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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第六章 「追放」
39/136

退廃文化

 ——————————扇情的な、女性の絵。



 真っピンクな上に金色のボタンが無駄に輝く上着、それと同じ色をした帽子。

 そして何より、ひざ上までしかないようなミニスカート。



 別にそのデザインのファッションそのものはこの町にもあったが、あまりにも色がどぎつい。

 そんな色の服を着る人間など、未就学児かせいぜい小学生までだった。中学生以上になって着るのは、よほどその色が気に入った人間だけだった。もちろんみんな違ってみんないいの原則に基づきそれを批判する人間はいないが、それでも需要がないので供給も少なく値段が高くなりと、そういう経済的な理由で着なくなる人間がほとんどだった。

「…」

「すみません、つい見えてしまったようで。ですが外の世界ではこんな格好をして男の前で働く人間がいるんです。いわゆるバスガイドとして」

「バスガイドって」

「バスの乗車を補助し、同時に観光地の案内を行う職業です。必要もないのにわざわざこんな格好をし、不自然に笑顔をするのです」


 職員が取り出したポスターに載っているバスガイドと言う仕事らしい女性は右手に旗を持っている。後ろには観光地らしき風景と文字が並んでいた。


「このようなシロモノが、外の世界にはあふれています。そしてこれでももっとも易しい部類です」

「ふーむ……」


 泉はじっとポスターの女性をにらみ、ある程度その姿を刻み込んだ上で職員の方を向くと、彼女はポスターの中の女性とまったく違うようでどこか似ている顔をしていた。


 片や満面の笑顔、片やしかめっ面を通し越して苦虫を嚙み潰したような顔だと言うのにだ。


「この格好は特別なのですか」

「いいえ、仕事着です。こんな扇情的な色の服を着せられて本当に可哀相です」

「その旨述べなくていいのですか」

「述べました。

 本人から撥ねつけられました。

 彼女は既に十年以上洗脳教育を受けていて手遅れだったのです。何を言っても気に入っているの一点張りで、挙句ただのクレーマーと呼ばれまして。それからこちらの資料をご覧ください」


 その苦虫を嚙み潰したような顔のまま、泉の前に職員は一冊の冊子を置いた。

 婦人職業カタログと名付けられたその本には、様々な女性が職に就いている姿が写真付きで載っている。そのほとんどが町にもある仕事だったが、二点だけ大きな違いがあった。

「派手ではないけど赤やピンクが多いですね」

 全体的に暖色系が多く、そしてスカートの丈が短いのだ。


「この町ではロングスカートを履いて自由に動けるように小学生、いや園児の時から訓練を行うそうですね」

「私もずっとそうして来ました」

「下着と言うのはなぜか男たちの本性をむき出しにします。スカートの下のそれを思い求め目の色を変える存在を私は幾度も目にしました。本当なら全部長ズボンでもいいと思っているぐらいです」

 この町の学校の制服もスカート派とズボン派で分かれている。現状人気は半々であり、どっちがどうと言う動きはない。泉はいわゆる中卒と言うか専門学校卒であり、中学が制服のない学校だったためそれらしい服に袖を通したのは料理人になってからだった。

「くどいですか、外の世界ではこれが当たり前なのです。悲しい事に」

「はい」

「そして、こちらです」


 泉の相槌に応えるように、職員の女性は二冊の本を置く。

 どちらも先ほどの職業カタログとは違い数十ページしかなく、ホッチキス頼りでまともな製本もされていない。


「そう言えば泉さんは、南西の住宅街の方にあるアミューズメント施設に行った事はありますか」

「ありませんけど」

「私は気分が悪くなるとしょっちゅうそこに行きます。最初は建築業の方に連れられて行ったのですけど。これが全年齢対象と言うんですから聞いて呆れますよね」


 真っ赤な服を着て脇をむき出しにした少女、金髪にミニスカートな黒い服を着た魔女、ウサギの耳を生やし生足をむき出しにした紫色の髪の女。


 もう一冊は先頭に立つ少女は比較的まともな姿だが、後ろに続くのが人間とは思えないような耳を頭に持ちヒョウ柄のスカートを履き尻尾を生やした少女、青いベストを羽織り頭にやはり人ならぬ耳を生やし灰色の尻尾を生やした少女が続いている。


 どこからどう見ても現実に存在しえない存在が居並んでいる。


「おぞましい事に、このような存在が外の世界ではまったく普通に威張っています。それを扇情的だと言えば過剰反応と嘲笑を受け、男たちはおろか女たちからも爪弾きにされます、いや、されました」

「……」

「私はあくまでも、公序良俗に反する存在を表に出さないで欲しいだけだったのです。ここに出したのはまだこれでも上澄みに近いシロモノで、中には彼女らにあられもない姿をさせるそれもあります。泉さんはおいくつでしたっけ」

「二十三歳です」

「ああすみません、ついうっかり、どうかお気になさらず……」

 職員が年齢を聞いて来たことと、その後の動揺の意味を泉は即座に理解した。


 もちろんこの町にも、一定年齢未満お断りのシロモノはある。言うまでもなくその筆頭は酒と煙草だが、書籍類にも年齢制限はあった。書店で並ぶ大学入学相当年齢である19歳以下禁止の本。

 その中身は、ほとんどこれらの同人誌と変わらなかった。



「自分にとっての理想の女性を追い求めるあまり、野生動物すら女性に仕立て上げた結果である」


 丁重な製本がされ、退廃文化の象徴である事を示すような文が付いている事ぐらいしか違いはなかった。

東○projectと○○○フレンズです、ハイ。

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