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結星門の巫女  作者: 安田座


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15/26

15:古の神聖騎士

 

 敵星側結星門封印神殿前、敵設置陣内での会話。

「先日ご指示のあった陽動作戦についてでございます。

 まず、近くにある砦を落としませぬか?

 先ほど砦の聖騎士とやらが留守という報告が入りました」

 参謀的な役割の者だろうか。

「ほう。

 ……黒戦士は何人残っておる?」

「はい、戦士脈……こちらの呼び方では聖殿というらしいですが、その監視に四名派遣いたしましたので待機は二名です」

「確かに、黒戦士二名も居れば、雑兵のみの砦程度は落とせよう。

 だが、こちらも戦力を減らす可能性があるな。

 次に門の開くまでは補充の利かぬ現在、焦りたくは無いが…………白戦士一人居れば十分とも言えるか」

「白戦士ダグラサ殿自身は出陣したいとおっしゃっておりますが、なんとか待機をお願いしております。

 とはいえ、あちらからは攻めて来ないものと推察いたします」

「それで、砦を落とした後、どうする?」

「そこを拠点にして王城に一度攻撃をしかけておきたいと思います。

 陽動としては最適かと」

「時間経過に見合って戦乱を拡げて見せないと、こちらの戦力不足を覚られる、か……そちらも任せよう」

「海に水獣を数体放っておりますので、そろそろ騒動も起こり始めている頃とも思います。

 討伐に城から兵が赴かはわかりませんが、町の方から城への応援は遅れるでしょう」

「よし、その作戦、進めるがいい」

「ははっ。

 念のため隣国に向けた黒戦士を数名呼び戻しておきます」




 炎の聖殿、古の神聖騎士降霊の儀式中。

「貴様の相手はわたしがする。

 お二人は、今のうちに」

 侵入してきた敵と鍔迫り合いをしているミドラリウス様は、疲労回復中だったのに、それを感じさせない気迫です。

 その時、敵に横から颯矢さんが斬りかかりました。でも、敵はそれをかわして後方へ飛びのきました。

「腐っても聖騎士とやらか、おまけも付くとそれなりにやっかいか」

 敵は仕掛けるタイミングを計る様に愚痴っぽく言います。

「氷で足止めできないのか?」

 颯矢さんがミドラリウス様の横に並んで小声で聞きます。

「今は、空っぽなんだ」

「なるほどな。

 じゃぁ、俺が動くから、あんたはそこを動くな」

「了解した」

 ミドラリウス様の返事を聞いて颯矢さんが飛び出して正面から斬り込む。

「弱いほうが来たか」

 敵が、颯矢さんが間合いに入ったところで横なぎに剣を振るった。

 突風の様な風とともに颯矢さんの姿が消えた。

「こっちか」

 敵がそういって後ろを向く、そこに颯矢さんが現れると二人の剣がぶつかった。

 敵の剣に押され颯矢さんが吹き飛ばされた。 

 敵が、颯矢さんへの追い打ちに迫ろうとした時、敵の右足は床に張り付いていた。 そこにわずかな氷が見える。

「もう、何もできません」

 ミドラリウス様は膝をついていた。 今にも倒れそう。

「ふむ、氷の力か」

 敵はそう言うと力を込めて右足を剥がした。

 そのまま、颯矢さんに向かうのでは無く、ミドラリウス様の横を回り込んで、アスカール様に斬りかかる。

 瞬間、敵が壁まで吹き飛ばされてぶつかった。

 アスカール様が大剣を振るったのだ、斬るでは無く刃の側面でたたいた。

 一瞬で近づくと起き上がる敵の喉元に剣を突き付けた、瞬間敵の頭は爆発した。

「見るな」

 そして、それがわたしに見えない様に颯矢さんが抱きしめてくれていました。

「自決したか……こいつは敵で良かったのか?」

 アスカール様が聞く。 マイサ様に似た感じのあらっぽい口調。

 そして、その手にある大剣の刃は炎が燃えているかの様に赤く輝いているのがわかる。あきらかに違う色だ。

「そうですが、あなたはアスカール様でしょうか?」

 ミドラリウス様が聞く。 マイサ様みたいにやっぱり変わってるよね?

「アスカール? ああ、こいつの名前か。

 なかなか良い体をしている。気に入ったぜ。

 そして、俺はドレッド、マイサを倒しに来た」

 やっぱり変わるのね。 そして、倒すってどういうこと?

「炎の神聖騎士様でしょうか?」

 ミドラリウス様が聞き返す。 もう、そのはずですけど、聞くよね。

「そうだったが、今は知らん。

 マイサは、どこに居る?」

 そう言いながら、ミドラリウス様の方へ近づいた。

「ここには居りません」

 ミドラリウス様が答える。

「そうか、じゃ、またな」

 途端に大剣の輝きが消え、アスカール様はゆっくりと倒れた。

「あ、話を……」

 ミドラリウス様は言葉を途中で切ってアスカール様を支えた。

 そして、そのまま二人ともくず折れた。

「大丈夫ですか?」

 わたしは駆け寄る。

「少し任せる」

 敵の状態の確認をしていた颯矢さんは、そのまま外に出て行った。

「すみません」

 ミドラリウス様が体を起こそうとするので、わたしはあわてて支えた。

「大丈夫ですか?」

「ええ、体を起こすくらいですが」

「少し待っててくださいね」

 わたしは、控室に水と食器があったのを思い出したので、急いで取りに行く。


 水を汲んで戻ると、アスカール様も体を起こしていた。目が覚めた様です。もちろん本人です。

「申し訳ございません」

「ありがとう」

 ミドラリウス様とアスカール様にコップを渡す。

「ふぅ」

 わたしも息を吐いて座り込む。

「ランディルは?」

 アスカール様に聞かれた。

「外に出て行きました」

「そうか」

「でも、成功したようで何よりでございます」

 ミドラリウス様が思い出した様に喜んでいる。

「ああ、その様だ。

 だが、これはキツイな」

「おそらく、会話を含めて数十秒程度だったと思います」

 ミドラリウス様が見たことを話す。

「その程度で、ここまで疲労するのか、ガンドレルがしばらく起きられないのも頷ける」

 鍛えてるのはわかるけどあの体のサイズだものね。

「ところで、どうすれば出てきていただけるかわかりますか?」

 ミドラリウス様がアスカール様に聞く。

「さっぱりわからん、俺は対話できないからな。 ガンドレルと同じ方法を試してみたいが、今は無理だな」

「なるほど、では氷の神聖騎士の儀式はやめておきましょう、もし成功した場合、同時に中身が変わってしまったらやっかいそうです」

「そうだな。 ん? どんなやつだったんだ?

 もしかして、巫女様になにかしてしまったか?

 ああ、それも想定していなかったとは、申し訳ない」

 そういえば、マイサ様は……。

「……はい、ええと、特に巫女様に不埒は働いておりませんのでご安心を」

「何もありませんでしたよ」

「じゃ、ミドラリウスにか?」

 おい?ちょっと想像しちゃったじゃないですか……。

「まさか、そんな事もございません」

「そうか、じゃ、どうなったんだ?」

「マイサを倒す為に出て来たと言っていました。 そしてここには居ないと答えると消えました」

「どういうことだ?」

「はて? どうしましょうか」

「古の神聖騎士様って……あ、なんでもないです」

「どうぞ言ってください」

「いやぁ、変な人しか居ないのかなって……言っちゃった」

「ははは、同感ですよ。 でも、それでも、力が必要だと思います」

 ミドラリウス様とはずいぶん普通に会話できる様になったなぁと今更思ってしまった。

「あの、それなんですけど、わたしが今まで聞いた話だけだと、どれほどの敵なのかわからなくって……」

「そうですよね。

 我々がおろおろしてるのを見て、危機感は感じてはいらっしゃるのかな」

「言われるがままです。すいません」

「では、帰る体力が戻るまで少し話しましょうか」

「お願いします」


 ミドラリウス様が見て来た敵の状況を説明してくれました。

 国境の関所にある街は既に敵の手に落ちていて、そこをなんとか抜けて、隣国の砦に居る将軍と話をした。

 将軍によると、あっという間に街が占領され、派遣した軍は全滅、そうとうな死者が出た。

 その街が占領されたのは十日以上も前で、そこから近い港のある街も翌日には占領されており、この国への連絡路は断たれてしまった。

 なぜか、敵の動きはそこで止まったため、様子見をしつつ周辺国へ支援を要請している状況。

 敵は、まずはこの国を孤立させ落としてから他国へ侵攻を考えていると予想される。

 そして、敵の戦力に聖騎士らしきもの達が数名混ざっており、その力は一騎当千と聞かされた。

 自分も帰還時に街の様子を探って見たが、確かに聖騎士らしき者が居り、他の兵士の数も多く、奪還するにはそうとうの戦力が必要だと思えたと。

 なので、門の前で見えている陣の敵は、ごく一部であることが確認できた。

 やはり、以前に想定した様に敵は別な出入口を作っていたのだ。

 実際、どれほどの戦力が来ているのか不明な状態だ。

 それを、聖騎士たった八人と兵士達、しかも皆戦闘経験が無い、今攻められても勝ち目が見え無いのだ。 次の門が開いた時に膨らむ戦力にも抗えるはずも無い。

 マイサの強さに望みはあるかもしれないが、勝手に想定しただけの戦力なのだ。


「和平交渉とかできないんです?」

 できたらやってそうだけど、聞いてみる。

「その意思があれば、まずは、交渉があったでしょうね。

 やつらの目的は搾取のみだと思います。

 抗うか降伏しての隷属になります。

 ただ、まだ降伏勧告さえ無いのです。王城の陥落以降にあるかもしれませんが、関所の街の惨状を見るにまずは蹂躙されるでしょう」

 人的被害は無いって聞いてたけど、既に変わってるのね。

 確かに、抗うための力として古の神聖騎士様の力って必要なのも理解できる。

「アスカール様、動けますか?」

 ミドラリウス様はアスカール様の状態がある程度回復したと判断したのでしょう。

「大丈夫だ。 馬に乗るくらいはできるが、念のため巫女様は頼むな」

「わかりました。 では、帰りましょうか」

「はい、お願いします。 そして、毎度お手数をおかけします」

 帰り道は、ミドラリウス様の馬、もちろん抱っこ紐状態だった。




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