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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第五章 ある問題を解決する方法
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執行の部屋

 桃色の壁と、ハートマークの並びまくったベッドのある部屋。

 しかも、いわゆるダブルベッド。


「ここはどこですか」

 管制塔勤めの両親を持つ敦子のまったくごもっともな疑問に対し、朝顔は無言でベッドに腰を下ろす。そして右手を振り、敦子を誘導する。

「ここは、成年女性用の執行部屋です」

 成人女性用。確かに成人女性用と書かれた部屋の前には、未成年用と書かれた看板があった。その中にも一度は入った事があるはずだった敦子だが、その中身は覚えていない。

いや、何をされたのかさえも覚えていない。


「ではその前にひとつ。あなたは自分の罪を認め、こうして赴いた。それだけであなたは実に尊く、そして真摯で清廉です。その罪を認めずに更なる犯行に及び、身を滅ぼした人間は数えきれません。そしてそれを男のみの宿痾であり女は被害者だと考えてしまっていると言うのが、かつてこの町が失敗する理由の一つであると嘲笑されたのです」

 その罪において、女性はまったく被害者とされて来た。実際には女性からの犯行も存在し、それを秘匿あるいは見落とした上で論を重ねて来た事を指摘され、それが第一次大戦における難関の一つであり、実際この町ができた時には執行官に当たる職業は存在せず、女性が女性を求めてその手の犯罪をなしたケースが年に幾十度、いや幾百度もあった。女性である事を盾にした犯行はやまず、社会問題になっていた。

「えっと」

「申し訳ありません、執行官と言う役職に偏見を持つ存在は未だに多くこの説明は必須なのです。公務員ゆえの悲哀だと思ってくださいませ」

 早くやってくれと言える立場ではないなりに口を開いた敦子に対し、朝顔は公務員らしい口調で詫びを述べた。

 そしてゆっくりと立ち上がり、敦子をベッドに座らせた。

「ではこちらを、ああいけません間違えました!」

 着座した敦子に対し、朝顔は一枚のアイマスクを渡す。そして下着を手に持とうとして顔を赤くし、あわてて平謝りを繰り返した。苦笑する朝顔に少し気分がほぐれた敦子だったが、それでも改めて受け取った下着に困惑した。


「では、ブラジャー以外の全てを脱ぎ、その下着を履いてください」


 そして渡されたカゴとその次の命令に、さらに困惑した。下着姿を見せるなど、家族以外ではそれこそ二十年近くない機会だった。学校でさえも体操着や水着に着替えるに当たっては小学校一年生から個室で行われ、誰もお互いの裸体を見た事がなかった。時々着替えの技術の粗雑な同級生を見た事があったが、それでも敦子が気付かぬうちに教師が適当に直していた。

「これが刑の執行ですか」

「執行に当たり必要な行いですので」

 平板な言葉遣いにお役人様の匂いを感じ、敦子は安心した。いつも通りの服に手をかけ、アイマスクを確認して脱ぐ。整然と畳んではカゴに入れ、ついでに靴と靴下も脱ぐ。そしてブラジャーとパンツだけになるまではすんなりと行けたが、最後の一枚への手がどうにも重い。

「何をやっているのです、まあ無理もありませんが」

「わかるのですか」

「ただのカンです、誰でも最後の一枚はためらってしまう物ですから」

「それでその一枚を脱いだ後、こちらを履くのですか」

「そうです」

 そのためらいから逃れるようにその後を担う存在を手に取ってみる。形状は今履いているそれとあまり変わらないが、やけにもこもこしている。そして裏地に手をやると、股間の当たりがやけに厚くなっている。

 そして、それに近い物を数年前まで履いていた、いや履かせていた。

「おし、め……」

「執行に当たり失禁する被告人が極めて多いのです。長幼関係なく皆同じ状態になり、その上むしろその方が効果があるとも言われております」

 失禁。それこそ子どもと言うか赤ん坊のようなお話だ。だが今の彼女は、自分で自分の火照りや倦怠感を鎮める事も出来ないほどに弱っている。もちろん警察に行く前に病院に行ったが風邪とも言われず、市販薬を買って飲んだものの症状は改善されない。

「この罪って、認めたくない人が多いんでしょうか……」

「そうですね。昔はこの病にかかる事は下品な人間であると言う考えを持つ人間もいました。それもまたこの町の宿痾であり社会問題の一つだと私は考えております、そしてこの町が破綻する原因の一つである、と」


 そんな言葉に勇気づけられたわけでもないが、敦子は一気に両手をパンツにかけて引き抜いた。そしてパンツをカゴに入れた勢いのままおしめを両足に通し、深く息を吐いた。

 その程度には、敦子は模範的な町民だった。

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