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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第六章 「追放」
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第三の肉

「男には、こんな棒があります。その棒の役目を果たす事こそ、彼らの最大の望みです」


 二日目。


 職員の女性は、男性と言う存在の肉体についての授業を行っていた。


 第二次産業の女性を上回る筋肉に、髪の毛の問題。女性にはめったにありえない「ハゲ」と言う現象。



 そして何より、第一次性徴の産物。



 その棒と二つの球体のイラストを差し棒で激しく叩きながら職員は声を荒げる。


「私たちにある穴の代わりに存在する棒、それこそが男性のもっとも醜い部分です!もちろん普段は私たちと同じように秘匿していますが、彼らはいざとなれば頭より先にそこに従って動きます!」

「それは」

「要するに女性を求めるのです、そのために欲望をむき出しにし、理性をかなぐり捨てます!そもそもこの棒により、女性たちは日々おびえながら暮らすことを余儀なくされたのです。私たち女性は幾度も幾度も改善を求めては裏切られ、苦しんで来ました!強引に衣服をはぎ取り私たちの!穴へと!」


 涙目になって差し棒を叩きまくる職員の声が部屋に響き渡る。


 女性しかいない町では女性の女性足りえる部位はほとんど顧みられることがなかった。一応清潔にすることは心掛けられていたが、あまり激しく刺激する事は人道を外れた真似とされている。万病の種とも言われているし、実際泉の同級生のひとりがその場所をきれいにしすぎたせいで自己逮捕の常連となってしまい出世街道から外れたという話もあった。


「外の世界に行くと言う事はこの棒との戦いです。死ぬまで終わらない戦いです」

「その戦いをまともに終えるにはどうすればいいのですか」

「男にその力を見せつけるよりありません。

 ただしその戦いは自分一人ならばそれほど難しくないのです、これまで幾千万年としつけられて来た同じ女性たちこそ厄介な存在です」


 その事は泉も学校の授業で知っていた。


 かつて女性だけの町を作る際に外の世界の女性たちに呼びかけたが、反応したのはごくわずか。軽い気持ちで乗っかった人間たちは次々と離脱し、志高き者たちだけが町作りに参加した。残った人間たちによる地道な町作り—————いわゆる第二次大戦において男性と同じかそれ以上に女性が町作りを妨害した、と。


「決してその男のしもべとなった女性の言う事を聞いてはいけません。棒がなければ子供も産めないような」

「出産の日付さえもわからない、と言うかその見込みさえもわからないような…」

「ゆえに無計画な出産が行われ、そしてそれが虐待を生みます。この町に来て感心した事は、いわゆる虐待がないと言う事です」

「虐待?」

「子どもを物のように扱い、傷つけたり世話を怠ったりする行いの事です。育児の問題を何でも話せる存在がいないからそんな事が起きるのです。もちろん男が女を虐げるいわゆるドメスティックバイオレンスもあります」


 実際、この町には虐待もドメスティックバイオレンスもほとんどない。そうなる前に家族が止め、隣人が止め、警察が止めるからだ。民事不介入とか言う原則を持ち出すには、この町の警察は時間を持て余していた。

 もちろん虚偽申告は重罪だから真偽の確認は大事だが、それでもこの町はそういう意味では安全だと言えた。

「この町は文字通りの楽園であり、人類の最先端です。争いを乗り越え、真の開放を目指す社会への。いつまでも自分たちの欲望の成就にきゅうきゅうとする様な存在とは違うのです」

 彼女は強い圧を感じる言葉で、男たちの危険性を訴える。さらには右手で昨日使っていた教材を机に投げ付け、その風と共に動物を模した少女の姿を泉に見せつける。

「少しでも油断すると私たちの懐に潜り込み、男性たちの歓心を得るべく扇情的な姿をさらします。腹立たしい事に女までそれに加担するのです、売るだけでなく作り出して!当然その服の下には裸体がありますが、それを誘わんばかりのこの薄着!こうして彼らは!我々現実の女性にさえも同じ事を求めるのです!」


 昨日にもまして悦に入っている職員の言葉に、泉はうなずきながらノートを取る事しかしなかった。


 料理人と言うのは、どうしても命と向き合う事を余儀なくされる。ましてや泉と言う意欲的なそれの場合、食材の一つ一つをその目で見極めずにいられない。だから彼女は休みの日には農漁業地区へと向かい、野菜や果物の収穫などを手伝っていた。


 その際にはどうしても必要不可欠な「オス」である家畜たちの繁殖の現場を目の当たりにし、存在も既に知っていた。人間と同じやり方で肉や魚も増やせないのかと言うのは永遠の課題のはずだったが、現在の所は棚上げ気味である。実際それらの肉が存在しない訳ではないが味も栄養も不足しており価値としてはかなり落ち、ビジネスとしては成り立っておらず管制塔傘下のスーパーなどにて流通しているだけだった。


 だがそれでも買う人間はいた。これこそ由緒正しい、自分たちが食べるべき肉だと言ってはわざわざ大金を払い、丁重に命に感謝して食べている。

 その事に口を挟む権利など、誰にもない。泉自身、その肉を使った料理のオーダーを頼まれた事もあるから。


 男も女もない、その肉を。

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