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薬莢

「ショウ!やったぞ!実験は成功じゃ!どっかの世界からヘンテコな鉄の塊を持ってきてやったわい!」


 図書館で魔石に関する本を借りてきて、研究室で読んでいると、クローシェンやウェーベルなどの助手たちがすごく上機嫌で帰ってきた。よくわからない鉄の塊って、この世界にもありそうだけど、どうやって異世界のものだって判別したんだろう。


「ほれ!見たまえ!これが黄金色に輝く鉄の塊じゃ!鉄の割にすごく軽いんじゃよ!」


 ほれ!ほれ!と“鉄の塊”を見せびらかしてくる。魔石の効率的な利用法に関する一番肝心なところを読んでいるのに邪魔で仕方ない。


 邪魔をしないでください。と目線で合図しつつ、“鉄の塊”に目を向ける。


「……これは……」


「知っとるのか!?やはりこの鉄はお主の世界からだったか!だが、こうもお主の世界からばかりものが来ると……」


 ジジイの言葉は耳に入ってこない。なぜなら、目の前に置かれた地球こちらのもの、薬莢に意識が集中しているからだ。


「ところで、これはどのように使うのですか?」


 ウェーベルが一見ただの鉄塊にしか見えない薬莢の使い道を尋ねる。


「これは………薬莢って言う。こっちの武器だ。これだけでは使えないけど……」


 大層興味を惹かれたようにウェーベルは顔を薬莢に近づける。


「どう言うふうに敵を倒す武器なのですか?」


「威力は?」


「ショウさんも使ったことがあるのですか?」


 矢継ぎ早に色々な質問をしてくる。肝心なところを読んでいるから、また今度にしてくれと伝え、読書を再開させたフリをする。だが、内心ではある願望が目覚め、そのことで頭がいっぱいになっていた。


……廃棄される魔粉の特性は、衝撃を加えると爆発すること……これは弾薬になり得るのでは……?


……弾薬を量産すれば、銃も作れるかもしれない……だが、銃をつくるためには鉄を高い精度で加工しなければ……学園や街を見て回った限り、お世辞にも金属加工の精度が高いとは言えない……ならどうする……


 その日は一日中同じことを考えていた。結局本の内容は全く頭に入って来ず、途中で読むのをやめて、紙に銃についての計画を書き出した。


 結局、翌日にもそれは続き、落書き程度だったものは段々と本格的な計画書へと変貌を遂げ、必要な素材や製造方法まで考えるようになっていた。


「高精度な金属加工ですか……少なくともこの学園内にある実験器具などは、今のでも十分高精度だと思うんですけどね……」


 昼食の際、ウェーベルにもっと精度の高い加工を施した金属製品や、その作り方を知らないかと聞いた結果、今でも十分という返答が帰ってきた。まあ、中世レベルの製品ならそこまで高品質な金属製品はいらないってことか。


「あの『ヤッキョウ』って言う武器と同じくらいの加工技術は多分この世界のどこに行っても作れないと思いますよ。」


 そこまで行ったところで、何か思い出したように「そうだ」と言う。


「他の研究室に、金属加工を魔法で行って、品質を向上させようとしてるところがあったような気がします。」


「本当か!できたらでいいんだが、紹介とかしてもらえないか?」


「ええ、構いませんよ。確か私の寮にも何人かその研究室に所属してる人がいると思いますし。彼らに声をかけてみます。」


 ウェーベルは本当に気が利く。申し訳なくなってしまうくらいに。


 魔粉についても聞いてみよう。


「魔粉って、どこかで安く入手できたりしないか?」


 驚いたような顔をして、聞き返してきた。


「魔粉なんて、何に使うんですか?あんな危険なだけのものを………ま、まあ、学校中から廃棄物として出されてるんで、くれと言ったら喜んでくれると思いますよ。それも研究室が魔粉だけで埋まるくらいの量を。」


 魔粉は厄介者として扱われているらしい。わざわざ学園側が金を払って回収業者に処理をしてもらっているのだとか。あぁ…勿体ない!


「ありがとう。いいことを聞けた。」


「ええ。では、金属加工研究室の方々には私が紹介しておきますので。ショウさんは午後は図書館ですか?」


「ああ、そうするよ。」


 図書館の雰囲気が気に入ったので、最近は研究室ではなく、そこで本を読んでいる。まあ、単純に館内だったら借りる必要がないから持ち運びしなくていいと言う理由もあるのだが。




「ショウよ。お主、魔石学に興味があるのか?」


 夕飯を食べながら、唐突にクローシェンが聞いてきた。


「はい。俺みたいに魔力を持たない者でも魔法が使えるので。以前いたところでは魔法そのものがなかったので、やっぱり使えると嬉しいじゃないですか。」


 満足そうに聞いている。魔法のことで喜ばしい報告があるとなんでも嬉しそうに聞いてくれるので、最近はクローシェンとの生活も楽しいものとなっている。ただ、向こうに帰るための研究は進めてくれているのだろうか……


「帰るための研究って進めてるんですか?」


 一気に気まずそうな顔をした。このジジイはすぐ顔に出るからわかりやすくて結構なものだ。まあ、こちらでも楽しくやっているから、もう少し後になっても構わないが。


「ま、まあこの世界にいる間では、お主の故郷の人間にはお主の存在を忘れるように設計しておいたから、向こうで騒ぎになるようなことはないと思うがのう……」


 意外と気を利かせていてくれた。


「そ、それより、お主に合わせたいものがいるんじゃよ。魔石学の研究をしている導師での。お主の話をしたら会いたいとしつこくてのう。もちろん、お主の素性は全て話してある。」


 その人大丈夫なのか…?異世界人だからっていって変なことされないといいが……


「はははっ!安心せい!わしが最も信用している人間のうちの一人じゃ!変なことはされまい。」


「そ、そこまでいうなら、会ってみますよ……」


 不安だ。

薬莢の登場です。次回から銃器制作のための準備に入ります。

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