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結星門の巫女  作者: 安田座


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5:神殿の外へ

 

 巫女二日目、今日は、颯矢さんが受付の前までついて来てくれたけど、すぐどこかへ行ってしまった、用事があるらしい。 まぁ基本的にこれからはそうなるみたいですけどね。帰りにはまたここで合流して送っていただくみたいな。

 で、今は控室で衣装に着替えて待ってます。もちろん祈心装備の方よ。

 受付のカラナさんから、今日は雷の聖騎士様との面会予定で、使者が迎えに来てくれると告げられたので、それを待っているのだ。

 そうこうしていると、コンコンコンとドアノッカーの音が響く、そしてカラナさんの声が聞こえる。

「高橋様、アーク様がお迎えに参られました」

 あーくさま?、なんか聞いたことある様な……。

「あ、はい、すぐに参ります」

 返事と同時にさっと立って速足でドアに向かう、観音開きの片方を開けて部屋を出た。

 目の前に、カラナさん、そしてその横に鎧姿じゃない男性が立っていた。

 今まで見た煌びやかな人々と全く違う、普通というか普通、白Tシャツに七分ズボンです。

 ただ、身長は百七十くらいだろうかあまり大きく感じないけど、筋肉の付き方はTシャツの張りでよくわかる。

 肌は日焼けしてるのか色はかなり濃いほう。 健康的な一般人みたいな?

 顔はもちろん良いのです。十代って感じもいい。

 こういう人も居るわよね、この星の人全員ある意味キラキラしてると無意識に思ってたかも。

 いいなぁ、こういう人。

「土の聖騎士アーク様です。

 これから雷の聖騎士ダリアン様の元へご案内していただけるそうです」

 カラナさんが紹介してくれた。 へ? 聖騎士? 騎士? ええと……なんかごめんなさい。

「あ、ええと、高橋舞子です。

 お手数おかけしますがよろしくお願いします」

「よろしくな、アークでいいぞ」

「は、はい、あーくさま。 わたしはまいこと呼び捨ててください」

「なに緊張してんだ、あの影っこにもビビらないって聞いたぞ」

「へ? 影っこ?

 ガンドレルさんですか?

 あんなに大人しくて可愛いのに?」

 影っこって言い方可愛すぎるじゃない、ビビるって可愛さにかな?

「いや、そうかそうだな、戦わないもんな……。

 まぁ、たいへん失礼した、今のは忘れてくれ」

「は……い?」

 戦わないって、試合しないみたいな事かな。

「じゃ、行こうか」

「はい?」

「これから外へ行くけど、まだ出たことないんだよね?」

「はい」

「祈心装備は絶対に脱がないでね」

「はい、絶対脱ぎません」

 そうか、ここから離れると気分が悪くなるってやつね。

 でも、脱ぐどころかもっと着たいくらいですよ。 さすがに暑いからやらないけど。


 そして、厩舎へ移動してきました。

 馬がたくさん居ます。厩舎ですもんね。馬は地球の馬とほとんど変わらない感じ、ちょっと大きいかなぁ、実物の馬も見たこと無いからはっきりとはわからないのですが。

 あ、見えている外は昼です。

 颯矢さんに聞いてたけど、時差は十二時間くらい、季節は同じ夏だそうです。

 神殿内は空調的な何かが効いてるのか、特に暑いって感じでは無かったけど、ここは少し暑いかも。

「馬には乗れる?」

「乗った事無いです」

 実物も見たことすら無いですし。

「そうか、じゃ、俺の前に乗って行くでもいい?」

「あ、お願いできるのであれば」

「よし、じゃ、ちょっと待ってね」

 そういうと、奥に走って行ってすぐに走って戻ってきた。手には鞍?を持ってて、そして革のベストみたいのを着てる。

 その鞍を横に居た馬に取りつける。前後に座る形があるけど紐が何本か遊んでる。

 アークさんは、鞍を取りつけ終わったのか、さっと後ろ側に飛び乗る。 そして手を差しだす。

「ええと、掴んでくれる?」

「あ、すいません。 あっ」

 その手を掴むと一気に引き上げられて鞍に横座りしていた。 引かれた感触もほとんど無かった、なんか宙に浮く感じだったし。

 そして、鞍から皮ベルトみたいなのを引き出してさっきの紐を使って皮ベルトと自分のベストとを結ぶと、わたしも取り込まれて居た。

 このかっこって、抱っこ紐みたいじゃ、それでも絶対落ちない安心感とともに恥ずかしさを得た。

「出発するけど、怖かったら言ってね」

「はい」

 アークさんは確認してから、馬を歩きださせた。

 緩やかに揺れながら、抱っこ紐の緩みが無いかとか確認している。

「早いのって平気?」

「どうでしょう? たぶんある程度なら」

 このしっかりした固定状態なら、絶対大丈夫な気がする。 ジェットコースターは好きだし。

「そうか、じゃ、徐々に早くしていこう。

 馬に慣れてくれると嬉しい」

 嬉しそうな笑顔でそういうと手綱を引いた。で、その笑顔、なんかすごい安心感。

「はい、頑張ります」

 笑顔で答えていた。

 そして人が走るくらいの速さで進む。

 神殿の周りは森林で囲まれていてそこを抜ける道は舗装もされていない、標識も無い、もちろん信号機も無い、そうか神殿をお城みたいだからと思ってたけど、そういう世界なんだ。

 宇宙人って言われて、最初は超文明を少し想像して、お城の中でそれは無さそうだなと思った。そして今、馬が移動手段の世界に来たのだと実感した。

 森林を抜けると、空が広がった。 青い。 雲も白い。 神殿が小高い丘の上に建っていたのだ。

 そして、地平線の右半分には海が見える。その海沿いから白い建物がたくさん並んで見えた。 エーゲ海みたい、行ったことないけど。

 海から離れた左側は、畑の緑の部分とさらに森林の部分がグラデーションの様に広がっている。

「何これ、きれい、すごい」

「ああ、美しいよな、俺は大好きだよこの景色」

 そして、少しスピードが上がる。 海風が混ざって、気持ちがいい。

 たぶん、紫外線もこの衣装が防いでくれるだろう。 と、日焼け止めを持ってきて無い事を後悔しない言い訳をした。

「ありがとうございます」

 嬉しさでついお礼を言ってしまった。

 速度が上がった。 違う、そうじゃな~い。


 連れて行かれたのは、畑がたくさん並んでいるところで、そこにあるログハウスでした。二階建てでそれなりに大きいです。

「着きましたよ。 お疲れ様。

 ちょっと待ってね」

 アーク様はそう言って抱っこ紐をささっと外すと自分の片足を前方から回してそのまま飛び降りた。わたしをお姫様抱っこの状態で。

「ありがとうございまし……わっ」

 お礼を言ってる途中で、つい変な声が出ました。

「ごめん、どこか痛かったか?」

 心配そうな顔で足元に視線を向けながらゆっくりと立たせてくれました。

 いや、そうじゃなくて驚いただけなんですけどね。

「大丈夫です。 それから乗せてきていただいてありがとうございました」

 お礼を言い直す。

 次は大丈夫なはず。 帰りもたぶん同じ方法だろうと想像した。

「お安い御用ですし、こちらの都合で来てもらったので」

「おい、アーク、紹介が先だろう、俺に挨拶をするタイミングをくれ」

 会話を割って入る様に大きな太い声が聞こえた。

「あ、師匠すいません。 そっちの人が雷の人ね」

 ものすごく適当に紹介された、聖騎士様しかも主の方。 四十代くらいだろうかイケオジだ。 髪が紫なのはちょい悪、ってことは無いよね。

 そして、プロレスラーってこんな感じかなってイメージの体躯です。

「雷の聖騎士ダリアンと申します。

 この度は我が星のためのお力添え、ただただ感謝申し上げます」

 片膝をついて丁寧に挨拶をいただいた。 ちなみに、頭の位置はわたしとあまり変わらない。

「高橋舞子です。

 こちらこそ、出来る限り努力させていただきます」

 ああ、また緊張してきた。

 その時、ダリアンさまの後ろからチョロチョロと小さな陰が飛び出した。 いや子供達だ。五人も。大きな体に隠れてて見えなかった。

 ダリアンさまの前にならんで、全員で笑顔で「こんにちは」と言ってからお辞儀してくれた。

「こんにちは、良い子たちだ~」

 思わず微笑み返す。

「お前ら、向こうで遊んでろ、大事な話をするからな」

 ダリアンさまが、草原の方を指さして言う。

 子供達は「は~い」と答えながら掛け出す。

「いってらっしゃい、気を付けてねぇ」

 わたしは見送る。

「ふぅ、じゃ、その辺に適当に座ってくれ」

 大きな木が三本並んで立ち、その陰に、丸太を半分にしたテーブルとか、木の切り株とか、良い感じの大きさの石とかが並んでいる。

「は、はい」

 とりあえず、近くの石に腰掛けた。 椅子用の形にしてあるのだろう特に不具合は無いです。

 そして、アークさんがすぐ横に石を移動させて来て座った。

「お前こっち側じゃないのか?」

「いいじゃないですか、今日は師匠の番ですよ。

 俺は別の日にちゃんと時間もらいたいです」

「いっちょ前の事言いやがって」

「さっさと始めなさいって、時間無いんだぞ」

「まぁ、でも、わしはもう嬢ちゃんを気に入ったから、特に何も無いぞ」

 もう、面接合格みたいな?

「では、聞いてもいいですか?」

「お、どうぞ、なんでも聞いてやって」

 なぜかアークさんが答える。

「ここで、畑仕事をされているんですか?」

「そうだ。 命令がないときはこっちに居る。 あと、海の方にも居る」

「漁師もされてるのでしょうか?」

「木こりもやるし、家も建てる。 何か腕力が必要な作業があれば飛んで行って手伝うぞ」

「すごいです」

「皆の役に立ってこその聖騎士だからな」

 その見せる笑顔は濃いけど、とてもすがすがしく見えました。

「ここでは何を作られてるのでしょうか?」

 なんか社会見学に来た小学生みたいな質問かも。

「野菜だが、地球にもあるか?」

「ありますよ。 木もありますし魚もいます。

 でも、わたしは良く知らないのです。 お店で売ってるのしか見たことないから」

「そうか、よし、そいつの時は魚でも捕りに行くかい?」

 そいつとはアークさんの事かな?

「おい師匠、勝手に決めるなよ、でも、どうする?」

 アークさんが、キラキラした目でこちらに振る。 魚捕り好きなんだぁ。

「行きたいです。見てみたい」

 そして海かぁ、遠目に見てもすごく綺麗だった。

「じゃ、そうしよう、まぁ天気次第だけどね」

 アークさんも嬉しそうだ。 海のイメージが似合いすぎる。

「なるほど」

 そういえばあまり雨の日のイメージ無かったけど、今って少ない季節なのだろうか。

「本当なら、飯でも食っていってもらいたいが、まだ許可が出てないんでな。

 なんのもてなしもできずに申し訳ない」

 その後、時間まで畑を案内してもらい、ジャガイモっぽいのとかカボチャっぽいのとかニンジンっぽいのとかあって妙に感動した。

 帰りは、当然抱っこ紐での乗馬だった。 そして最高速度まで出されて意識が飛びそうでした。




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