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猫小説、猫の詩

現代社会人は猫という存在に救われたい

作者: 仲仁へび



 猫になりたい。

 ああ、猫になりたい。


 心の底から、猫になりたい。


 身も心も、猫になりたい。


 私はペットの猫を眺めながらそう思う。

 私の一日のスケジュールには、灰色しかない。

 一人ぐらしで、仕事をして、毎日夜遅くに帰宅。

 遊ぶ時間もなく、次の日に出勤。

 休日は、どこにもいかずに家の中でずっと寝てる。

 遊びにいけるほど、気力も体力も残っていないからだ。


 最近は特にそう。

 子供向けの体験イベントを考えろと、上司がうるさい。

 うちの会社は玩具を販売している。

 その玩具を売るために、楽しいイベントでお客を釣ろうと考えているのだろう。


 けれど理想が高すぎる。

 だから上司は、何か思いついては無茶な条件をしつけてくる。


 おかげで私達は、そのたびに右往左往だ。


 子供達がのびのびできるイベントで、みんなが笑顔になれるイベントで、開放的になれるイベントで、少しめずらしいイベントで、話題性になりそうなイベント、なんて注文が多すぎる。


 どれか一つあきらめてほしい。


 そういう事を考えていると。

 いつも思う。


 猫になりたい。


 そんな風に。


 犬ではだめだ。

 鳥とかでもだめだ。


 なるなら、猫でなければならない。


 誰かの機嫌をとってへこへこする必要がない。

 自分のペースで生きて、人間を下僕の様にしてしまう。


 ありのままでいる事を望まれる。


 そんな猫になりたい。


 叶うならば、今すぐなりたい。


 永遠になりたい。


 この先ずっとなりたい。


 猫である事で救われたい。


 というか今の状況から救われたい


 しかし、そんな事は不可能だ。


 私は、飼い猫をなでながら心の中でしくしく泣く。


 ある日、突然この世界の常識が変わって、猫になりたい人が猫になれるようになれないだろうか。


 疲れすぎると、人間は馬鹿らしいことを真面目に考えるようになる。


 私は、そんな未来を切に願っていた。







「いやあ、大盛況だよ」

「はぁ」


 数日後、私は上司から褒められていた。


 玩具の販促イベントで、猫になろうという企画をやけっぱちで出したら、なんと通ってしまったのだ。


 猫耳をつけたり、猫尻尾をつけたりして、おおいにうけてしまった。


「一体どうやって思いついたんだね?」


 まさか、あなたへの不満や忙しい会社への不満から生まれたものですよ、とは言えない。


「家で、猫を飼っていますので」


 猫になりたい。


 猫である事に救われたい。


 でも、猫がいる事で少しは救われている分もあるのかもしれない。



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