表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結星門の巫女  作者: 安田座
7/26

7:敵



 今日は、神殿に着くと真っ先に神殿長のもとへ行き、友人を連れて来てもよいかについて確認しました。

 そして、あっさりと御了承をいただいた。 というか判断を任された感じです。

 条件として、一つは、受付のカラナさんがわたしに伝えていたルール、私物持ち込みの件を守ること、二つ目は、友人の身柄を優先的に守ることはできないこと、三つ目は神殿内は大広間周辺のみ利用可能な事だけだった。

 身の安全については、やはり気になるところですけど、優先的が無理というだけで最善は当然尽くしてくれるみたいです。

 ということで、明日、ふみちゃんに相談してみようと思います。

 さて、今日は光の聖騎士様との面談です。

 光の……とか字面からやばいです。 こんなの期待しかない。 いや、目の保養ができればいいのです。 もう十分できてるのですが、欲望は際限なく、ってほどでも無くささやかな欲望です。

 おや? 目的、もう見失って無いか?わたし。

 カラナさんに案内された光の聖騎士様の執務室にてそんなことを妄想しつつ待機中です。 もうすぐ来られるとのこと。

 ちなみに武器のラックみたいなのに大きな盾が置いてある。 これがまたなんか神々しくてすごいのです。 そこから想像させるパラディン感。 

 部屋の中を想像というかさらに夢想しながら眺めていると、ドアがノックされた。

「あ、どうぞ」

 動揺してるので部屋の主に対してこの答えはどうかとか思ったけど、普通か。

「失礼します」

 低めの女性の声、キリっとした口調、そんな挨拶と共に扉が開いて入って来た。

 来た。 まさに光の騎士。

 白、いやパールホワイトって車の色みたいだけど、そんな感じの虹色の光沢の白い鎧に身を包むのは、百八十近い身長に長い金髪はポニーテールにまとめている。

 凛々しくてものすごくカッコいい。 騎士というか二次元的に言うとやっぱりパラディン、みたいな。 置いてある盾を装備したらまさにパラディン。

「おお、巫女様、あなたとの面談を心待ちにしておりました。

 なのに、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

 本日は、わたしが神殿警護のお役目に当たっているのですが、ガンの様に要領よく出来なかった様です。お恥ずかしい」

 そう言いながら近づくと両手を取ってふりふりされた。

「あ、あの、高橋舞子です」

 圧倒されて、それだけ言うのが精一杯。

「ああ、これはたいへん失礼いたしました。

 光の聖騎士、オルテミアスと申します。

 お会いできてたいへん光栄です」

 手を放してお辞儀すると、そのまま挨拶をいただいた。

「こちらこそ、お会いできて光栄です」

「巫女様がこんな可愛らしい方とは、ガンは教えてくれなかった」

 可愛らしいって例のハムスター可愛いの可愛いの方でしょう。十分嬉しいけど。 ちなみにガンってガンドレルさんよね。もちょっと可愛く呼んであげて~。 といいつつ、ガンこちゃんって文字が頭に浮かんだ、わたしも無いわぁ。

「ありがとうございます。

 オルテミアス様もとてもお美しいです」

 お世辞じゃないけど、こういう容姿関係ってセクハラだろうか? 可愛い言われたしいいか。 というより口から言葉で出さないと落ち着かない。

 「そうそう、ガンには代わりに周辺の警戒にあたってもらっているのです。

 ガンはしっかり者ですからね。わたしの様に不手際も無くこなすでしょう」

 しっかり者の妹キャラかぁ、かぁいいなぁ。欲しいなぁ。

「早速ですが、ご相談してもよろしいであろうか?」

 仲良くなるためなら何でも来いなんだけど、こういう方の悩みだし、求婚が多くて困るとかだったりしたら、たぶん手も足も出ない。

「わたしでよろしければ」

 それでも、あたって砕けろ、ああ、当たってくるのは向こう? そして砕けない様にしないと。

「貴殿が女性であること、それがとても安心です」

 おや?

「そうなんですか」

「わたしは、ガンドレルを愛しているのですが……」

 え”?

「は……い」

「彼女の気持ちを知りたいのです」

 何この乙女。 さっきまで、どちらかと言うと、かっこよすぎて女形って言うか男性イメージで見てた。

「ええと、それをわたしに確認して欲しいということです?」

「そうなのですが……」

「問題があるのです?」

「ええ、影の聖騎士の方では無く……」

 では無く? 無く??

「え?」

「古の聖騎士と申しましょうか……」

「古ってありましたっけ?」

 聞いて無いよね、聞いたかな、忘れたかもごめんなさい。

「聖騎士になる際には、その聖力の祭壇より力を得るのですが、ガンドレルが影の祭壇より力を得る際に古の聖騎士の魂が入り込んだのです」

「ほう」

 どういうこと?憑依されたみたいな? もう何でもありね。

「その際に、ガンドレルの心を支配すると、我々聖騎士全員を相手に戦い……」

 話の方向が見えないです。

「え?」

「たった一人に圧倒されたのです」

「は?」

 全員って、ガンドレルさん以外の七人が?

「それでも相手も聖騎士だからか、我々を殺害するのは目的では無かったらしく、戦闘が終わると、ガンドレル自身の体力の限界を超えていたのもあったのか意識を失いました。

 その後は、何度か現れましたが、我々では相手になれずすぐに消えてしまうのです。

 現れるのは強い殺気を感じた時であるのは、その何度かで判明しました」

「ほう?」

「それでですね。わたくし、その者に心惹かれまして……」

 そこまで話して赤くなって黙ってしまった。

「ええと、これを聞いていいのかわかりませんが、ガンドレルさん本人の事はどう思って?」

 でも、これは、聞いとかないとよね?

「良き後輩、良き友人です」

 ああ。

「そうですかぁ」

 どうするのよこれ?

 解決するのは役目じゃ無いけど、相談されたしなぁ。 でも、下手すると仲良くなるのとは逆方向に……。

「ちなみに、すごく強いから好きなんです?」

「ええと、そうですね、少し違うかな、男姓の様ですし」

 照れっ照れで話すのは乙女過ぎる……ん? 男?

「男の人の魂……」

 僕っ娘かぁ。 確かに悪くない、しかも、あの見た目だしなぁ。

「はい」

「わかりました。 とにかく何か考えてみます」

「ありがとうございます」

 そう言えば、アーク様がガンドレルさんのことそれっぽく言ってたなぁ。あ、戦うとビビる?みたいなだっけ? 古の聖騎士、どういう人かアーク様に聞いてみようかな。

 おお、そうだ、こういう話こそふみちゃんに相談すればいいかも? あれ、わたしも自分でちゃんと考えないとです。



 翌日、学校でふみちゃんに協力者の件を相談してみた。

 二つ返事でオーケーだった。 話の半分くらいで即だったけど。 イケメンだらけが効いたのは間違い無いです。 そして、オルテミアス様の件はまだ言って無いです。 少し事態を把握してからが良いよね。

 今は、もう控室で待機中です。 ふみちゃんとお茶をしながらお呼びが掛かるのを待ってます。

「このお茶美味しいでしょ?」

 普通の会話。

「美味しいけど、これ地球産じゃない?」

 にゃ?

「え”?」

「味がアールグレイ?」

 アップルティーとか明らかなのしか違いがわからないです。 そういうのでもない?

「飲食物持ち込み禁止って?」

 でしたよ?

「向こうが持ち込むのはかまわないでしょ?」

「あ、そうかも」

 そっかぁ、あってもおかしくないわぁ。

「それに、こっちのは試すのが怖いから与えちゃダメってことになってるって言ってたよね。

 貴重な巫女をそんな事で壊すわけにはいかないでしょうから当然かなぁ」

「ああ、そうね」

「ということで、今度、わたしが毒見役になってみるよ。 こっちのなんか美味しそうなやつ」

「なんかずるいけど、お願いします。 神殿内で探してみて」

 今日から、ふみちゃんには神殿内での情報収集をお願いしている。

 カラナさんに協力してもらって、わたしとは別なスケジュールで可能な範囲でいろいろな人の話を聞いてもらう。

 そうすれば、地球に居る時に相談できる。時間効率が良いはず。


 そして、今日は、風の聖騎士様との面談が設定されてます。 相手からの申し出だそうです。

 風の聖騎士様は、塔に私室を持っておられて、塔自身は神殿の角の三階から上の階になるとのこと。

 早々にカラナさんからお呼びが掛かり、私室前まで案内されました。

「ランデット様、巫女様をご案内いたしました」

 カラナさんは声掛けと同時に、どうぞと手で合図された。そして、下がって行った。 自分で扉を開けて入るのね。

「こんにちは~」

 と扉を開けて挨拶したとたん、”っ!!”まず驚いた。

「あれ、颯矢さん?」

「ああ、そうか聞いてないのか……」

「わたし聞いて無い?ですよね? 颯矢さんが聖騎士だったなんて……」

「そうじゃなくてね。 そうやは……いやランディルは弟なんだ」

 ん?弟?、そして口調とか別人って別人だ。

「えっ、あっ、弟、なるほど、そうなんですね」

 そっくりだけど、確かに雰囲気も全然違うかも。っていうか、髪の色が緑っぽい。最初に気付け自分。

「私の名はランデット。 紛らわしくてすまない。

 弟は、将来、地球に駐在する候補なので、今後も仲良くしてやってくれると、わたしも安心です」

「そうなんですか、ずっと地球に居るのですね」

 一瞬なぜか良かったと思ったけど、たぶん別に他意は無いはず。

「今回の件が落ち着けば、一旦こちらに戻ると思うけどね」

「なるほど」

 そうか、巫女探しが目的だったのよね、駐在員の交代がいつになるかとか、今聞いてもしょうがないでしょう。

「さて、早速ですが、巫女様、あなたは帰った方がいい、そして忘れることをお勧めする」

「え? な、なんでです?」

 はい~? どういうこと? 今日って何の面談? そして、いきなりそういう……。

「今の国王も神殿長も官僚達も、戦争を少し軽視していると思えている。

 五百年、危機感も無く続いてきた歴史。

 突然、古の敵が攻めてきた。 過去の結果が事実だと決めて、負けると考えていない。

 しかも、彼らの楽観視を絵にかいた様な作戦を計画している。

 ガンドレル単騎に敵を殲滅させ、あなたの協力を得て門を閉じるという作戦をね。

 古の聖騎士が偶然この時代に居たこと、そしてあなたが簡単に見つかったこと、どんどん彼らは浮足立っている」

「それでは、だめなんです? 古の聖騎士様の強さはお聞きしました」

「あなたに与えられた情報からは、その作戦の方がしっくりくるよね。

 先日、我ら聖騎士有志で会合を持ったのです。

 敵は、強い。 それを絶対として想定しました。

 一つ、五百年、どの様な進歩をしているか想像できない。 封印神殿から姿を見せたのは、勝算がついたからだ。

 我々は五百年の間ほとんど進歩していない。 それどころか、戦う力は恐らく下がっている。本当なら、それで良いのだが。

 二つ、敵は封印の神殿を出てくる前に、奥に穴を掘って居る。 つまり、山脈のどこかに既に拠点がある。 どこかに潜伏しているかもしれない。

 わざわざ封印神殿を作って門を見えなくした過去の間違いだが、実際仇となった。

 三つ、門は敵が意図的に開けた。 聖騎士の力によって閉じられる事実を知った。ゆえにその逆を見つけた。

 ……古のガンドレルは想像を絶する強さだ。 敵の想定外はそれのみだろう。

 最初にぶつけて、スタミナ切れの弱点を知られた時、こちらに打つ手はない。

 恥ずかしながら、我ら聖騎士は聖力により強化されようとも所詮強い兵士でしかない。

 このままでは負けるのだ。

 君がもし帰れば、閉じる事ができない門の警戒を続けるしかない、であればいきなりのガンドレル投入は無い、膠着状態を作れれば、こちらもなんとか敵を調べ対応できるかもしれない。

 まずは、今できる事として、秘密裏に隣国に援軍をお願いしに氷が行っている。

 ただ、それも、もう遅いかもしれない、山脈の向こうに出口が造られていたならば、隣国方面にも手を打っている可能性がある」

「そんな……」

「納得していただけるだけの確定情報をお見せできなくて申し訳ありませんが、よく考えて見て欲しい、関係無いどころか他星の件で若い命を危険にさらす事は無い。

 我々が造反している様に聞こえるかも知れないが、氷の帰還を持って王達を説得するつもりだ。その上で王の判断を仰ぐが、君の様な者を危険にさらすのは承諾しかねるのだ。

 ただ、時間はそれほど無いかもしれない、次の動きが門の開く二カ月周期を信じるわけにもいかないのだ」

「あの? ここも、この神殿も危険なのでしょうか?」

「そう思っておいた方がいい、聖騎士が数人常駐しているから外からの攻撃には対処できるが、それ以外はわからない」

「そうなのですね」

「わたし一人の話で決めかねるのであれば、炎か氷とお話しなさい。

 もし、それでも巫女を続けると決められたら、またお会いしましょう。

 重ねて申し上げるが、わたしは辞退していただきたいと思っています。

 では、お戻りください」

「ありがとうございました。 よく考えてみます」


 風の聖騎士様の執務室から戻る廊下、言われた事を考えながら歩いていた。

 その時、急に神殿内が騒がしくなった。

 廊下の先の丁字路を、誰かを担架で運んで行く姿が見えた。

 怪我人だろうか?

 ざわざわとする中で、氷の聖騎士様と聞こえた気がする。

 さっき、隣国に行ってるって聞いたのを思い出す。 それも敵が先手を打ってるかもとも。

「危ないっ」

 そう聞こえた時、わたしは誰かに押し倒されていた。

「痛っ」

 頭をちょっとぶつけた。 で、重い、え? 颯矢さん?

「そうやさん?」

「……動く……な……」

 颯矢さんは、そう言うと、わたしに覆いかぶさったまま動かなくなった。

「え? 颯矢さん、どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

 返事は無く、代わりに何か落ちた。 手を伸ばして触れる。 え? 血? なんで? かぶさった体の横から血が垂れ落ちていたのだ。

「そうやさん、そうやさん…あ」

 思わずゆすって気が付いた、血が出てるんだ、今は安静の方がいいのか。 でも、どうすれば……。

「巫女、殺す」

 え? 誰? そうなのね、わたしが狙われた。殺すって、殺されるの……わたし……。

「……どうして?」

 ああ、もちろん巫女だからよね。 逃げないと……いや、狙われてるのはわたし、なら、颯矢さんだけでも助けたい。

 でも、近づいて来るのがわかる。 いや、止まった? でも、どこに居るのか見えない~。 

「逃げ……ろ」

 颯矢さんが両手をついて体を起こそうとしていたのだ。 わたしを自由にするために。

「生きてたか、もう一回殺してやろう、巫女と一緒にな」

 近づく足音が早い、

「颯矢さん、どいてっ、お願い、あなたも殺される」

 その時、床にくっついてるからか別な人の走ってくる足音が聞こえる……誰か来てくれた。

「巫女様っ、大丈夫ですか?」

 聞こえたその声はガンドレルさんだ。 ああ、声、可愛いなぁ。うわ、気絶しそうだった。

「新手か……」

「わたしは平気です、そ、らんでぃるさんが……たすけて……」

 でも、再起動したように力が湧いた気がする。声が出せる。

 何かぼとぼとと落ちるような音と小さな爆発みたいな音が聞こえた気がする。

「暴れていた族は倒した」

 この瞬間、ガンドレルさんにも襲い掛かったみたいで、その殺気で古の聖騎士に変わったらしいです。そして瞬殺。

 さらに、黒の鎧の美しい青い輝きは消え、ただ漆黒に変わっていたのもわたしは知りません。

 そして、盾をわたしの頭の横に置く。

「族?ってやっぱり敵なの?」

 どうしてだろう、少し冷静に声が出た。 たぶん直前まで死を覚悟してたのに。

 言いながら視線を動かして見ると、置かれた盾のせいで位置的に見えないのかもしれないけど、わずかに見える靴の感じで、それがその敵だとわかる。

 そして、形も大きさも人間のそれと同じだ。人が死んだのだ。 自分が無事だから思えるのかもしれないが、恐怖に同情が混ざる。

「そうだ。

 そいつは急所は避けた様だから死にはせん。

 お前が人を呼べ、俺は逃げた気配を追う」

 そいつとは颯矢さんのことよね? でも、見た目少女のはずなのに、この事態に動揺も無くたんたんと告げられた。 でも、口調は違いすぎる。

「え、俺?って? あ、古のって今はいいや」

 でも、ガンドレルさんは、もう居なかった。 急ぐためなのか盾は残していったけど。

「だれか、誰か居ませんか~。 誰か、助けてくださ~い。

 ランディルさんが負傷されています 誰か、誰か~」

 とにかく出せる限界の大声で叫ぶ様に人を呼ぶ、すると、既にこの近辺に居たのか、すぐに騎士たちが駆け付けてくれた。

「巫女様っ、ご無事でしょうか?」

 颯矢さんを持ち上げながら、声をかけてくれている。さっき起き上がろうとしてた颯矢さんは、ガンドレルさんが来た時に、またわたしを抑え込んでました。ちょっと苦しいけど……。

「わたしは、いいですからランディルさんを、早くっ、お願い……します」

「ご安心ください。 ランディル殿を先に治癒室へお連れします」

 騎士さんの言う通り、数人がかりで運んでくれているのが見えた。

「そうですか、ありがとございます」

 担架を持ってきた方達と合流したところも見られて、自分の状態の確認を忘れていたのを思い出した。

 頭痛い、倒れた時に手で庇われていたけど、少しダメージがあったのね。ということは、床との間に入った手も痛かったろうなぁ。

「どこかお怪我はありますか?」

 騎士さんに聞かれた。

「怪我は無いですけど、ちょっとだけ後頭部が痛いです」

「では、念のため治癒室へ向かいましょう」

「はい。 あ、自分で歩けますので、案内してください。

 それから、わたしの友人は大丈夫でしょうか?」

 無事でいて、ふみちゃん!!

「巫女様の控室におられましたので、大丈夫だと思われます。

 ミドラリウス様が戻られた際に、警戒体勢としてすぐに騎士数名が向かったはずですので、部屋からも出られていないでしょう」

 そうだった、氷の聖騎士様に何かあったのかもしれないのだ。

「ありがとうございます」

 とりあえず、ふみちゃんは大丈夫そうだ。

「巫女様っ」

 ランデットさんが目の前に現れた。

「ランデットさん、ランディルさんが」

「巫女様はご無事ですか?」

「わたしはランディルさんのおかげで……おかげ……で」

 急に涙があふれてきた。 そうだ、彼はわたしをかばってくれたのだ。 あんなに血が出るほどの傷を受けて……。

「どうかされましたか?」

「いえ、大丈夫……です」

 あれ、急に震えが……力も抜けて、そのままへたり込むところをランデットさんに支えられた。

 これが、恐怖なのだろうと実感した。 所詮、ただの高校生だ。

「治癒室へ急ぎましょう。 担架に乗ってください」

「お願いします」

 自分で歩けそうだったから断ったけど、騎士さんたちは担架を持って付いてきてくれていたのだ。

 なお、治癒室へ向かう途中、カラナさんが駆け付けてくれて、ふみちゃんの無事を教えてくれた。 そして、お言葉に甘えて、わたしの状態をふみちゃんに伝えてくれる様にお願いした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ