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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第十一章 町議会
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「宣戦布告」

「どうして俺たちの世界には絵本は一種類しかないのに、女性だけの町には絵本が三種類もあるんだ、面倒くさいだろ」

「そりゃ必死に自分たちの考えを広めて世界を統一する気だろ」

「そんでその世界には何種類の絵本があるんだ」

「一種類だけだよ」


 そんな下品ですらない声の後に、雑な笑い声が続く。


 達子は猫が寝込んだという方がよっぽど上等なギャグだと言わんばかりに涙目で苦虫を嚙み潰し、首を横に振る。


「これが一体何を意味しているか、皆さんならお分かりいただけるはずです!」


 そしてこれまでで一番太い声を出し、両方の拳を叩き付ける。

 それほど難しくもないクイズを出題された記者たちはうなる者あり嘆息する者ありと対応が分かれ、そしてそのままため息を吐いた。


「皆さんこれまでのお話で、外の世界の危険性とこの町の安全性の差をよくご存じのはずです。それほどの成果がありながら、彼らはこんな事を言って笑っているのです。平たく言えば、この町自体が全くの無駄であると!」

 達子は両手を何度もテーブルに叩き付ける。男たちの頭を必死に叩くように、叫びながら叩く。空っぽのコップが床に向けて落下し、派手な音を立てて跳ねる。割れる事はなかったがそのまま回転し、達子の足で止まった。


「このような話は枚挙にいとまがありません。

 例えば、神に出会った男が我が国から失業者がいなくなるのはいつだと聞き一〇〇年後と言われてそれまで俺は生きていられないと泣きわめきながら走り去り、次に女性だけの町の代表が世界中が自分たちと同じようになるのに何年かかるかと聞いた所神がそれまで私は生きていられないと泣きわめきながら走り去った—————。

 さらに「本当に女性だけの町はいつ頃実現するの?」「一〇〇年後ね」「その時の住民は哀れね」だの、結局外の世界の住民は我々を認めないどころか茶化す事にまったく余念がありません」

「あくまでも、我々は……」

 記者たちはあくまでも冷静を装うが、それでも少なからぬ記者たちが茶々丸出しの言い草に眉をひそめていた。


「確かに、この町を非難するもしないも自由です。しかしこれはあまりにも品のない侮辱行為であり、この町の品位はおろか発言者たちの品位をも貶めます。どうあがいても正当化できない罵詈雑言であり、非難声明を出すべきだと考えます」

「質問ですが黄川田党首、これらの発言はまったく公的な物ではなく市井の人間がこぼしただけのようですがその件についてはどうお考えなのでしょうか」

「これまでの行政が、あまりにもおとなしすぎた事を悔やむのみです」

 そんな空気の中でも、必死に質問しようとする記者もいた。だがその質問に対し、達子は穏やかな声色のまま吠えかかった。


「確かにこの町には三原則があります。相手の価値観を認めるべし、と。ですがそれはお互いに認め合う事から来る物であってお互いを落とし合う事ではないのです。相手を嘲笑うがためだけに頭を回すなど、あまりにも悲しいと思いませんか?」

「ですが」

「私はこの町がいかに素晴らしいか、その事をもっともっと世の中に知らしめねばならないと考えています。くどいですがこれまでの政治はあまりにもおとなしすぎ、そのアピールと言う点が不足していました。

 もう十分、この町は成熟しています。これからは、種を蒔きに行く時です」


 そしてその声色のまま、種蒔きなどと言う単語まで持ち出した。


 それこそ完全な開拓者の単語であり、新世代かつ原点回帰の単語だった。




「確かに、仮にほぼ今回の選挙で私の思うがままの結果が出たとしてもすぐさまと言う訳には行かないでしょう。ですがこの事をきっかけに、これ以上閉じこもっているだけでは何も変わらない、世界はずっとこのままだと言う事を、町民の皆さんに感じていただきたいのです。どうか、どうか、正道党に力をお貸しください!」


 そして最後に深々と頭を下げながら、達子は出馬表明を締めくくった。


 ほんの十数分とは思えないほどの時間を過ごした達子は頭を上げるや少し疲れたように椅子にもたれかかり、秘書からさらに一杯の水を受け取って飲み干した。




 それから数日間、彼女の思惑通り、この十数分の出馬表明は電波にも、紙面にも、全文載せられた。

 

 ずっと民権党と女性党と言う二大政党制で過ごして来た町民たちを騒がせ、改めて政治に目を向けさせる。


 そして歴史書は、また厚くなる道を歩まされるのだった……。

さて来週は外伝です。それが終わったらいよいよ第三部突入、と。

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