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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第五章 ある問題を解決する方法
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入浴

「気持ち悪いのでしょう」

「ええ……」

 その後しばらくぐったりしていた敦子だったが、やがて体が冷えて来ると股間の気持ち悪さが体を襲い出した。

 そんな敦子を朝顔は隣の部屋へとブラジャーを付け直しただけの姿で導き、部屋に入るや残っていた下着も脱がせた。薄明るい部屋の中では湯船とシャワーだけが輝き、汗だくの体を清める準備ができていた。

「ではそこでしばらくお待ちください」

 全裸の敦子を部屋に入れ、生まれたまま同然の姿で警察署を歩く朝顔にあっけに取られながらも、とりあえず敦子はシャワーを体に叩き付ける。温度は書いていないが、いつも家で使っているそれよりはやや冷たく感じた。そんなシャワーを浴びていると体が引き締まり、熱気が取れてほぐれていく。

 敦子がシャワーを止め湯船につかると、今度は熱い。その熱さがさらに体をほぐし、心を落ち着ける。これまでの数日間、全く感じる事の出来なかった安堵が今ここにある。石鹸もスポンジもないが、むしろ気が楽である。

 風呂で自分の体を洗うのは、正直難しい。石けんをスポンジに含ませて体をこすると言うだけの話と言えばそれまでだが、ある程度長じて来ると洗い方に困る事がある。

 いわく、胸部と股間は決して力を込めて洗うな、と。もちろんきれいにせねばならないが、あまり力を入れ過ぎると病にかかりやすくなる、と。

 胸はまだともかく、股間についてはかなりやかましく言われる。敦子はそうでもなかったが、娘を同じ学校に通わせるママ友からは歴史がどうとか言われた事もあった。男が胸を求め、股間を求めて女性たちの安全を脅かしていた。だからあまり派手にやる物ではない、きれいに見せる物ではない。だいたいそんな場所をきれいにするのはあくまでも体のためでありそれ以上でもそれ以下でもない事は敦子も知っていた。

「どうでしょうか」

「比較的落ち着いています」

 その分緊張していたためか、突然の声にも落ち着いて反応できた。

「そうですか、では共に入る必要はなさそうですね」

 カゴの音がする。場合によっては共に入浴し、その中で刑を執行する事もあるのだろうか。その際に一体何をされるのか。そんな不安が湯船への滞在時間を増やし、皮膚をふやけさせる。

(いや、何を考えているの私!)

 あくまでもこれは病気であり、罪である。まともに、健全に過ごしていれば来ないし来たとしても軽くなるはず!できればお世話になりたくない場所の筆頭である警察署にわざわざ来る必要もなくなる!

 考える必要もないし、考えてはいけない事。だいたい、他人様の仕事にケチを付けられるほど自分は偉いのか。


 そこまでやってようやく頭の冷えた敦子は湯船を上がり、浴室から更衣室に向かった。備え付けのタオルで体を拭きながら隠し、先ほど丁重に畳んで服を着ていく。パンツを足に通し、ブラジャーを付け、スカートを履き、上も着る。そして最後に、靴下を履き靴を履く。この順番もなぜか、子どもの時から変わらなかった。その事についてママ友たちと話し合った事もあったが、今度は100%同じだった。

「どうやらもう大丈夫のようですね」

 自分と同じように元の姿に戻った朝顔の手により、また元の部屋へと導かれる。顔の火照りは変わらないが、これまでよりずっと穏やかな気分だった。

「敦子さんはどうやらかなり軽症と言うか、これまでほとんど経験がなかったと思われます。よく言えば優秀ですが、それゆえに戸惑いが大きかったのかもしれません。いずれは娘さんたちも通る病ですから、決して娘さんたちのそれを軽視しないでください。そうなれば自己逮捕では済まないのです」

 ベッドに座りながら、そんな話をされる。親の症状が重いと子どもに過大な心配をし、軽いと子どもへの心配も軽くなる。

 その手の流れでこれまで幾多の女性たちが罪を犯し、刑務所へと本格的に移住した。安全と安心を求めたはずのこの町で、一番あってはならない犯罪が起き続けた事実は当時の町民の心をえぐり、嘲笑の対象にもなった。残念ながら根絶までには至っていないが、この刑罰導入後はかなり減ったのも事実だった。

「この後はもう少し授業をお受けいただき、今夜はここで寝泊まりと言う事になります。もちろんその旨連絡はしますのでご心配なく。刑務官として」


 敦子は極彩色の部屋を、真っ赤な服を着た朝顔と共に出た。

 次なる「刑」である、授業を受けるために。



「安全な町」に、何が必要かと言う事について。


「公務員」として、朝顔は手厚く教えた。

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