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結星門の巫女  作者: 安田座


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22/26

22:田中さんの話を聞く

 


 わたしが、これまでで少しだけ疑問に思ってたのの一つが風の聖殿の名称についてです。

 風の聖騎士様が主従の従の方と聞いてましたし、単純に音の聖殿じゃないんだなって……。

 そしたら、最近聞いたのが実際は風の方が主で音の方が従なのだそうです。

 それは、なんと音の聖騎士ミュークラウン様が王族というか、音の聖騎士は代々王族から選ばれる、ということなので、建前的な感じでそうなってるとのことでした。

 それで、そもそも主従とかあんまし使わないので問題無いのだそうです。なるほどです。というか、ほんとは緩いのよねこの星。

 で、昨日の未明、風の聖殿です。

 先日、颯矢さんが入ってからどのくらい経ったかわからないけど、よろよろと出てきました。

 そして倒れました。 え?大丈夫なの。

 でも、しばらくそのまま倒れていたのに、ふらりと起き上がってすぐに走り始めます。 大丈夫だったみたい?




 今日は、早めに登校しました。

 で、田中さんを待っていますけど、そういえばあの人いつもどのくらいの時間に来るんだっけ。

 そして、五分前の予鈴が鳴る。

「いつもこのくらいじゃない?」

 ちょっと前に来たふみちゃんが最初から知ってた様に言う。

「そうかも?」

「ほら、来たよ」

 ふみちゃんが後ろ側の入口の方を指さす。

「はよ~っす」

 と、田中さんが適当に皆に挨拶しながら入ってくる。

 早く来たわたしの意気込みを返して~、あぁせめて三文くれ~、と心でのたうち回る。

 そして、田中さんが目の前に来た。ん?

「今日の放課後お時間くださいね。お二人さん」

 田中さんは、わたしの苦悶などお構い無し(そりゃそうだけど)に声を掛けて来た。

「了解」

 ふみちゃんは即答。敬礼は要らないでしょ。

「あ、はい」

 話はしたかったので、とりあえず放課後でもいいかぁ。 あ、もしかしてお寿司か?リベンジか?、そうならそう言うかな、では、きっとふみちゃん関連だな。

「じゃ、俺、今日は放課後まで別件なんで、後でね」

 そう言うとさっさと教室を出て行った。めずらしくあっさりなのも気になる。

 なんか色々起こってそうで嫌だなぁ。皆さん無事で居てください。

 だから、出来ることは無いかと考えてみた。 やっぱり、フミさんに話を聞くことかな、それができれば役に立つんだけどなぁ。昼休みにまた試してみよう。




 昼休み。

「そういえば、その手首のは何?」

 ふみちゃんの手首のやつ、関係無いけど気になったので聞いてみた。今までしてなかったけど、今朝から付けてるのだ。

 いつもしてなかったと思うけど、厚めのリストバンドだ。とてもおしゃれ目的には見えないけど。

「これか? ほれ」

 ふみちゃんは外してわたしに渡してくれたって、重っ。

「おもっ」

「パワーリストって言うんだよ。

 足首にもパワーアンクル付けてるよ」

 足を少し上げてアピールしてくれた。

「なんで?」

「パワーアップの為に決まってるじゃん」

「なんで?」

「だって、万倍よ?

 わたしの力が二倍になったら、戦闘力二万じゃん」

 言わんとしてることはわかりました。 適当なんだろうけど、二倍かぁ、そして戦闘力って何?

「おお、そうなんだぁ。 がんばれ」

 でも、頑張ってるなぁ、その前向きさは本当に感心します。だから二万もありかも。

「いつか人前でズシャって外す日を夢見てるのさ」

 いつものどや顔だ。

 でも、それはよくわかんない。 しかも、ふみちゃん状態でやるタイミングが想像できない。

「そうなんだぁ。

 ところで、ええと中の人とのお話に挑戦してみてもいい?」

 適当に流しつつ本題。

「勝手にやって怒られない?」

「え?」

「地球的には危険人物じゃないの?」

「あ、そうかも?」

 確かに、ものすごくそうかも?

「実は、私、いつ狙撃されるかと心配してるのよ」

「え?」

「ってのは嘘だけどね。 たぶん監視は付いてる」

 ふみちゃんはそれっぽく視線を窓の外へ向けながら言う。

「はぁ」

 いや、そうかもだけどさ。

「それでも、責任持てないから、ちゃんとそれっぽい人の許可を貰っておきたいなと。

 ただ、鈴木先生からも注意されてないし、気にしなくてもいいかもしれんけどね。

 たぶん、向こうの世界ならどんどんやって見てって感じだけどさ」

 おっしゃる通りだぁ。 何も言われて無いから大丈夫だと勝手に思い込んでた。

「なるほど~。

 じゃ、それも放課後相談してみよう」

「まぁね。 試したい理由はわかるから、許可があれば協力は惜しまないよ」

「ありがとう」

 古の神聖騎士の件、なんとしても進展させねば。



 神殿から一キロくらい離れた森の中。

「ランディルっ。 やっと追いついたぜ」

 アークさんが颯矢さんに声をかけます。 

「アークか」

 颯矢さんが振り向いて答えます。

「敵は?」

「一人、逃がした。

 もう一人は、向こうの方で自決した」

 アーク様の左後方を指さして答えます。

「そうか、で、あんたランディル本人か?」

「本人ですよ。

 聞きたいことはわかるよ。

 神殿に戻ってから説明させてくれ」

「よかった。

 相変わらずだなぁ。 そして、よかった」

 二つ目のよかったは無事だった事だろうか。

「戻ろう。

 神殿が心配だ」

「ああ、ランデット様もこっちに向かって来てるはずだけど、あの人も負傷してるからお前が拾って来てくれ。

 俺は先に戻って報告しておく」

「了解した」

「助かったよ、ありがとう」

 アーク様はそう告げてから走り始めました。



 放課後、職員室の隣の部屋。

 わたしとふみちゃん、田中さんと鈴木先生とで向かい合って座ってます。 お寿司は関係無い事だけは確かだ。

「わたしも相談したいことがあるのですけど、後で時間いただいてもいいですか?」

 とりあえず切り出しておく。

「先でも良いですけど、長いですか?」

 田中さん、お仕事モードなのか口調が真面目だ。

「要件は短いかな」

「では、それだけ聞いておきましょう」

「向こうに行きたいです。

 それと、ふみちゃんの中の人と話をしたいのですけど許可とか要りますか?」

「なるほど、どっちもこちらの話に絡むので、後で足らなければ追加で聞いてください」

「そうなんだ。 では、どぞ」

「そうですね、では中の人の方から。

 あの力を見たので分ると思いますけど、ふみさんには行動制限が掛かる事になりました。

 行動可能なのは、自宅、学校、神社とそれらの経路のみとなります」

「ああ、やっぱしそうなのね。 私見て無いけどね。 聞いたけど」

 ふみちゃんは本当に自覚が無いらしい。

「落ちて来る複数の瓦を狙って壊せる極小雷ですからね」

「世界征服できるレベルかな?」

 ふみちゃんは、田中さんの説明が気に入ったのか嬉しそうに聞く。

 でも、ふみちゃん、それは悪者じゃ。

「スタミナ切れしないならできるかもしれませんね」

「そうだった」

「我々の見立てでは、向こうの世界は、同じ宇宙じゃなくて別次元の宇宙、そして物理法則が違うのでは無いかと。

 説明できるほど誰も理解できていませんが、高次元の存在、高次元って言ってもよくわからん次元で、こっちの宇宙よりは上って事です。

 聖力っていう力が存在するらしいので、それが関係していそうです。

 前に、わたしの装備を壊されたの覚えていますか?」

「ああ、ガンドレルちゃんじゃなくってマイサ様がやったやつですね」

「ええ。

 あの時のビデオがこれです」

 田中さんがスマホの画面をわたしたちに見せてくれた。

 田中さんの目の位置から撮った感じだ。

 ガンドレルちゃんの姿が消えて、装甲が破壊された後にはガンドレルちゃんの姿が目の前に居た。

「この破壊された瞬間ってまだ彼女は見えて無いんですよ」

「ほう」

「そもそもあんな細い剣で砕ける物理法則は地球には無いんです。 厚さ十センチの超硬度合金って言ってもピンと来ないかもしれませんが」

「ほう?」

「あの方は影の聖騎士と聞きました。

 たぶん聖力とやらが関係して影の様に動き、武器に次元の違う強度を与え、筋力では無いパワーも加わっている」

「便利すぎるっ」

 思わず口に出ちゃった。

「我々の世界では物理的にありえないでしょ?

 武道とかの”気”が近いのかもしれませんが。それさえ証明できてないかと。

 あと霊的な感じも加わってるかもしれません。ええと、幽霊みたいな。

 実際、あきらかな魂の憑依を見せていただいたわけですし。

 幽子とかがもっと具現化してるのかもしれませんが、我々の技術では分析も不可能でしょうね」

「はぁ。

 それがしたい話なんです?」

「あ、つまらなかったですね。

 我々とは違うというのと、我々が戦力を持って協力しない理由の説明の前情報です。

 あと、少し付け加えます。

 向こうの世界よりこちらの世界の方が聖力の具現化は強そうです。その分消耗も激しいと予想されますが。

 どちらかと言うと、向こうの世界では押さえられている。

 そして、その弱体は我々の兵器にも作用する。爆弾が花火程度になるかもしれません。

 だから我々はあの装備を造った。 門をくぐれるサイズで

 あちらの大気の影響を受けない様に内部で発生させたエネルギーにより強度の高い物質で物理的に攻撃できるものです。

 爆発物とかでは無く、ある意味固い塊をぶつけるだけですけどね。

 それでも、聖力により強化された鎧、いや素肌さえ崩せないでしょう。

 一般人はいくらでも殺せますが、戦士は倒せない上にそれを抑えるすべもない。

 これはたとえにしたく無いですが、核兵器でもむりと想定されています。

 戦いになりません。

 まぁ、向こうが万が一攻めて来てもこちらの世界では物量で対応しますので、やはり戦いになりません。

 ということで、今のところ敵勢力はあちらの次元の人みたいなので、我々としては、”こちらに来たら対処する”以外の選択肢はありません」

「もしかして、前に聞いた美男美女ばっかしだからってのは、関係無いのです?」

「無いとはいいませんが、そうです。

 あの時は、あまり理解が必要なかったですから、あなたの認識に乗っかりました」

「がふっ」

「そして、あの時は、支援依頼が来たら行きますって言いましたけど、さっき説明したような感じです」

「え?」

 地球の軍を頼りに出来ないって、けっこう怖いかも。

「とりあえず、盾には成れるようには努力しますので」

「ありがとうございます」

「あと、こちらの世界では対処可能なので、古の神聖騎士を呼ぶテストは好きに行ってください」

「はい」

 よかった、やっても良いんだ~。

「そして、我々が役立たずなため、出来れば向こうの世界には行って欲しく無いのですが、本件の解決にはあなたが必須の様です。

 ですので、盾としてわたしと鈴木が同行します」

「あ…………ああ、そういう説明だったのね」

「そうです」

「すいません。

 どうも、真面目な話って、正面から聞けないみたいです」

「その感じわかりますよ。 だからお気になさらず」

 鈴木先生がフォローしてくれた。

「じゃぁ、みんな行こうぜ、世界の平和を取り戻そう」

 ふみちゃんが拳を握って立ち上がる。どうした?

「ええと?」

 田中さんを見る。

「いいですよ。 行きましょう」

「行きます」

 わたしも答えて立ち上がる。



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