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結星門の巫女  作者: 安田座


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12/26

12:星間親善


 わたしは今、神殿長の前に居るのですが、なぜか横に田中一郎君が居ます。

 他に、昨日転勤してきたという女性の先生、鈴木花子さん。

 あと、先日、しおりさんを迎えに来た男のうちの一人、村上進って言うらしいです。

 この地球人の三人は、神殿長の伝言を受け、それに応じて来た方々なのです。

 神殿長の伝言というのは、ふみちゃんがさく君に伝えていたあれです。ふみちゃんは、今日は留守番なんですけどね。

 その伝言では、一人でって言ってたけど、まぁ、護衛役はしかたないよね。

 もちろん村上さんが代表で、鈴木さんと田中君がその護衛です。

 もう少し説明すると、三人は、ずっと昔から地球側で密かに作られていた組織の一員らしいです。

 不可侵条約があったけど、今回、異常事態らしいので対応を話し合う必要ができたとのこと。

 ちなみに、鈴木さんと田中君は、わたしが地球に居る際の護衛が本来の仕事だそうす。今日は、村上さんの護衛も兼ねていると。

 わたしが星間の親善大使的な扱いだからって聞きました。

 もう一つ、その田中君、鈴木さんは、宇宙服みたいなのを着てます。ああ、違うか、パワードスーツってほど大げさでは無いんだけど、たぶん戦闘用だと思います。

 わたしは、今日は着替えなくて私服のままです。誰も特に何も言わなかったので、いいかなって、できれば見られたく無いし。


 そして、実は、もう村上さんと神殿長の話は終わったそうで、三人はすぐに戻るらしい。 ということでわたしも呼ばれたところです。今日は、わたしもこれで帰ります。

 ちなみに、わたしは颯矢さんのお見舞いに行ってました。 地球の人たちの事を話したら、ちょっと不機嫌になった気がしたけど……言わなければよかった。

 でも、あと二三日で退院、あ、退治癒室?できるそうです。 一安心です。

「では、最後になってしまいましたが、この神殿の警護を担当する聖騎士をご紹介いたしましょう」

 神殿長が三人にそう言うと、後方に控えていたオルテミアス様とガンドレルさんが一歩前に出た。

「わたくしが、神殿警護の指揮をとります光の聖騎士オルテミアスと申します。主に、神殿の外周りを担当します。

 こちらは、神殿内部の警備を担当します影の聖騎士ガンドレルです」

 オルテミアス様が名乗りお辞儀する。 ああ、凛々しい。

「ガンドレルと申します」

 ガンドレルさんが紹介されて優雅にお辞儀する。 ああ、可愛い。

 ちなみに、ガンドレルさんの装備、ヒラヒラミニスカートがズボンに変わってました。ホットパンツっていうのかな? 十分あれなんじゃ?

「おお、なんと可愛らしいお嬢さんだ……」

 田中さんが、ガンドレルさんにそう言った瞬間、何かが砕けるような音。

 田中さんの首の部分の装甲が砕け散っていました。首筋のあたりの強化衣服が見えてます。

 見ると、田中さんの眼前に立つガンドレルさん。そして、その右手に持つ黒い剣の刃が田中さんの首の横に留まっています。

 もしかして、出ちゃった? マイサ様……。

「ぐっ」

 田中さんが、苦鳴をもらした。

「今回は、神殿長の眼前ゆえに、これで勘弁しておく。

 以降、この娘に邪な視線や言葉を投げかける様であれば、容赦なく斬り飛ばす。 俺には親善など関係無い」

 挨拶をしたときの透き通る様な美少女の声では無く、低音の響くような声だった。マイサ様だぁ。

 ああ、そういうのでも出るんだ。 もう、箱入り娘のお父さんじゃん。 でもあの程度の言葉で過剰反応しすぎですよ。もしかして言葉ではないのかもしれないけど、攻撃するなんて絶対だめでしょ。 そして親善も考えて~。

 わたしは知らないですけど、この攻撃、実はわざとで、聖騎士はみんな強いんだぞって思わせるためだったみたいです。でも、やり方~。

「いや、すまなかった……理解した。

 失礼をお詫びする、許して欲しい。

 ……ああ、この装備では十分な詫びの形が作れず申しわけない」

 ガンドレルさんことマイサ様は詫びていることを聞き入れたのか、刀をしまうと、わたしの控室に入っていった。 納得してくれたらしい。

 はっ、そういえば、オルテミアス様がいない。 まさか……止めるより、この後、戻すことを優先されたの? 不憫だけど……いや、どっちよ。 ん?わたしの控室って……今日は、着替えも無いからこのまま帰ればいいか。

「あの~、後で説明してあげますね」

 とりあえず、田中さん達にそう言ってみた。

「巫女様、お手数かけますな」

 村上さんが本当に申し訳無さそう。 本心かはわからないけど。親善は大事よね。



 結星門を出ると、装甲服の二人は専用のトラックの中へ入って行った。 装備を外すためみたいです。

「わたしも、こちら側の意向を知りたいです」

 村上さんに聞いてみた。

「そうですね、情報交換にならない程度になりますが」

 ああ、そうよね。 たぶん、余計な事知らない方がいいわよね。 ただの女子高生は。

「かまいません」

「しかし彼らの自動防御を切っておいてよかった、下手に反撃でもしてたら、粉々にされていたかもしれん。

 だが、修理代三桁で済まんかも、始末書にもなんて書けば……」

「たいへんですね」

 まぁ、そうとうお金かかってるよね。

「それにしても伝説にある聖騎士の強さよ……現代の装備でこれです。昔の人達は攻め込もうなんて思わなかったことでしょう」

「まさか、攻め込んだりするんです?」

「それこそまさかです。 しないからこそ軽口にできる。

 現代兵器を持ち込めば勝てるかもしれませんが、そうする目的が無いですから」

「目的?」

「人類が月や火星などを目指すのは資源を求めてです。

 そこには知的生命体がいないでしょう?」

「いないでしょうね」

 実際、知らないけど、そうよね? あらためて聞かれると、自信なくて答え方が中途半端に。

「知的生命体が居るとしたら仲良くして必要なものを交換すればいいのですが、それは求めている資源ではないのです。

 こちらの資源が出て行かないことが重要です。 これが正しいかは私には分りませんが、増えていく人類が皆それなりに豊になるには地球の資源では足りないからです。

 だから、宇宙開発が必要なのです。

 結星門を研究するのも手ではありますが、今はその時では無いと思います。

 太陽系を出る必要があれば、その時考えるくらいでいいでしょうね」

「はあ」

 返せるだけの知識が無いので相槌程度でごめんなさい。

「だから、他国に情報を広めない様にしていますし、こちらからアクションを起こすこともしておりませんでした。

 不可侵を守り通す事こそ最良だと考えます。

 しかし、今回は、こちらへ来てしまいましたからね」

「ああ、敵の人ですね」

「はい、なので状況をお伺いに参りました」

「地球側はどうされるのです?」

「ここからは秘密です。

 それから、地球の代表では無いので日本側かなぁ。話は通じるので何でも構いませんけど」

「ああ、なるほど日本側ですね。 そして秘密なのね。じゃぁ、わたしはどうすれば?」

「このまま巫女をお続けください。

 神殿長は、あなたの御意思にお任せしますと言われてましたが、われわれはそう望んでおります」

「そうですか、辞める考えは無かったですけど、今後何かあったら相談させてもらってもいいですか?

 ええと、なんか、ちょっとわたしの頭では処理しきれてませんので……」

「構いませんよ。 あなたが続けられる限り、我々はあなたを守る者ですから、田中、鈴木両名はお近くにおりますしね」

「ありがとうございます」

「二人はもう少し掛かると思いますので、どうぞ帰宅されてください。

 あちらにお迎えがお待ちの様です」

 あちらの方を見ると、さく君が来ていた。確かに時間だしね。

「はい、では、お二人にもよろしくお伝えください。

 失礼します」

 お辞儀してから、さく君の方に走る。

「はい、おやすみなさい」

 村上さんは、そう言いながら手を振ってくれていた。



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