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女性だけの町  作者: ウィザード・T
外伝 追放者の手記
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私は「追放者」である

第二部最終章は外伝として、今度は女性だけの町から外の世界にやって来た追放者視点のお話です。

 私は「追放者」である。


 そう聞いてどうお考えになるだろうか?


 何をいまさらとなるのは私の事を知ってくれている方々だけであり、このエッセイが初見と言う方にとっては必要不可欠な情報だろう。

 もうその事を売りにできる時期はとうに過ぎているが、それでも私は死ぬまで「追放者」だ。その事から逃げる気はどこにもない。そして、あの町に残して来た家族の事も。



 話を進めるが、皆さんは一体どんな夢をお持ちだろうか。

 私はかつて、女優になりたくてあの町を飛び出した。女優と言う言葉さえも知らずに、優秀な「俳優」になれる気がした。何せ女性しかいないのだから、「女」なんて付ける必要はどこにもない。そんな世界だった。

 そこからやって来た私を出迎えた男は、実に親切だった。男はすぐ暴力を振るう物、事あるごとに男だからと言ってこちらの意志を阻害せんとする物。そう教え込まれて来た事をわかった上で、彼は私を受け入れた。その上でもちろん警戒心を崩す事はなかったが、それでも私なりに受け入れてくれた男に礼をしようと思い、彼の妻を通してコミュニケーションを取った。彼女もまた幸い男に媚びる所のない自立的な女性で、彼女自身の価値観を持って私を判断してくれた。

 とりあえず酒屋の下働きの仕事を紹介され、そこで毎日おつまみを作る生活をしていた。

 もちろんその間に俳優になるためのレッスンも受けたが、すぐに挫折しかかった。


 一応子役時代からそれなりに演技もして来たし人気もあったつもりだったが、いざこの場に立ってみるとみんな私よりも演技がうまい。中には下手な子もいたが、すぐさま簡単に追い抜かれた。

 それでも「女性だけの町」出身と言うアドバンテージを生かして端役はもらい続けたが、所詮端役は端役でしかない。ただ歩くだけとか、「ワー」とか「キャー」とか言うだけの役。存在感を示す事もできない。何度かいわゆる再現ドラマに出た事もあったが、それ以上の出番はない。

 そうして数年間過ごし、私はようやく認めざるを得なくなった。



 私の故郷のドラマは、あまりにもレベルが低いと。



 題材は常に第二次大戦を含む歴史系、さもなくば悪い方向に進んだ「管制塔」こと誠心治安管理社を相手とするビジネスドラマ。そのどっちかが大半であり、ひどいのになると絵本原作と言うのもあった。一応刑事ドラマだけはあったからそれはまだ良かったが、今思うと金銭的問題が親子相克、さらに言えば企業同士の問題ぐらいしかなく、話のパターンはほとんど同じだった。ついでに言えば子供向け番組でも、ドドラちゃんと言うキャラが生まれる前から第一線を張っていた。デザインは変更があるもののずっと昔から活躍し、時々自分が生まれる前のそれまで再放送していた事もある。

 とにかくそんな訳でドラマの幅も小さければ新作を撮る事も少ないので給料も上がらなければ経験も積めず、なかなか優秀な役者が育たない。その悪循環により、ドラマの質は上がりようがなかった。

 結局その繰り返しにより、私は女優としての道をあきらめるより他なかった。あるいは町の中で歴代最高の俳優であった人がやってくれば成功したかもしれないが、いずれにせよ私はあまりにも演劇を知らなさ過ぎた。


「あらまあ……」

 役者をやめる事を伝えると彼女は私にいたく同情し、それと同時に女性だけの町に対して不信感を抱いたようだった。

 その時はあの大規模テロ事件、あの町では「第三次大戦」と呼ばれているテロ事件から数年が経ち外の世界でも事件の詳細は入っていた。数千人単位の死傷者が生まれ、たくさんの逮捕者が出たと言う案件。私もまた姉と義姉を失い、戻ろうかどうか迷った。だが正直姉たちとはあまり折り合いも良くなく、取り分け下の姪は町を飛び出した私を受け入れてくれなかった。正直、役者と言う仕事はあの町では薄給と言う事もあって受けが悪く、そのためこの町に来てその地位の高さに感心したほどだった。

 とにかく役者としての自信を失った私は完全に居酒屋の店員になろうとしたが、そこで宣伝文句を書いていた所、私を役者として育てんとし、どんなに目が出なくても必死に水を撒き続け、そして枯れてしまった事を誰よりも嘆いていた男が私をある雑誌社に推薦してくれた。

 その彼のおかげで、今私はエッセイストとしてそれなりの地位を得ている。この原稿も居酒屋勤めの傍ら、休み時間を惜しんで書いているのだ。女性だけの町生まれと言う看板がとっくにさび付いているのにまだ求めてくれるのは、本当にありがたい事だ。




 そんな私は今、一人の男性と同居するに至っている。

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