会社員っぽくは無いかな。 嫌な予感。

「お嬢さんたち、少しお話を聞かせていただきたいのですが」

 そう言いながら、出した。警察手帳?。 本物を見たことないから真偽は判断できません。見たこと有るくらいでわかるものでもないでしょうけど。

 でも、警察が来る心当たりは有るっていうか、やっぱり逃げた宇宙人の件よね。

「はい、なんでしょうか?」

 平静を装って答える。 あ、少し怯えて見せた方がよかったかも?

「お、警察の方ですか? こういうの初めてみました」

 ふみちゃんは興味津々。いや、どうするのよ、これ。

「君達は、ここへはよく来るのかな?」

「はい、そこの神社の子とお友達なんです」

「なるほど。

 でも、こんな時間にかい?」

 そうですよね、もうすぐ夜十時。

「今日はお泊りしに来ました」

 ふみちゃんがどんどん答えてくれる。 おお、それそれ。

「ほう、明日学校は?」

「行きますよ。 朝いったん家に戻ってからですけど」

 すらすらとまぁ。

「そうですか。

 では、この人の事。

 なにかご存じないですか?」

 写真を見せられた。 病院服で寝顔だ。 意外と若い、同い年くらいに見える。

 知ってるけど、知らない人なんです。実際、顔もよくしらない。 間違って無いけど、なんて答えれば。

「知らないかな、うちの学校でも見たことないし」

「わたしも知りません」

 わたしもいちおう答える。

「その人は、どうされたんですか?」

 ふみちゃんが聞き返す。 ああ、いいから早く逃げようよ。

「いや、近くでの行き倒れでね。

 身元を調べてるのだけど、誰も知らなくて困ってるんだよ。

 それで、見かけた同年代くらいの君達にも声をかけてみたんだ」

「そうでしたか」

「ご協力、ありがとうございました。

 それでは、我々はこれで」

「こんな時間までお仕事たいへんですね。

 頑張ってくださ~い」

 ふみちゃんが手を振ったので、あわせて振った。


 風見家宅につくと、さく君が出迎えてくれた。

「今の人達は?」

 いきなり聞かれた。 ちょっと厳しい表情?

「こんばんは~。 あ、まずは、そこか~」

 挨拶が口から出たところだったので、そのまま答える。 なるほど、知ってたのね。

「警察でした。 こんばんは」

 ふみちゃんはちゃんと答える。 さく君と、つーかー?

「そうですか。 ちょっと行ってきます」

 さく君はそう言うと私達が家に上がる前に横を抜けて玄関を出て行った。

「いってらっしゃい、そしておじゃまします」

 見送ってから、そのまま突っ立ってるのもなんなので、靴を脱いでお邪魔する。

 もう、勝手知ったる的になってますね。

「いらっしゃい、さくは?」

 遅れて出て来たしおりさんだ。

「たぶん、警察を見に行ったのかな?」

 やっぱり、ふみちゃんが答える。 ここでも警察の単語をいきなり出すの?

「え?」

 不思議そうな顔のしおりさんに事情を説明した。



 さくくんは神社の敷地を出て、道路を歩き出した。 いちおう目的地はコンビニに設定している。

「君、少し話いいかな?」

 さっき舞子達に声をかけた警察の一人がさくに声をかける。

「は、はい、なんでしょう?」

 少し後ずさりしながら、怯えた表情で答える。

「おじさん達は警察の者なんだけど、少し話をしてもいいかな?」

「僕は、ただ、コンビニに買い物に行くだけですよ」

「ああ、いや、君の事じゃないんだ」

「そうなんですか、ではあまり長くならないなら……時間かかると姉さんが心配するので」

「この写真を見てもらうだけだから、時間はとらせないよ」

 写真を出して見せる。

「知らない顔ですけど、目が開いてるのとか無いのですか?」

「行き倒れってやつでね、今病院で寝てるんだけど、目を覚まさないから身元がわからなくて困ってるんだ」

「そうなんですか」

「君は、中学生かな? こんな時間に外をうろついてちゃだめだぞ~」

「はい、コンビニで買い物したらすぐ戻りますので、見逃してください。 高校一年ですけどね」

 さくはぺろっと舌を出して愛想笑いをしてみせた。

「それは失礼した。 まぁ、ご協力ありがとうございました」

「いえいえ、こんな機会めったに無いのに、お役に立てなくて残念です」



 しばらくすると、さく君がコンビニの袋を持って帰って来た。 ジュースとお菓子が入っている。

「警察の人、まだ近くに居たよ。

 あいつから何か情報を得たのかもしれない」

 さく君は警察がこの家を見張っていないかを確認しに行ったのだ。

 捕まった宇宙人が尋問とかされて、ここを教えたってことでしょうか?

「そうなのね。 さて、どうしましょうか?」

 しおりさんが、思案する。

「僕達の正体が知られたのなら、あんな下っ端ではすまないとも思えるけど……。

 ここに目を付けるのが早すぎるよね」

「そうね、でも、時間の問題なら、明日の朝、お父様に相談しましょう」

「この星がまた見て見ぬふりをしてくれるか、賭けだね。

 ええと、ということで、今日は、巫女様だけで行ってもらえるかな?」

「はい。 わたしが一人で行けばいいのね」

 ふむ、特に構わないけど、どうして? 聞こうかなぁ。

「え、私は?」

 ふみちゃんが速攻で聞く。

「誰か来た時に、一緒にごまかして欲しいから」

 お泊りって言っちゃったもんね。

「そうなのね、わたし大根だよ?」

「ダイコン? 野菜の?」

「ああ、ええと、演技は下手くそって意味です。 大根は気にしなくておーけー」

「それは、困るなぁ。 じゃ、今回は入れ替わってもいいけど、代わる?」

 ふみちゃんの巫女衣装無いですよ? じゃなくって、聖力無いですよね。

 これもじゃなくって、ふみちゃん演技得意じゃん、さっきもそうだし。

「どういうこと?」

 ふみちゃんが聞く。

「神殿長にこの状況を伝えて指示を仰いで欲しい。

 そして、すぐに戻ってきてくれればいいから」

「ああ、そういう役ね、いいよ任せて」

 ふみちゃんは、手でオーケーサインを作って答える。

「ええ~、わたしも演技自信無い」

 演技って、ごまかすってことよね? 絶対顔に出る。 いや、態度にも出る。 汗が出る。

「あんたは、おどおどしても、演技かどうかわからないから大丈夫、イメージ的に」

 さく君の、わたしのイメージって?

「そうかなぁ。 え? どういうイメージ。

 ところで、お父様は?」

 風見家にも親は居ます。実は会ったのは泊めていただいた時にちょっと挨拶したくらいなのです。

 本当の親では無いのは当然なのですが、協力者だそうです。 そして奥様は居ません。

 お父様に出ていただくのも申し訳ないけど、確実な様な……。

「朝が早いからもう寝てるよ」

「そうだったぁ、朝拝よね」 

 聞かなくてよい事だったぁ~。ごめんなさい。 神社の仕事は欠かせませんよね。

「じゃ、伝令様は、見つからない様に隠れて行ってくれ、竹林辺りまでは隠し通路で行けるから」

「あいあいさ~」

 なんでふみちゃんノリノリなのよ。

「ふみさん、こちらへ」

 しおりさんが、ふみちゃんを誘導する。隠し通路に向かうのだろう。

「あっちの人は疲れてもう寝たことにするからな。

 あんたは、姉と一緒に出て、頷いてればいいが、名指しで何か聞かれたら答えてくれ」

 あっちの人って、ふみちゃんって呼んであげて~。

「さく君は?」

「僕が最初に出ると結果的に三人とも呼ばれる可能性がある。

 僕は、外を見張りたい」

「そうなのね。

 わかりました。

 でも、来るのです?」

 さく君、賢いなぁ、可愛いなぁ。ちょっとカッコいいなぁ。

「来るよ。

 さっきも言ったけど、ここに目を付けるのが早すぎるからね。

 いきなり踏み込まれたく無いから、警戒しておかないと。

 監視カメラ、境内以外にも付けないとなぁ」

 敵の人が地球側に来る事は想定外だったのだろう。

 実はかなりピンチなのかも知れない。




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