14:成功?
わたしはミドラリウス様と炎の聖殿内にある修行者達用の休憩室に入った。
ここは大勢で利用する為なのかそれなりの広さがあり、多くの椅子やテーブルが配置されている。その中で適当な椅子を選んで座る。
「あの~、もしかしてですけど、女性が苦手ですか?」
たぶんこれかなぁと、まずは聞いてみる。
「ええ、よくわかりましたね。お恥ずかしながらご指摘の通りです」
ミドラリウス様はすぐに認めた。
やっぱりかぁ。 他の聖騎士様達とあきらかに会話の感じが違ってたのよね。 どちらかというと対人が苦手なわたしの方も原因大なのですけど。
「実を言うと、わたしは人見知りなので、どっちも苦手っていうか、すいません」
ということで、わたしも教えておく。
「そうなのですね。 では、無理をされていらっしゃるのですか?」
「ええと、でも、不思議なんですけど、こちらの星の方々はそれほどでも無いんです。
もし、地球側だったら、綺麗な皆さんには、きっと近づく事さえできなかったと思います」
「何か違いがあるのでしょうか?」
「たぶん、肩書を頂いたからかもしれません。巫女って、なんだか偉そうな肩書です。
だから、責任感的な部分が後押ししてくれていたりするのかも」
「そうですね、わたくしにとっても聖騎士という立場は、誰かと接するのに躊躇を無くさせてくれているかもしれません」
「じゃぁ、この際、巫女の役目として覚悟を決めてぐいぐい聞いちゃいますね。 まず、彼女さんとかいないんです?」
いきなりこれかよって……。
「ああ、いないですね。
そもそも、我々は、聖殿で修業している間、女性と合う事がほとんどありません。
でも、普通は最初に聞くのって家族構成とかですよね?」
若干のツッコみ付きだけど答えてくれた。やっぱりこの星の人は基本優しい。
「それでは、ぐいぐいにならないですから。
そして、聖殿って、男子校しかも全員寮生活、いや、お寺の小僧さん達みたいな感じかな」
「たぶんお考えの通りだと思います。
でも、わたしは、まだ聖騎士になってから半年ほどですし、元々女性は苦手でした」
「アスカール様は、ええと……」
「アスカール様は、あんなに女性慣れしてそうなのにって思ってますよね?」
「あ、はい」
「その通りですからね。 なので、少し真似てみようとか思ったりもしてるのですよ」
「この前、お茶にって誘っていただいた時は気付かなかったですけど、もしかして、そういう努力でした?」
「はい、仲良くなる方法として参考にしてみました」
「あらら。 でも、その件は、きっと実現したいですね」
「そうですね。 楽しみにしておきます」
「アスカール様とは、どういう関係なんです? 聞き方変ですけど」
「修業中に何度かお見かけして、憧れでしたよ。
わたし以外も全員そうだったと思いますけど」
「聖騎士になってからは、一緒に出掛けたりするのです?」
「公務のみですね。 休日が合いません。 基本的には、どちらかは居ないといけませんから。
今は、非常時で休日自体がありませんけど」
「そういう事かぁ。 落ち着いたら、もっと聖騎士様を増やすか、代わりのできる人作りましょう」
「そうですね。 神殿長に進言してみます。
でも、聖騎士は、象徴だったり、目標だったりしますから、あまり増やしてもって事かもしれません。
それに成りたくてなってますから、今のままで満足してもいます」
「おっしゃる通りな気がします」
「でも、そうですね、アスカール様と私的に出掛けるのは楽しそうですね」
「ぜひ地球へ来てください」
話が思いのほかはずんで来たせいか、自然と笑顔で答えていた。
「あなたは、やはり可愛らしい方ですね。
アスカール様と巫女様のどちらを愛せと言われたら、わたしは間違いなくあなたを選びます」
「え?」
なぜその選択肢と思うところをすっ飛ばして、わたしを選ぶ……で驚きの疑問符が出た。
「あっ、すいません。 そういう深い意味では無く。
これまで、そう思える女性には巡り合えていないからだと思います」
深いとかそういうのでなく、なぜその選択肢~。
「は、はい、ええと、がんばりましょう」
もう、しどろもどろ。 きっと変な顔でものすごい赤面をしてる事でしょう。 でも、まぁいいや、なんだか近づけた気がする。
「さて、では、もう一度やってみましょうか?」
別な気まずさを生んでしまった事に気付いたのか、場面展開を提案してくれた。
「はい、がんばりましょう」
まだ、わたしだめじゃん。
「では、失礼します」
ミドラリウス様はわたしの手を取って歩き出した。
少し冷たいその手は、氷の聖騎士様っていうのは関係無いか、でも、わたしの汗握った手には心地よかった、特に意味無いけど。
「行けそうだな」
アスカール様は、戻った二人を見て開口一番そう言った。
「先ほどよりは」
ミドラリウス様は自信を持って答えるかと思ってました。知的なイメージ的に。 でも、実際わからないもんね。
「がんばりましょう」
わたしは、なんかこればっかり。 だけど、この状態で良い気がしてきた。
そして三人で再挑戦。
水晶玉は、赤くなり、光を発し、みごとに輝いた。
「おお、力が湧いて来る。
込めた力が強化されて戻ってくるのがわかるぞ」
アスカール様が効果を教えてくれて居る時、赤かった鎧の色は白く変わりキラキラと赤い光の点が散りばめられた様に見える。
そして、水晶の光が消えた。
「成功です?」
聞いてみた。
「ああ、そうみたいだ」
アスカール様が自身の変わり様を確認しつつ感動しているようです。 ちょっと子供っぽく。
「神聖騎士、さすがアスカール様。 おめでとうございます」
ミドラリウス様も笑顔だ、美しい。
「おめでとうございます。よかったです」
成功して本当によかった。これでわたしの肩の荷も……ん? あ、本命はまだだった。
「二人のおかげだ。 礼を言う、ありがとう。
だが、残念ながら古の神騎士殿はいないみたいだ」
「そうですか」
ミドラリウス様の笑顔が消えた、やっぱり美しい。
「そう残念がるな、ここまでは想定内だろ?」
「はい」
「よし、この状態でもう一度挑戦してみるぞ」
「少し休憩をお願いしてもよろしいでしょうか?」
ミドラリウス様が膝を付く。
「どうした?」
アスカール様はすぐに近づいて支える。
「いえ、わたくしの不徳ゆえですが、力が抜けた感じです」
「なるほど、理解した。
同じ条件にするには、ミドラリウスの力が必要だ。
それから、ミドラリウスのせいでは無い、俺が奪ったからだろう?
気にせずに休め、その間、他の方法を考えてみるとしよう」
「わたしは休憩させていただきますが、一つ試していただきたい方法があります」
「ミドラリウス、言ってくれ」
「巫女様が水晶に振れるのです。
それをアスカール様が受けます。
勝手な想像ですが、巫女様が水晶から古の神聖騎士を呼び出して神聖騎士に渡すイメージです」
「それだ。 巫女様の力を借りるという言葉に相応しい」
「もし、神聖騎士の水晶でだめでしたら、聖騎士の水晶という手もあります」
「その可能性も確かにあるな、ガンドレルは聖騎士の儀式時だからな」
「はい」
「では、巫女様、お願いできますか?
休憩が必要であれば遠慮なく言ってください」
「大丈夫です。やらせてください。
水晶に触れるだけでいいんですよね。
聖力入れるとかわからないのですけど、さっそくやってみますね」
「では、しつれいいたします」
アスカール様が痣に手を当てる。
って、これバックハグってやつでは? ちょちょちょっと、これじゃ動きがぎこちなくなるです。 いや、こういう体勢がベストなのはわかりますけど。
「ではっ、いきますね~」
もう、勢いつけてやってやるぜ~、と、わたしは水晶に右手を乗せた。
「いかがでしょう?」
アスカール様が問いかける。 こそばゆい。
「特に何も……あ、待ってください、声が……」
(巫女よ……我らを呼ぶ巫女よ……)
何人かの声が混ざった感じで聞こえる。
「やれそうか?」
わたしは、できるかどうかは分からないけど、やってみる意思を示すためにうなづいて見せた。
「助けて欲しいです。 あ、声に出すんじゃ無いか」
(「ええと、お願いします、お力をお貸しください。
あの星の結星門が開いてまた敵が攻めてきてるのです。
あなた方の力が必要なんです。
マイサ様が、闇の聖騎士の力を使って結星門を消滅させるらしいのですが、その前に敵を追い払う力が必要なんです」)
(ほう、マイサか、面白い……俺が行こう)
男性一人の声でそう聞こえた。
(「あ、ありがとうございます。 ええと、どうすれば」)
(そのまま寝ていろ)
寝て無いけど、どういうって、ええ~わっ。
「わっ」
声に出てしまった。何かが通り抜けたのがなんとなく理解できた。
「おおお」
アスカール様の手が力を込めた感じに震え出し、何かに耐えている様な声を出した。
その時、入口側の扉が激しく開くと、颯矢さんが勢いよく転がり込んで来た。
「気をつけろ、敵だ」
颯矢さんがそう叫ぶより早く、侵入して来た敵がこちらへ向かって来た。颯矢さんは外で見張ってた様です。
アスカール様は、わたしを庇うよう体の位置を変えただけで動かない。
「あぶないっ」
ミドラリウス様が直前で敵の剣を受け流す。
その敵の姿、聖騎士様たちとどこか似た感じの鎧を着ていた。
「悪いが、その辺にしてもらおうか」
敵は不敵に言う。
「なぜ、ここに」
アスカール様が問いかけるが、疑問符は自問でもあったかもしれません。
「ここは見張っておいた。 正解だったようだ。
何か知らんが、その儀式は意味がありそうだ、止めさせていただく。
ついでに、巫女らしいそいつの命もらおう」
敵は、三人を目の前に一人でも余裕の台詞を言う。 でも、わたしは今は怖く感じない、三人を信じてるから。 そして、儀式はまだ終わって無い。




