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女性だけの町  作者: ウィザード・T
第三章 小学校生活
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タブーに触れた小学六年生(過激な描写あり)

我ながらこどもの日になんちゅう話を投稿しとるんじゃ!

 絶対に自分から暴力を振るってはならない。


 その事は小学校から習うような三原則以上に重たい言葉であり、絶対的なルールと言うか憲法第一条とでも言うべき神聖にして犯すべからざる法典であった。

 もちろんただ肩がぶつかったとか言う理由で法典を振りかざせば堂々とした嘲笑の種になるのがオチだが、それが害意をもってとなると話はいよいよ深刻化する。




 町の隅っこにある、やけにいかめしい塀に囲まれた建物。多くの制服姿の女性が並び、兵の高さは女性たちの三倍以上ある。

 平たく言えば、刑務所だった。


 そんな刑務所の中には軽罪の人間もいれば、重罪の人間もいる。そして、少女犯罪者もいる。

「起立!礼!」

 小学校のそれと同じ挨拶を行い、刑務作業を行う。ふあくし他適当に決められたひらがな四文字の名前を与えられた受刑者たちは白黒のストライプかオレンジ一色の囚人服を身にまとい、毎日勤労する。もちろん出所後のスキルを付けるためと言うのもあり、多くが手工業やダンボールの運搬や組み立てなどである。それらのいわゆる軽作業は正直非正規雇用が多く、当然給料もそれ相応にしかならない仕事をやらせるのは実に刑務作業らしかった。

 かつては清掃業や肉体労働などをやらせていたがそれでは高給取りになる仕事の職業訓練だと批判があり、前科者たちの給料を下げれば出戻りや不当搾取の原因になるとされ、現状に落ち着いた訳である。




 そんな刑務所の中で一番過酷な刑を受けているのが、ひとりの少女だった。


「離せ、離して、離せ……!」


 離せ離せと騒ぎながら、必死に手足を動かしている—————つもりの少女。


「まだこんな調子なのですか」

「ええ、薬が切れるとすぐこうです」

 三日前に裁判所で判決を受け刑の執行が始まったその受刑者は、白黒ストライプでもオレンジでもなくベージュ色の服を着ていた。

 だがその服には穴が、上下合わせても一つしかなかった。

 さらにその隣には刑務官が一人いて、いつでも少女を取り押されられるようにしている。

「くへんちの凶暴性はもはや異常です。おそらく彼女はもう……」

 くへんちと言うまったく規則性のない四文字で呼ばれる彼女は、更生を願うべきはずの刑務官からすらも見捨てられていた。


 そのベージュ色の服の名前を平たく言えば、拘束衣である。


 自傷・他傷行為を行わぬために作られた衣類を身にまとわされ、激しく暴れては疲れ果てて眠るを繰り返す。食事も排泄もまったく刑務官任せであり、ほとんど大きな赤ん坊状態だった。食事と共に鎮静剤を放り込まれ平常時には心安らかにするための教育が行われているが、成果は上がってない。

「よほど凶暴な憎しみに囚われているようですね……」

 困っている人がいればすぐ手を差し伸べるべしと言う原則さえも忘れてしまったようなその物言いに遺憾の意を示す人間は、その少女以外誰もいない。


 ましてや、彼女が入牢、いや裁判はおろか犯行から二十四時間も経たずにこんな所に押し込められているのを知った上で突っ込んでいる人間もまたひとりもいない。


 言うまでもないが刑務官は公務員であり、三原則及び憲法第一条に等しいルールには忠実である。と言うか、忠実でなければ務まらない。

「母親たちから受け取ったはずの教えを守れないとこうなるのでしょう。これでは他の者に嘲笑を受けます」


 そのような言葉を吐かれた少女、殺人犯ですら受けないような刑罰を受けていた少女は、まだ小学六年生。少女法など存在しないかのように刑務所に入れられ、拘束衣を着せられている。

 そんな存在を見ながら刑務官たちが顔を青くしたのは、刑罰とは関係なくその罪状を確認したからでしかなかった。



「食べたかったおやつを先に食べられた八つ当たりで裏に連れ込み、被害者を十発ほど殴打し、さらに洋服をも破って……」

「うっぷ……」

「一応くへんちは他にも嘲笑されただの友人を取られただのわめいていますが……」

「例えそれが真実だとしても……ああ……」


 鉄面皮が急にとろけ、呼吸が荒くなる。あまりにも醜悪な犯行とその字面、何よりも同期が許せなかった。殺人事件及び殺人犯を幾度も見て来たはずなのに、昼食が口から出そうになる。


「あまりにも野蛮で粗野で、そして暴力的。と言うか暴力そのもの……」

「決して殺意はなく、ただこらしめたかっただけ、と言うのがなお…………殺意でもあった方がましかもしれませんね」


 ウソいつわりのない、ナマの容疑者の本音が記された供述調書。どんな文章よりも重く、苦しく、読むのが辛い文。

「この事件はマスコミに流すのでしょうか」

「流す事になるでしょうね。この町から、男性的な暴力による支配を排除するために。

 暴力の行きつく果ては戦争でしかないのですから」


 誰にも脅かされない平和な生活。


 それは言うまでもなく、戦争のない生活とイコールである。


 なればこそ、暴力を徹底的に排除した。


 こちらの暴力は、向こうの攻撃に対する防衛システムがあればいい。

 この間にも入り込もうとする盛りの付いたオスネコが焼かれて死んでいたが、この刑務所にいる人間以下誰も心痛を感じる事はない。感じるとしたら一部の農家だけだが、それでも知らなければどうと言う事はない。


 それが、この町だった。

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