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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第十一章 町議会
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達川美津子と黄川田達子

「この場にて宣言します。私は次の選挙にて正道党から出馬し、同党の党首である黄川田達子氏を町長として推薦すると!」




 黄川田達子。




 その名前は既に町内でも有名だった。



 作家、脚本家、そして政治家として。



 もちろん、正道党と言う名前も既に知られている。


「正道党結党の話は既にうかがっています。それで此度達川議員は正式に正道党として出馬すると言う事でしょうか」

「はい」

 町長の平板な問いかけに、美津子は力強くうなずく。

「幾十年にわたり、この町は民権党と女性党と言う二つの政党により動いて来ました。しかし町民たちの意見は多様であり、二つの政党だけでは町民の声を掬い切れないのではないかと私、達川美津子は考えておりました。

 この町を、真に女性だけの町にするべく」

 ずいぶん大胆な場での、大胆なない民具での決意表明だったが、美津子の言葉に迷いはない。

「党首である黄川田達子は既に述べています、この議会で第一党になる決意があると。少なくともキャスティングボートを握るぐらいまでは行くつもりです」


 そしてさらに次の言葉で、場は一気にざわついた。


 与党民権党の非改選議席は六十一議席あると言うのに、それを半数の一〇〇議席改選する今回の選挙で上回ると言うのだ。

 当然民権党の議員と戦う事になるし、女性党だって対立候補を送り出すからそれにも勝たねばならない。一〇〇議席総取りとまでは行かないにせよ、八○ぐらいは勝たねばならない。キャスティングボートにしたって民権党を過半数割れさせねばならないので、女性党が躍進しない限りは五〇ぐらいは必要だった。

 ちなみにこの町の選挙は第三次大戦の後から選挙区はちょうど一〇〇とされ、その一〇〇の選挙区の二議席を三年に一度ごとにひとつずつ小選挙区として改選する形で行われる。その三年の間に自分たちが選んだ議員及びその政党の政治が優秀か否か有権者に見極めさせ、その上で判断させるという寸法だ。

 

「私達川美津子の個人的な意見としては、我々正道党も、民権党も、女性党も、各々大事な町のため、住民のために全力を尽くして欲しいと願っております。できる事ならば、一〇〇の選挙区全てでの戦いとなる事を!」

 一〇〇選挙区全てでの選挙戦。当然と言えば当然だったはずだが、実は当然でもなかった。六年前はゼロだったが三年前には無投票当選となった選挙区があり、四人ほどそのまま町会議員になっていた。


「……以上です」


 言うべきことを言い終わったと感じた達川は頭を下げながらゆっくりと着座した。

 ある種の終わりであり始まりであった空間は異様なほどの緊張感と闘志に包まれ、本格的な開戦の予感を町中に叩き付けた。













 この所属議員の大胆過ぎる演説を目の当たりにしたマスコミも、当然動いた。


「では黄川田さん、此度の選挙に一〇〇名の候補を投入すると言うのは本当ですか」


 正道党の本部となっているかつての集会所にマスコミが集まったのは、達川美津子の演説からわずか二時間後だった。

 当然の如く記者会見は生中継され、テレビ局も新聞社も一斉にマイクを向けた。

 黄川田達子がマイクに向かって頭を下げると同時にフラッシュが光り、達子の顔を照らす。


「私は七年前、この町に移住しました。かつて、私には男のパートナーがいましたが、その男は風紀を乱す事を是とする仕事に就いてしまったのです。もちろんその事について私は反対しましたが、彼は私のためだとか言うお為ごかしを吐き続け要求を跳ね除け、今では外の世界にて大物の搾取者となってしまいました。その事に絶望した私は、こうしてこの町へと移り住んだのです

 そしてその時からずっと、今日の日のために動いていたのです」

「今日の日と申しますと」

「はい、当初からこの選挙にて存在を示し、三年後に政権を獲得する所存でした」


 七年前に移住して三年後に政権獲得。文字通りの十年構想。


「そのために達川議員が言っていた通り党首である黄川田さんを除き一〇〇名の候補者を立候補させ、最低でも五〇議席獲得を目指すと」

「そうです。もちろん私自身の町長当選、町議会での第一党獲得は最大の希望ですが、とにかく今回は正道党と言う存在を世に示すことが大事だと思っています。

 こちらの三大政策、いや五大政策を実現するためにも」


 三大政策。


「高齢追放者」の廃止。「輸入品」の管理の厳格化及び即時焼却。「輸入品」の恩恵を受けている店への行政処分を含む取り締まりの厳格化。



 それにさらに二つ追加された、五大政策。


「五大政策のあと二つとは何でしょうか」

「この町の治安の良さを普及する活動の活性化に伴う町の発展。そのための治安維持、ああこれは輸入品に関するそれとかぶりますが、とにかくあらゆる意味で犯罪をゼロに近づける事を目標とします」

「輸入品がなくなれば犯罪は減るとお考えなのでしょうか」

「そう考えます。少なくともお茶の間の顔であった人気俳優がいきなり「せほみし」と呼ばれるような事件は減少すると考えます」

 人気俳優が闇本を売って逮捕されたニュースはつい先ごろまでのマスコミの好餌であり、写真週刊誌などには下手なニュース番組よりずっと詳しく載っている。確かにそんな本がなければ起きなかった犯罪だ。




「そしてもう一つは、制御塔の改修と移設です」

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